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16 ネコミミ


 中広間の壁際にあった小ぶりなソファーを移動させて、その真ん中に小さなテーブルを配置。


 四人が小テーブルを囲んでほどよい距離感で話し合うための良い空間ができたと思う。


 部屋の隅っこだけど。



 無言でくつろいでる四人。


 ふと思い出して『収納』から取り出したクッキーを小テーブルに置く。


 目を丸くしたアリシエラさんのネコミミはピンと立っている。


 さらなる反応を期待して『収納』から大瓶のフルーツジュースと人数分のコップを出して小テーブルへ。


 大きく見開いた目をぱちくりさせているアリシエラさん、ネコミミがピンと立って左右をうかがうようにくるくる動いている。



 冒険者稼業で人族以外の種族とパーティーを組むことはさほど珍しいことではない。


 各種族によって異なる、守るべき決まり事さえ守っていればトラブルになることは無い。


 問題は、その手の知識は自分で経験して吸収しなければならないということだ。


 そういうのは冒険者ギルドの新人研修とかで教えてもらえるものではない。


 見て聞いて自分で考察して吸収していくこと。


 今までにもネコミミ獣人の知り合いはいたけど親しい関係にはなれなかった。


 つまり何が言いたいのかと言うと、アイネちゃんが好奇心に負けて突撃する前にネコミミメイド本人から許諾を得る必要がある。



 大変卑怯な手を使うようで申し訳無いが楽しいことは早い者勝ちなのだ。


 つまり目の前のお菓子を交渉材料にしてあれやこれやと。


「アリシエラさん」


「はい」


「あなた方にとって耳やしっぽを他人に触られるのは苦痛なのですか」


「私なら全然問題ないです。普通に常識で判断してもらえれば」

「例えばお料理してる時に後ろから突然触られたらびっくりして包丁落としちゃうとか」

「人族の人でも耳を舐められたり耳穴に指を入れられたら普通に嫌だと思うのですが」


 ごもっとも、っていうかそんなことしたら普通に犯罪者だ。


「ちゃんと前もって触りたいって言ってもらって、こちらも触られても良いかなって思えれば、ちゃんとOK出しますって」

「そのあとそちらのお耳に同じことするかもしれませんが」


 つまり今ネコミミを触るともれなくこっちの耳も触ってもらえる、って永久機関か。


「あの、お菓子いただいても良いですか」


「それ、私がお母さんと一緒に作ったの」アイネちゃん、動く。


「とっても美味しそうだけど、いただいても」


「いいよ」


 おそるおそる伸ばした手で取ったクッキーを素早く口に運ぶ、その様はさながら飢えたノラネコのごとし。


「美味しいです、サクサクです」


「お耳、さわっても良い?」


「もちろんです、でもさっき言ったとおりアイネちゃんのお耳も触りますよ」


「どーぞ」


 目の前で女の子たちがお互いの耳を触り合う。


 下手な感想はいらない、今はただ目に焼き付けるのみ。


「ジュースいただきます」


 美味そうに飲んでるアリシエラさん。


「アリシエラさん」


「はい、おく……リノアさん」


「そのジュース、今朝私が作ったの」リノアさん、攻める。


「そうなんですか、本当美味しいです」


「宿のお部屋にあったのを絞ってみたの」


「ミックスジュースですね、味が濃くて美味しいです」


「お願いして良いかしら」


「はい、何なりと」


「お耳、触っても良いかしら」


「どうぞ、私も触って良いですよね」


 お互いの耳を触り合うリノアさんとアリシエラさんは、アイネちゃんの時とは違う大人な雰囲気。


「わたしも」アイネちゃん、乱入



 三角の輪になって耳を触り合う三人。


 仲間はずれな疎外感やあの輪に混ざりたいという欲望も無くは無かったが、お耳を触られているリノアさんを見て魔族モードの時のお耳のかたちを必死に思い出そうとしている俺。


「ご主人さまもやりたいのですか」


「お兄さん、へんなかお」


「……」



 餌付け作戦、成功?


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