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23 技前


 リノアさんがどうしても立ち上がれないようなので抱き上げた。


 みんなに執務室へ行くよう声を掛ける。


 お姫様抱っこで階段を登る時は絶対に苦しそうな顔を見せてはいけない、との先人の教えを忠実に守りながら一歩ずつ着実に階段を登った。


 体も心もいろいろキツいがリノアさんをお姫様抱っこ出来る栄誉の重さと比べればなんて事ない。


 もちろん重いのは栄誉であってリノアさんでは無い。


 出来るだけ衝撃を与えないよう気を使ったが、一歩ごとに顔が赤らんでいくリノアさんを見ていると元気が戻っていくように見えて安心した。



 ときどきリノアさんの方をふりかえりながら先頭を行くアイネちゃん。


 アイネちゃんの側を付かず離れずついていくアリシエラが振り返らないのは、たぶんセシエリアさんが怖いから。


 セシエリアさんは一番後ろを無言でついてくる。



 一同ようやく執務室に到着。


 アリシエラたちがソファーの配置を動かしてくれたのでリノアさんを寝かせる。


 手で顔を覆っているので顔色はわからなくなったが呼吸はとても元気なので大丈夫だと思う。


 残ったソファーを小テーブルを囲むように配置。


 俺の向かいにセシエリアさん、横にはアイネちゃんを抱っこしたアリシエラ。



「まずはお疲れさまでした」


「本当に申し訳ありませんでした」セシエリアさん、また深々とお辞儀。


「当たったらどうするつもりだったんですか」初めて口を開いたアリシエラに、ちゃんと言うべき事は言ってくれるんだと感心して貯まっていたおしおきポイントを減らす。


 突然セシエリアさんが左手で手刀を作って、右手の手のひらで手刀の指先を押す。


 手袋の中に何も入っていないかのように潰れていく指先。


「うぇぁ」と変な声で驚くアリシエラ、アイネちゃんは終始無言でセシエリアさんを凝視している。


 手のひらを離すと手ぶくろのつぶれた指先が戻っていき手刀の形に、それから左手の手袋をとると中には普通に左手がある。


「確かに危なくないかもしれないけど、やっぱりあんなことしちゃダメですって」


 かなり強気なアリシエラだが、興奮が冷めた後のセシエリアさんへの態度に注目。


「いい大人なんですから、ちゃんとアイネちゃんとリノアさんの目を見て謝ってください」


 言ってることは間違ってないけどアリシエラの言葉だとだんだん腹が立ってくるのはなぜだろう。


 立ち上がったセシエリアさんがアイネちゃんの前にひざまずいて、目を見つめながら話しかける。


「本当にごめんなさい」


「手ぶくろ、貸してください」怒って睨んでるんじゃなく、真剣におねだりする時のいつもの表情のアイネちゃん。


 横になっていたリノアさんが上半身を勢いよく起こして、アイネちゃんとセシエリアさんを交互に見ている。


 セシエリアさんはリノアさんに軽く会釈してから、脱いでいた左手の手ぶくろをアイネちゃんへ手渡す。


 手ぶくろをはめたアイネちゃんが指でアリシエラの胸をつつくが、指は普通に胸に沈み込む。


「にゃっ」と鳴いて身をよじらせるアリシエラを追撃して突きまくるアイネちゃん。



「やわらかくなぁれって願いながらやってみて」と優しく語りかけるセシエリアさん。


 目を閉じて手ぶくろに向かって祈るアイネちゃん、目を開けて勢いよくアリシエラの胸を突つくと手ぶくろの指がくにゃりとつぶれる。


 不思議そうに手ぶくろを見つめるアイネちゃん、急に立ち上がりセシエリアさんに一礼し身をひるがえしてリノアさんの元へ行くとお胸やお腹を突きまわる。



 よくよく見ると手ぶくろの指先がつぶれたりつぶれなかったりしている。


 どうやら故意に状態変化させて感触の違いを楽しんでいるようだ。


 リノアさんは逃れようと身をくねらせているがたぶん娘のいたずらの凄さに気付いていない。


 アリシエラがうらやましそうに見ているのは、アイネちゃんの手ぶくろなのかリノアさんのお胸なのか。


 セシエリアさんはアイネちゃんの見事な技前を感心したように見つめている。



 俺はリノアさんのお胸に指が沈み込む様を目に焼き付けていた。


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