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Ⅱ:私、最強の魔法少女?


 こうして俺の魔法少女として、魔王と戦う物語は始まってしまったのだ。




 紅い長髪を棚引かせ、赤黒いスカートを揺らし、天を舞う。生物として根幹を為していない形をした化物、魔王に光線をステッキから打ち放つ。十方向から放たれた極光はいとも容易く魔王の身体を打ち抜き、その姿は跡形も無く消え去った。




『流石は私のマスター!もうそこらへんの魔王は十秒満たずに倒せてしまいますね!』


「…………………」




 魔法少女になってから彼これ2年以上、この姿で魔王と戦場を駆け回ってきた。紫色に染まった大地、嘗ての村跡や城跡は軒並み惨たらしい姿に変えられている。空も紫色の雲に覆われ、太陽の光は満足に届いていない。


 ドラコーンは私の事を最強の魔法少女と言う。しかしその言葉とは裏腹に国からは無能扱いされていた。




 誰が流したかは知らないが私は『タダ飯を喰らうだけの無能少女』、『呪われた龍の魔法少女』、『最強の魔法少女を名乗る無能』と言われている。始めは違うって否定したけど、私の言葉は信じてもらえることは無かった。




 日頃の態度がぶっきらぼうなせいなのだろうか。毎日毎日終わる事の無い戦い、帰れる事の無い故郷を思い出す度にイライラは募る。




 そうして他人に当っているから私は人々の希望どころか災厄に近い形になっていた。私が魔法少女になってから魔王は頻繁にその姿を現す様になったのだ。




 龍は常に闘争の中にある、そして龍は常に闘争を求める。




 ドラコーンが時折言っていた言葉を思い出す。確かにそうかもしれない。私は誰かと一緒に居るよりもこうして戦っている方がずっと気楽なのだもの。




「はーぁ、もうここら一体に魔王は居ないのね…………」


「そうみたいですねー。こんな辺り一体更地にしてるから確固たる証拠が生まれず、誰にも信じてもらえないんですよー」


「……少なくともアイツラは信じてる」


「そうですけどー。あの娘たちがどう思ったって意味なくないですかー?」


「そうかもね」




 私という魔法少女、それは生きた奴隷であり兵器。




 ステッキの零した言葉に、私は答える。この国において魔法少女の扱いは最初に思っていた物よりも酷い。人々は私達魔法少女を極端に嫌悪している。魔法少女の元は魔法を使う少女、そして魔王は魔の王。二つの存在は同じ力を持っている。




 だから嫌悪されるのだろう。ある意味では私と魔王は表裏一体、瓜二つ、結局人々にとって私達は化物。帰れば石を投げられる、謂れの無い言葉を掛けられる。




 そんな有様になっても尚国は止めようとはしなかった。魔王の影響によって農作物の理が改悪され以前よりも育たなくなった。その原因には私の龍の力と魔王の影響があると言われている。




 他の魔法少女達も掛け合ってくれたがその言葉が真に通ずる事は無かった。




 龍の力は少々、人の手には余ってしまったらしい。アレ以降ブラックホールは姿を現さない。会おうとも話そうともしない。理由は分からない。




 でも全部どうでも良いんだよ、ンな事。俺が家に帰りさえすればあんなクソ共は死のうとどうでも良い。




「龍ちゃーーーん!」


「…………」


『オヤオヤ何時も直ぐに駆け付けますねあの娘は』




 遠くから聞こえ慣れた声が響く。その方に視線を向けてみれば、そこには魔女の様に空飛ぶ箒に乗って突っ込んでくる一人の少女。鮮やかな桃色の髪を靡かせ、肌色の多い魔法少女服を着た、私と同じ位の歳の子。




「何?─────スカーレット?」




 ロージア・スカーレット。俺よりも前に魔法少女として魔王と戦っていた少女達の一人。イライラしていた最初の頃の私はかなりの塩対応だった気がするけど、何故か今では話すような中になっていた。




「私も魔王を討伐したからリュウちゃんに会いたくて会いたくて」


「そう」


「凄いよねリュウちゃんは!ここら辺の魔王は全部リュウちゃんが倒したんでしょ!私なんかよりも全然凄いの!」


「貴方だって凄いよ」


「本当?ロージア、リュウちゃんに褒められて嬉しいよ!ねぇねぇ今度魔王20体位倒したら、その……魔法教えてくれないかな?」


「そんな事しなくたって別に良いわよ。まぁ、教える事があったらだけど」


「本当!本当!ロージア、リュウちゃんと一緒にお稽古したりお話出来るの!」






「おーーいお前等何やってるの〜」


「…………………」


「ブイブイ」




 ロージアと話していると再びどこからか魔法少女が集まってきた。一人は嬉しそうに、一人は冷たい表情で、一人は無表情ながらも両手でピースを作りながら。


 彼女らもまた俺達と同じく魔法少女だ。




「大丈夫?怪我は無い?」




 安心した表情で私の身体の隅々まで触ってくる薄紫色のツインテールの魔法少女、パープラ・バイオレット。




「……………」




 無関心を装いながらも頬を紅く染めてチラチラと此方に視線を向けてくる黒髪ロングの魔法少女、ニグリオス・シュバルム。




「やったぜリュウ」




 達観したような笑みを浮かべながら親指を立てる、一回り私達よりも小さい、ブラーバ・ライトニング。




 他にも魔法少女はいる物の大きく関わっているのはこの4人だろう。




「あれ、ブラックホール閣下から連絡が来てるぜ、えーと『リュウショー・ブラッドゴーンは至急私の元へと来い』?」


「!?」


「あのブラックホール閣下が?」


「ウソ、どうして急に」


「うーん。何処か怪しいぞコレは。ヒジョーに怪しいー」




 国の支配者ブラックホール、転移して以降一度も顔を合わせた事は無かったが今になって何故連絡を寄越すのだ。まぁ良い、閣下直々のお呼び出しとあらば行ってやろう。




「じゃあ、行ってくる」


「なら私達も国に帰ろっか」


「そうね。リュウとはここでお別れ」


「ガンバレ」


「じゃあ魔法陣用意したから三人共乗って!」




 4人はバイオレットが作った紫色に輝く魔法陣の上に乗り、国へと帰っていく。




 それを見た私も連絡越しに用意されていたらしい魔法陣の上に乗ってブラックホールの元へと向かう。




『あの野郎、一年越しに何仕掛けてくるつもりですかねー?』


「知ったこっちゃない」


『ふふふそれでこそ私のマスターです!ドラゴンは力の象徴!絶対の証明!不条理を打ち崩す者!』





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