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1/西暦3000年

 バラバラバラ、と風をぶった切る音と振動。

 今にも壊れて空中分解しそうな鉄の乗り物の中で眠れるようになったのは、いつからだったろうか。


 多分それは、大切なことのように思う。


「お目覚めか、シンイチロウ」


「あぁ――――寝起きで最低な気分だ」


「丁度いい。もうすぐ着くぞ」


 体中が痛かった。

 ギシギシと軋んだ体を起こしながら、窓の外を見る。


 上空八〇〇メートル。大海の上を飛ぶ一機のヘリ。

 型落ちも良いところの代物だった。整備はされていると知ってはいたが、錆は目につくしシートは硬いし叩けば伽藍洞の鉄の音がする。

 前に天井からナットが落ちてきた時は本気で乗るかどうかを躊躇った。マジで明日にはスクラップにでもなってそうだ。


「……今どこだ?」


「太平洋に差し掛かるところだ。もう一時間程で見えるさ」


「もうすぐじゃねえよ、それ。だからアメリカンは時間にルーズで嫌いなんだ」


「嫌よ嫌よも好きの内、ってね」


「なんだそれ。またお得意の映画のセリフか?」


「いや、これからお前が行く極東のことわざだよ。嫌がるってことは、好きの裏返しってことだ」


「素晴らしい言い回しだ。クズでも女に困らなくなる」


「違いない」


 俺がこれから向かう先は、極東支部と呼ばれている。

 海に四方を囲まれ、大陸とは程遠い位置にある大きな島国。まさに孤島だ。


 栄転ではあるのだろう。

 前にいた中東支部はマジでクソだった。人間同士で争って、未だに国家などという枠組みを妄信している知能指数の低い猿共の楽園。

 何が悲しくて同じ人を殺さなきゃいけないのか。理解不能な彼らの行動原理に嫌気がさして、転勤願いを出し続けることおよそ一年。ようやっと、お望みの仕事にありつけるわけだ。


 そう思えば、今日でおさらばになるコンクリートみたいなこのシートだって、愛着が湧くというものだ。

 嘘。やっぱ湧かねえわ。ここだけは張り替えた方がいいぞマジで。


「にしても、いい噂聞かねえよ極東は。毎日バンバカ人が死ぬ」


「中東よりはマシな死に方だ」


「死の理由は大切かもしれんが、なにせ数が多すぎる。極東の人員募集量知ってるか? 毎年最多で募集してんだ。底の抜けたコップだぜありゃ。入れても入れても漏れていきやがる」


「そんだけ頑張ってるってことさ。素晴らしいところじゃねえか」


 仮宿であった中東支部は、各地の支部から問題児が寄せ集められてくるところだった。

 自然、他の支部の話なども数多く集まっていたし、あらゆる国籍や人種の蛆虫が毎日クソを垂れ流していたのでバリエーションには富んでいたと思う。


 だが俺は、今まで極東支部出身の奴にお目にかかったことがない。


 それは多分、極東に問題児がいないからではなく、

 他所に送るだけの人員がいない過酷な環境であることを指す。


「燃えてくるね」


「ま、頑張りな。これがお別れじゃないことを祈るぜ」


 ヘリの操縦士――――ガリダックは自分のスキンヘッドを撫でながら、珍しくしおらしい言葉を使う。


 この黒人とも長い仲だ。と言っても一年しか付き合っていないが、中東で俺が生きていけたのは少なからずこいつのおかげみたいなところもある。中東から離れて唯一悲しいのは、こいつと離れることと言っても過言ではない。


「あんたのヘリの操縦は最悪で、ヘリそのものも最悪だったが、まぁ助かったよ」


「俺の操縦は悪くねえ。こんなオンボロしか寄こさねえ上が悪い」


「姐さんはケチだからな。俺たちのことなんて消耗品にしか思ってなかった。消耗品に高価な消耗品を渡す気にならないのは当然だ」


 中東支部から離れられて一番嬉しいこと。それは中東支部長のババアから離れられることだ。

 あの冷血女がいなくなるなら、どんな環境だって天国に見えてくる。

 この先に幸せしか待ってないんじゃないかという気すらしてくる。


「ま、嫌になったらいつでも戻って来い。つっても、極東は人手不足だからな。出戻った奴はいねえ。これで本当に今生の別れかもな」


「孤島にして監獄かよ。島流しにでもあってる気分だ」


「お前みたいな悪ガキが行くには丁度いいかもしれん」


 ガリダックは操縦機を握りながら、いつものように笑った。


 まぁ、極東で落ち着いたら手紙の一つでも出してやろう。

 またこいつの映画のうんちくを聞きながら、まずい酒を飲むのも良い。


 二、三の言葉を交わしながら、バラバラバラという聞きなれた音に身を委ねる。

 何の意味もない雑談をしながら、極東支部はどんなところかと思いを馳せる。


 問題児のゴミ捨て場である中東と、どんなゴミでもいいから受け入れまくってる極東は似たようなものである。

 あっちも寄せ集めだが、こっちはもっと酷い寄せ集め地帯だ。

 問題児の対応には慣れているつもりだが、どんな輩がいるか分からない。


 まぁ、でも強いんだろうな。

 極東で生き残ると言うことは、つまりそういうことである。


 ――――などと。

 雑談に華を咲かせながら時間を過ごすと、目的地が見えてくる。


 代り映えもしない大海の景色に陸地が混ざり、そこに近付くにつれ、極東支部らしきものが鮮明になってくる。


 ……尋常じゃない量の煙が昇っている。

 それも焚火やキャンプファイアーの類じゃない。火災だ。燃えてる。


「おい――――極東支部が、襲われてねえか?」


「そう、そうだな。そうにしか見えない」


 至る所から煙が上がる。逃げ惑う人の粒。そして、それを襲う異形の群。

 バリケードは至る所が崩壊しており、とても安全地帯などと呼べる状態ではない。


 大規模襲撃。

 それも、かなりまずい状況なのは見れば分かる。


 シートベルトを外し、脱いでいた靴を履く。

 ブーツのロックを掛けると、圧迫される窮屈な感覚が両足を締め付けてくる。


 懐かしの感触に身と心も引き締めて、コートを羽織った。


「お別れはまだ先らしいな」


「高所のヘリポートは使えねえ。すぐそこの空き地に降ろすぞ」







 どうもこの星は終わってしまったらしい。

 俺が生まれた時には既に手遅れだった。俺の先祖の方々が完膚なきまでにやらかしてくれたみたいだ。


 進み過ぎた文明の利器による弊害、地球温暖化。

 増えすぎた人口問題を解決するための賢い選択、第三次世界大戦。

 どこかの誰かが生み出して適当に放り投げた爆弾、未処理核による被爆。


 他にも色んな理由があるらしいが、この三つを大きな原因として、もうこの世界は無茶苦茶になってしまった。


 昔はあった建物や地形すらボロボロになり、整っていたライフラインはそのほとんどが破損か風化した。

 海面は上昇し、陸地の5割以上が海へと沈んで物理的に住む場所が減った。

 異常気象、生態系の崩壊、類を見ない病気の蔓延、秩序の崩壊。

 本の中でしか知らない世界が羨ましいほどに、今この世界は終わりに終わってる。


 そしてそんな中、一番の問題だったのが生態系の崩壊だ。

 動植物が変体していった。過酷な環境に耐えるために変化を遂げるものや、増えた海洋から陸へと侵略するために足を手に入れるもの。小さかった生き物は大きくなり、空を飛びながら海も泳げる生き物さえ存在している。どうしてそんなことになったのかは未だに頭のいいやつの議論の種だ。


 俺に言わせれば、地球が怒って人間を殺しに来てるのだと思う。

 問題児を一掃してからまたイチから始めましょうって魂胆じゃねえかな。


 兎にも角にも、人間は弱肉強食ヒエラルキーのトップから引きずり落された。

 生息圏の縮小と、外敵の存在。世界人口はあっという間に激減し、国連が発表している限りでは二十億を下回っているらしい。

 どれだけの人間が海水の中に溺れ、化け物共に食われ、食に喘いで死んでいったのかは分からないが、もう俺たちはどうしようもないところまで追いつめられている。


 終焉は近いのかもしれない。

 ただ、それでも生きている者はいる。

 牙をむく世界に抗おうと、今日も戦う人間がいる。


 滅びに抗う、世界最後の抵抗者(レジスタンス)の集い。


 人は俺たちを――――レディアントと呼ぶ。





  


 広大な砂漠の中に聳え立つ塔。

 それを中心に、円状の居住区域がアリの巣のように張り巡らされている。

 そして人様が生存できるスペースを守るようにして、優に三〇メートルはある特注鉄鋼のバリケード壁が隙間なく彼らを囲む。


 それがレディアント極東支部と呼ばれる区域の全容だ。

 見慣れた光景なので感想は割愛するが、敢えて挙げるならばバリケードが豪華すぎる。中東支部はこんなに上等なものを使っていないし、そもそも全面バリケードになんてする予算すらない。金かけてんなぁ、という嫉妬の心でそれを眺める。


 だが、それでも役不足のようだ。

 そのバリケードの一部が、今まさに猛攻を受けている。異形の害獣――――アンブラー。大小様々なバケモノたちが押し寄せてきていて、バリケードを食い破り、中へと侵入し始めていた。


 そして何より――――上空一〇〇メートル。

 そこには空を覆う雲がごとく、地平に大きな影を作り出す巨大なアンブラ―が揺蕩っている。


 元はマンタだろうか。

 二本の長い触覚と細い尾を持つ、ゆったりとしたエイのシルエット。そんなモノが何百倍にも肥大化した姿となって、今まさに極東支部の中心部である塔へと迫っている。

 巨体をぶつけるだけではないのだろう。エイ型アンブラーの影に覆われた非難区域から炎上が発生している。あのアンブラ―も、何かしらの特化機構を備えていると見た方が良い。


 たまんねえな。

 星の巡りに感謝する。初任務にしては盛大なパーティーを用意してくれたものだ。


「取り合えず、載せてた武装は全部置いてくぜ。俺は支部の方に行く」


「あのデカブツの元まで乗せてってくれねえか?」


「アホ言え。俺まで死ぬだろうが」


 良い案だと思ったのだが、ガリダックに却下される。チキンめ。

 だが実際問題、ここにある火器であのエイ型アンブラ―を殺しきれるとは思わない。移動時用の取り回しのいい軽火器しかないのだ。


 だが、極東支部に行けばあるだろ。

 目標が決まった。アンブラ―共を蹴散らしつつ、こっちの支部の武器庫からデカいのをパクる。良いね。単純明快でやる気が湧く。


「んじゃ、行ってくるわ」


「おう」


 軽い調子で挨拶を済ませ――――走る。

 総重量軽く五〇〇キログラム。銃器と弾丸、そして主武装であるデルタマイト鋼製ブレード。それらを一纏めにした巨大なザックを背中に背負って、数キロメートル離れた被災地へと駆けていく。


 地響きが大きくなる。

 アンブラー共の熱狂的なラブコールが、大気を割りそうなぐらいに響いている。


「ギチギチギチギチチチチッチ」


「どけよカニ公――――!」


 ガザガザガザと、気持ちの悪い音を立てて蠢くバケモノ。

 その群れの真ん中へと突っ込む。


 大きなカニだった。

 やや赤が強い甲羅の、人間大のイリーガル。右鋏は大きく左鋏は少し小さいそのカニはアカギザミと呼ばれている。カニと言えば皿に盛られた料理を思い描くが、お世辞にもこいつが乗る皿なんてテレビ局の大パラボラぐらいだ。そもそも煮るための鍋なんてものが用意できない。


 そんなものが、目算で五〇弱いる。

 しかもカニだけではない。低空飛行しながら鋭利な触手を伸ばすイソギンチャク、人を丸砕きできそうな巨大な顎を持つムカデ、前腕が異常発達した人間大のシャコ。

 奇妙な海鮮レパートリーをした集団は、合計すれば優に三〇〇を超えるだろう。


 まともにやっていては埒が明かない。

 一点突破だ。背中から量産型アサルトライフルM30J9通称『アイザック』を取り出し、俺の進路を防ぐ輩へと撃ち放つ。

 直径15mm、断頭35mmの重長の弾丸がカニ共の甲殻へと吸い込まれ――――貫通する。


「ギギチギイイイイイイイイイッ!!!」


 撃たれてようやく気付いたらしい。

 バリケードへと向かおうとしていたカニ共の内数匹が、横合いからの邪魔者へとターゲットを変更し始める。


 数発程度じゃ死なないのは知っている。急所を狙え。確かカニ系統は口だったはず。

 トリガーを引くごとに弾薬の弾ける轟音が肩を強打するが、気にしない。片手で『アイザック』を取り回しながら、こっちに視線を合わせてきたところを打ち抜いていく。カニは横歩きがデフォの生き物だ。半身になった口を撃ち抜くのは難易度が高いが、俺なら出来る。


 一匹、二匹と奴らは物言わぬ死体となり、地鳴りをあげて崩れ落ちる。

 しかし次から次へと向かってくる。左手が背中の武装を探すが、ロクなモノがない。まずったな。取り合えず衝撃手榴弾を数本取り出し、投げた。爆発。熱量と爆風が前方で炸裂し、カニ以外のアンブラー共を数体巻き込んで炎を揚げる。


「ピュイイイイイイイイイイイ」


 デルタマイト鋼製ブレードを抜剣。襲い来るイソギンチャクの触手を一刀にて切り捨て、続く二刀目で透明な体の中心部――――存在核を貫く。

 命の源を潰され、イソギンチャクは白濁していき、力なく地面へと落ちていく。


 まずい。

 数が多すぎる。こちらの武装に消音性がないのもいただけなかった。

 バリケードへと襲い掛かるアンブラーはそのままに、余剰分の敵がこちらへと集まりつつある。


 まぁ大丈夫だ。ブレードがある限り俺が戦闘不能になるなんてことはないし、それに、ほら――――


 頭上、三〇メートル。

 バリケードを飛び越えて、二つの人影が宙を流れ落ちてくる。


「避けろよ、お客人!」


 アンブラーの合唱パレードの中、やけに通る男の声が空を揺らす。


 太陽に照らされる二つの影。

 その見覚えがあるその造形に、思わずぎょっとする。

 即座にカニの死体、その一つの裏へと即座に身を滑り込ませた直後、


 上空より大凪ぎの一閃――――ゲロテリタ粒子を撒き散らした必殺の一撃が放たれる。


 カートリッジ内に含まれた濃縮ゲロテリタ粒子と空気との化学反応により、温度約四〇〇〇度の粒子糸が刃より射出。結果、緑色の炎が飛翔する刃となって大気を切り裂き、アンブラーの群を一刀両断にする。


 それは銃弾の貫通力など比にならない、純然たるエネルギーの暴力だ。

 ブレードの効き辛いカニの硬い装甲も、弾丸の効きが悪いイソギンチャクの粘性液状の肉体も、相性を無視して一切合切薙ぎ払う。


 いや、金かかってんなぁ。

 一発にどんだけコストかけてんだ。羨ましい。俺もあの武器使いたい。


 ズルリ、と切断面がずれて、真っ二つになったアンブラー共が崩れ落ちる。


 切断面は超高温で灼かれ、アンブラーの並々ならぬ自己治癒能力をもってしても再生は不可能だ。

 脚だけになったカニがしばらく立ち上がろう頑張っている。あんよあんよ、大人しく死んでくれ。最後の抵抗虚しく、やがて力なくパタリと止まる。


 だが、それでもアンブラーは大量にいる。

 二〇や三〇倒したところで相手は一〇〇を超える人外のバケモノ。

 戦況を変えるほどの一撃も、物量の波には敵わない。


 故に、もう一人のような重火器が必要になる。


 俺は別にゲロテリタ粒子の超高熱遠距離斬撃に怯えたのではない。

 もう一つの武装――――アラガルト式超高火力機関銃の乱射を恐れたのだ。


 ダララララララララララ、と耳が狂いそうになる轟音が落ちる。

 秒間四〇〇〇発。対アンブラー殲滅用として開発され、今なお改良を続けられている唯一にして最良の機関銃が、その銃口を震わせる。


 圧倒的だ。一発一発が膨大なコストをかけて作られる特殊弾。厚さ一〇センチの鉄板をも軽々撃ち抜く銃弾の群れは広域に容赦なく降り注ぎ、先の斬撃を避けたアンブラー共を瞬く間に殲滅していく。


 しかも、二丁ある。

 空中で何らかの姿勢制御デバイスを用いているであろうその人影は、両腕に長さ二メートルはあろう機関銃を抱えていた。


 金がかかってるという感想にもう一つ、使い手への賞賛が混じる。

 何らかの身体強化をされているであろうということは明白だが、それにしても腕が良い。機関銃を二丁も振り回すなど並の継承者(インヘリター)では不可能だ。カニの甲羅の裏より、ぱちぱちぱちと拍手を送る。


「おう、無事かお客人。手伝ってくれてありがとな」


 轟音吹き荒れる中、一人の男がこちらへと歩んでくる。


 キザったらしい男だ。

 身長百八〇センチメートル程。細身の体躯に長い軍服を羽織っている。

 前髪は長く、後ろ髪は刈り込んでいた。

 右耳には四つものピアスをぶら下げており、右手にもゴテゴテとした指輪が幾つも嵌まっている。


 男は右手で刃のない刀剣を弄んでいた。

 おそらくこいつが、先のゲロテリタ粒子製の斬撃を行った者だろう。


「助かった」


「こっちのセリフさ」


 男は俺を見ると「ふぅん……」と納得したような顔をした。

 おそらく俺の服装と、胸につけているタグで判別されたのだろう。自己紹介もしていないのに、男は俺を同業者と認め、促す。


「着官式もあることだし、着いてきてくれや。あぁ、ここはもう大丈夫だ。小さいのはあいつが殲滅してくれるし、他のインヘリターも住民の避難や殲滅作業に出てるしよ。お客人は先に中で待っといてくれや」


「……空飛んでるあのデカブツはいいのか?」


「あー……ちっと説明が面倒なんだが、問題ねえよ。ありゃ俺たちの管轄外だ」


 どこか呆れた顔で話すキザ男に、どういうことかと質問をしようとする。


 と、衝撃。


「オォォ――――――――――ン」


 マンタが鳴いた。

 長く響く哀切の鳴き声は、自身の不幸を嘆くものだ。


 見れば上空のマンタを貫く、一筋の閃光が空の向こうまで伸びている。

 東方支部の中央塔上部。外殻の一部が解放され、ここからでも確認できるほど巨大な砲塔が顔を覗かせている。

 その砲塔はマンタへと照準を合わせており、直後、二本目の高電磁砲が放たれる。

 それはマンタの身体に二つ目の風穴をあけ、空を焼き、雲の向こうまで伸びていく。


「アオォーーーーーーーーーーン……」


 大気を揺るがす巨大生物の鳴き声。

 上空を漂っていたマンタはふらふらと姿勢を崩しつつ、バリケードの更に向こう、何もない砂の大地へと墜落していくところだった。


 ヒュゥ、とキザ男が口笛を吹く。


 なんていうか……金かけてんなお前ら。

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