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Ⅵ:私、魔法の先生?



 国から一応、無能として追放されてしまった異世界の転移者にして男から一点、女の子の身体となって、最強の魔法少女及び呪われし龍の魔女ことリュウショー・ブラッドゴーン、本名緋本龍勝。


 経歴だけを挙げてみると意味不明な事だらけな私は現在、荒れ果てた地にてゴロゴロしながら、襲い掛かってくる魔王共を駆除していました。


 魔王によって汚染された土地、分かりやすく言うならばウィルスや放射線だらけかつ数分に一回爆発が起こる超危険地帯に俺の安眠などは無い。


 欠伸を欠きながらビームなりドラゴンを嗾けている最中、私はついさっきばかりに出来た血の繋がりが一切無い出来立てほやほやの娘?であるクォーツの目元を目で覆う。


 魔王の姿もそうなのだがドラゴンの姿を見せるのも教育あまりよろしくは無い。幼き男児共にとってドラゴンとは至高の存在であろう。


 私自身、子供の頃からドラゴンは大好きである。そもそもドラゴンは架空の生物であり、その形は昨今の時代において規定の概念が無くなりつつある。


 しかし、どういう生態を持って種を継続してきたのかは魔王同様未だ謎に包まれているがこの世界にはドラゴンが実在した。ドラコーン曰く、この星は地球の平行世界みたいなものなのでドラゴンという存在自体は共通している。その点は人間にも言えるだろう。


 話が脱線してしまったが、ドラゴンの鱗は少々グロテスクだ。無数の鱗に覆われた全身、その近くに寄って見ると一枚一枚が丁寧にあるので、見る人によっては吐く。


 実際、ニグリオス・シュバルムはドラゴンの姿を見た時に嘔吐していた。私にはそれが一切理解出来なかったが、まぁ兎に角人によってはゴキブリを見るのと同じなのだろう。


 魔王は言わずもがな生体実験で生まれたクリーチャーみたいな物なので論外だ。俺も最初見た時はあの気持ち悪過ぎる見た目には吐いた。今でこそ慣れたモノの本当にキツイ。あんなのを子供に、しかも実年齢は零歳に見せろと、無理。私はそこまで畜生にはなれん。



「オイママ!折角のシーンが見えないじゃん!」

「…………ママはやめてくれ。私は男と交わったことも無ければ子供を産んだ覚えも無いわよ。第一に俺は」

「この手を退かせーー!」


 彼女的にはヒーローショーでも見ている気分なのか見せろ見せろと両手でジタバタと暴れる。見た目中学生のクォーツからは見た目に反して物凄いパワーで押される私、この娘、本当に人間かよ。


 世には身体能力を強化する魔法もあるが、彼女がそれを使えるとは思えない。因みに私は魔法少女かつドラゴン補正で身体能力は世界最強と言っても良いほどだ。


 だが悲しいかな。大き過ぎた力はこの時代に合ってないようで私が平気で力を振るってしまうと周りの人たちは一瞬で消し炭になってしまう。小指で突こうものなら突かれた人は吹っ飛び、最悪、貫通してしまうだろう。


 それだけの力がありながらこの星の全ての魔王が倒せないのは一重に私が人間の身体だからである。一ヶ所にさえ集めれば如何にか出来るのに…………。


 そんな事を余所に考え、勝手に落ち込みながら、駆除していた魔王は一匹残らず俺の魔法とドラゴン達のブレスによって消え去り、後に残ったのは何時も通りのクレーター。


 飽きもせずにこんなクレーターを毎日作っていると思うと環境破壊をしているのは魔王だけでなくひょっとして私もなのか、と疑ってしまう。


 取り敢えず今の所はもう魔王が現れる気配は無いのでクォーツの顔から手を離す。力が罹っていたのもあったからか、水色の髪をした少女は勢い余って前に飛び出して転んでしまう。が、そんな事は私がさせず重力魔法を使って寸での所でクォーツを拾い上げる。


「こらこらむやみやたらに力を振るってはいけないのだよクォーツ君。有り余った力と活力は時として己に牙を剝くのさ。これは人生の先輩であり、龍の魔女としての教訓だよ」


 何となく教師っぽく言ってみたが件の少女はうぅ~と年相応に可愛らしい声を上げる。重力魔法は胴体を軸にして掴んでいるのでクォーツは離せ離せと言わんばかりに暴れだす。


 一旦此方に引き寄せてから解除する。と、途端にクォーツが私に向かって声を張り上げた。


「もぉ~何するのよリュウショー!さっきから変な事してばっかり!折角の魔王が見れなかったぞ!」

「別に見なくたってしってるでしょー」

「概念とは知ってても肝心な姿形は何故か頭に浮かんでこない。それにこう言う物は知るより実際に見て聞いた方が良いのだろう!そうリュウショーの貼り付けた記録が言ってる!」


 そう彼女は概念として魔王を知っている。一応、実物の姿だけは抜いて入れたのだが余計に彼女の好奇心を失敗したな。と言う俺が貼った言葉が今の俺に対して正論過ぎる。


 実際、こう言う物は知るよりも体験した方がいいのだが、世界、と言うか人間は極端では無い。彼女に着けた名前に水晶を意味する物を与えたが、その心に濁りが入っても困る。


 あれだ、あれ。親の気持ちって奴。実際に育児をしたことが無いから何がいいのか分からん。今地球にいるであろう父さんと母さんよ。俺に教えてくれ。


「そうは言っても」

『その見た目はちょっと対象年齢外ですからね~』

「む~」


 俺とドラコーンの言葉に頬を膨らませ、目を細めるクォーツ。どうやら怒り心頭のご様子だ。分かるよその気持ち。俺も親が見てる子供が見ちゃいけない映画とか見たくなるもんね。知識だけはあっても肝心な中身が成長していないので説得は不可能だろう。


 そんな彼女の様子に対して俺達二人は口を噤んでいるとクォーツは何やら腕をを組んで何やら考え出す。もしや俺から抜け出すつもりじゃなかろうな。俺達の眼を盗んで魔王を見に行くとか考えているのか再びクォーツは呻く。


 まぁするにしても絶対に不可能だがな。私には結界魔法があるからクォーツを閉じ込める事は容易だ。そこで魔王に現れたら危険だが、そこまでの事態にはさせない。


 決まったのかクォーツは組んだ腕を解いて口を開いた。


「魔王やドラゴンを見せてくれんのなら俺に魔法を教えろ!そうすれば私は満足して優越に浸るでしょう」

「えぇ」

「ななな!?それも駄目と言うのですかリュウショー!?」

「常識的に考えて駄目です」


 俺の言葉にバッサリと思惑が斬られ、驚愕の声を上げるクォーツ。ある程度の年齢に達しているのなら魔法は教えても問題は無い。国だって成人すれば魔法を使う事が出来る。魔法と言っても料理や洗濯等の家庭的で簡素な魔法だが。


 しかし家庭的な魔法と言えど侮る事勿れ。工夫次第や本人の実力や技術によっては平気で人を殺せる代物。国では高い魔力や魔法適正を持つ者は魔法少女を除いて原則として魔法の行使は禁止されている。現に魔法少女は地下に幽閉に近い形で監禁されている。


 年端にも行かない子供にナイフを持たせることと同じなのだ。今クォーツに魔法を教えると言う事は。周りに居るのは俺だけだから何て事ないが、自分で自分を殺してしまう事があるので教えるのは躊躇してしまう。


 万が一、億が一、無量大数が一としてクォーツと逸れてしまったとしよう。その時、彼女は抵抗手段が無くて殺されてしまうだろう。しかし魔王から逃げるのは至難の業、選択肢としては魔王に勝つのが大きくなってくる。


 恐らくクォーツに最高位かつ最難の魔法を教えたとして彼女はそれが出来そうで怖い。しかしそれだと本末転倒な気もする。


 ぐぅ…………。究極の二択に板挟みされた私は思わず苦い表情を浮かべる。クォーツはそれを見て煮え切らない表情で宙に浮かぶ私を見つめる。


 最適解は当然ある。だがそれを出さないのは出せないだけのリスクがあるからだ。しかしこのままクォーツに不満を溜めさせたままだと何時か爆発しそうで何やらかすか分からない。


「はぁ…………まぁクォーツちゃんに教えられる魔法なら一つだけあるわよ

「何だ何だ!どんな魔法ですか!?リュウショーみたいにデッカイビーム出せる魔法か!?」


 未だに口調や一人称が迷子になっている彼女に対して死ぬほど教えたくはないのだが。此処は最強の魔法少女たる威厳を見せねばなるまい。危険性がないよう安全に使える様に指導しなくてはならない。魔法歴一年程度の俺だがドラコーンも居るので何とかなる。


「あーそう言う派手な魔法じゃなくてねー『転移魔法』って言う魔法よ」

「ぬっ…………。ビームとか出る魔法ではないのか。仕方が無いわね!この際何でもいいので魔法を我に教えるがいい!」

「あーホントは『転移魔法』なんて教えたく無いのにー」

『しょーがないんじゃないんですかねぇ~クォーツちゃんに必要な魔法は転移魔法でしょうし』


 転移魔法、読んで字の如く、魔力が存在する別の場所に物体を転移する魔法。文字に起こすだけならば簡単そうに見えるがこの魔法は上位に位置する魔法だ。やっている事はテレポートと大差ない。


 この転移魔法には二つの方法がある。一つが転移魔法を上位の魔法足らしめているいるのだが、今回クォーツに教えるのは別の方法での転移魔法だ。転移魔法はあくまで『もしも』の時の為に教える物。


 こっちは上位ではなく下位、良くて中位に位置する魔法だ。上位の方は立体的だとか俯瞰的だとか、転移先の座標を把握だとか演算とかで難しいかつややこしいのだが、もう一つ方法は至ってシンプル、予め転移先にマーキングを仕込み体内の魔力が尽きぬ限り何時でもその場所へと転移する方法だ。


 本来マーキング形式の物も演算とか必要だが、今回は必要無い。なんせマーキング先は私の目の前に設置するからだ。


 本来マーキング形式の物は人間にするものではない。土地などにマークした魔力を探知してその場所に上手い具合に自分を立たせる事だ。これは空間に移動する転移魔法全般に言える事だが一度ズレるとそれはまぁ大変な事になる。


 例えば地面の中に埋もれちゃったり、空中に飛ばされたり、はたまた転移先に人間が居て肉体を破壊してしまったりと結構事故が多く危険な魔法。


 更にはマーキングした魔力が薄れたりして、自然にある魔力と同化してしまったりとコスパは悪い。なんせ転移先に一度出向かなければならないから。魔力が強い物だけが上手く使える魔法。


 そんな魔力があるなら上位の転移魔法を覚えちゃえって話よ。だって転移魔法をラグなしで使えたら事実上の最強だもの


 今回に限ってはその必要は無い。私という存在、もっと言えば私の魔力を転移先に設定するから。これは私の魔力を通じて転移させるから大きな問題は無い。


「良い?この魔法は危険な時だけに使うんだぞ。瞬間移動だからってむやみやたらに、ましてや遊びに使うのは駄目だからな」

「はーい!分かったので教えて下さいリュウショー先生!」


 つい男口調なった俺に対して、クォーツは気にも留めることなく早く魔法を教えてくれと言わんばかりにせがんでくる。


 はぁ、人に教えるのは余り上手くないのだが大丈夫だろうか?



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