とあるブリテンの疾走
俺の2本の足は、火花を散らしながら俺を導く。
周りの景色がだんだんとぼやけていき、やがて彩色された線の集団になる。
嗚呼、俺は今、海岸を駆け抜けている!この今にも爆発しそうな思いを胸にしながら!
走れ!走れ!走れ!もっと速く!もっと速くだ!
もどかしいほど動かない足を叱咤激励しながら、俺はまるで滑るように走る。細かな砂の上を、そう。まるで飛ぶように。
俺は「地上を飛んでいる」。俺の熱い魂の雄叫びをぶつける為に、飛んでいるんだ。
だが俺の魂の走りも、砂浜の小さな、とても小さな窪みによって終焉を迎える。
「しま・・・っ」
俺は派手に姿勢を崩し、そのまま倒れ込む。大地と海が交わるこの土地で、俺は憎々しいほど青い空を見た。
「・・・畜生」
俺は目を閉じた。そろそろタイムリミットだ。
俺の体は鮮やかな白い閃光に包まれ、そして消えていった・・・
「やっぱりこの武器使えませんぜ、長官!」
「う、うーむ。ロケット推進で車輪を回して敵陣に上陸させ、爆発させる。うまくいくと思ったんだが・・・」
「足場が悪すぎるんすよ!」
「カーペットでも敷くか?」
「・・・俺達、こんなもん作ってないで、もうちょっとマトモにナチと戦う方法を考えた方が有意義だと思うんすけど」
「そうだな・・・残念だが、この計画は白紙に戻すか」
この日。イギリス兵器の黒歴史「パンジャンドラム」は、この世界から姿を消した。
パンジャンドラム、WW2の素晴らしいオヴァカ兵器です。ブリテンがどうしてあんなものを作ろうという気になったのか、未だに謎です。
どこに転がるか分からない地獄の火炎車(炸薬搭載済)を砂浜に一斉に放ち、その後で歩兵が突撃する算段だったらしいですが、敵はもちろん、確実に味方もビビりますよね・・・
こいつについての詳しい資料はWikipedia等をご覧ください。イギリスのこの珍兵器を前に、開いた口がふさがらないでしょう。