19 執務室
朝、就寝中の分の記録から要注意事案の有無を一覧表示にて確認後、身支度して中広間へ。
すでに集合していた女性陣に朝のあいさつ、リノアさんはなぜか不満げ。
女性陣は昨晩アリシエラさんの部屋で就寝、俺ひとりだけ別の部屋で寝たことがリノアさんの不満らしいが、さすがにそこで一緒に寝る勇気はまだ無いっていうか寝ても良かったのですかリノアさん。
朝食を摂りながら今日の予定を確認。
まず正式な部屋割りを済ませないと『収納』に入っている荷物の整理を始められないのでそれを優先。
アリシエラさんの部屋は玄関に近い必要があるので一階大広間の玄関の近くの部屋。
リノアさんたちに部屋の場所の希望を聞くと、アリシエラさんが語りだした。
「屋敷の長であるご主人さまが最初に決めてくれないと、リノアさんたちが決めづらいのでは」
昨日の指摘以降、おかしな敬語は使わなくなったけどご主人さま呼びはやめてくれない。
リノアさんやアイネちゃんへの様付けをやめただけでも良しとしよう。
「気付かなくてごめん、これからもおかしなところがあったら何でも言って」
ぴくりと反応するネコミミが今日も可愛い。
「俺の希望は地下の管理室の近く、なんだけど」
「良い場所がありますぜダンナ、じゃなくてご主人さま」くだけすぎだ。
アリシエラさんから案内されたのは二階の中央にある部屋。
もともとは屋敷の注文主の老貴族が使う予定だったそうで、執務室と寝室、衣装部屋と収納部屋、トイレと浴室、過剰な広さでは無く落ち着いた内装装飾の良い部屋ではあるが、
「地下の管理室から遠すぎるよ」
アリシエラさんが執務室のデスクの椅子をぽんぽんたたきながら、
「こちらへどうぞ」とにっこり笑った。
管理室の装置を遠隔操作できるのかと椅子に座ったら、アリシエラさんがデスクの縁を何やらいじった。
腰に何かが巻き付いて、次の瞬間椅子に座ったまま落下した。
気付くと地下の管理室にいた。
腰と首が痛い。
操作盤から『どうですかぁご主人さまぁ』と、アリシエラさんの自慢げな声が聴こえてくる。
たった今アリシエラさんのさん付けの剥奪を決定。
『大丈夫ですかご主人さま』リノアさんの心配そうな声、つられてご主人さま呼びはやめて。
『すっごーい』アイネちゃんに見られたのはとてもマズい。
すでに穴が閉じられている天井を見てから、操作盤に向かって「上に戻れるの?」と聞くと『こっちまで歩いて来てくださぁい』
今からアリシエラへのおしおきポイントの付与を決定。
ポイントが貯まったらおしおきだ、耳を洗って待ってろ。
腰の金属ベルトをようやく外して、地下の管理室を出て二階執務室へ。
歩いた距離以上の疲れを感じながら執務室に戻る。
ご主人さまに褒めて貰いたいわんこ的な表情の笑顔を見せているアリシエラ、あなた猫系獣人ですよね。
顔面蒼白なリノアさん、心配してくれている表情もきれいだけど本当にいろいろとごめんなさい。
きらっきらのまなざしを俺に向けるアイネちゃん、言いたいことは分かっているけど先に釘を刺さねば。
「アリシエラ、この装置の操作を俺にしかできなくなるようロックを頼む」
「気に入ってもらえたようでうれしいです」分かってないようだ。
あなたの空気を読む能力が欠落しているせいでメイドのおかわりを探すハメになってるのですよ。
アリシエラおしおきポイント、順調に加算中。
「俺の部屋はここに決定で」
リノアさんとアイネちゃんがそわそわしだした。