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第二話 エキシビション

セリフばっかになってしもうたです。無駄多いなと思いながらももういいやと思って投稿しまし。

「ふぅ、なんとか間に合ってよかった」


 さっきの怖い案内役の人に睨まれながらも、どうにか無事会場入りをした俺は、説明会が始まる前に間に合ったことに安堵の息をついた。


 会場となるのは、大人数を楽に収納できるような広さを持つ多目的ホールのようだ。

 一定の間隔で椅子がずらりと並び、皆それぞれ空いている座席を確保していた。

 そんな座席の前には壇上があり、その真ん中には大画面の映像を映し出すプロジェクターや教卓机が設置され、その机の上にはマイクが置いてある。


 説明会が始まるまで残り僅か5分ほどか。

 この時間帯ともなると、ほとんどの者たちが自分の席を確保しているようだ。

 特に話を一番聞きやすいであろう前方の席は既に満席状態。

 そのためなのか、まだ空いているのはプロジェクターや教卓机から遠く離れた後方の席しかなかった。


 少しでもマシな席を確保しようとしばらく歩き回ったが結局良い席はなく、大人しく後方の席へ座ることになった俺は、開始される僅かな時間の間に貰ったパンフレットに目を通す。


 今日のスケジュールや学園についての歴史や伝統、敷地内の概要、噂の『学園ダンジョン』等の詳細が大まかに載っている。

 パンフレットを読んでいると、急にプロジェクターが起動音を立て始めた。

 その画面には、『学園説明会』の文字がデカデカと映し出される。

 どうやら今から説明会が始まるようだ。


 まず、身なりの整った壮年の男性が悠然と壇上まで歩いて教卓机の前に立つ。

 机に置かれているマイクを持ち、俺たちーー受験志願者の方に目を向けた。

 その瞬間。


「ーーッ⁉︎⁉︎」


 ゾクっとなった。

 ほんの一瞬だったけど、強烈な殺気を感じた気がしたが……気のせいなのか⁉︎


「皆さん、おはようございます。本日は学園説明会にご参加いただき誠にありがとうございます。私はアイオリア学園第二十五代目学園長である篠森公明しのもりこうめいと申します」


 あ、あれが学園長先生か……絶対強いだろ、それもヤバいくらいに。

 パッと見で穏やかな好々爺にしか見えないけど、見る人が見れば、それは大きな間違いだと理解させられる。

 見た目に騙されてはいけないという典型的な例だ。

 学園長からヒシヒシと伝わってくるのは、紛れもない絶対強者の風格。

 そんな風格を醸し出している学園長に純粋な恐怖を感じて、思わず圧倒された。


 自分で言うのも何だけど俺は天才型の人間だ。

 昔は神童なんて言われたりしたし、今でも同じ学校には並ぶ者はいないくらいには強いと自負している。

 だからこそ相手の力量をある程度感じ取ることにも長けている自信があった。

 そんな俺の本能的な感覚が告げてくる。


 あの爺さんは、歴戦の猛者だ、と。

 いや、化物の類と言ってもいい過言ではない。


 で、そんな明らかにやべえ奴が何故か俺を凝視してくるんだけど⁉︎

 しかも全然目を逸らしてくれない。

 それはもう、えっぐいくらいに見つめてくる‼︎

 こ、怖すぎる……。


 もしかしてアレかな?

 さっきの怖い案内役の先輩っぽい人と揉めたから問題児的な扱いをされているのか。

 それが原因で目をつけられた……とか?


 いや、待て、それは不味くないか⁉︎

 だって、ここのトップに悪い意味で目をつけられたとなれば、こんな奴はアイオリア学園に相応しくないって判断されて受験で落とされる可能性があるし……そ、それは不味すぎる⁉︎


 学園長は、そんな俺の心情などお構いなく話を続けている。

 穏やかな口調で学園についての未来像や俺たち若き冒険者に希望を与えるような大変ありがたいお話をしているけど、どこか意味深な視線のせいで全く集中できない。


 で、そんなこんなで悩んでるいる内に、いつの間にか学園長の話は終わっていた。


 この後は、生徒会役員による学園の校風や授業関連の話が予定されている。

 さっき学園長の謎な視線は気になるけど、一旦忘れて話をちゃんと聞かないとな。

 というか、そのために地元から遠く離れた東京まで来たわけだし。


 と、思ってたんだけど……。


 いやまあ最初はよかったよ、最初はね。

 生徒会のトップである生徒会長や副会長による、校風や入学してくる上での心構え、入学してから苦労する点について面白おかしく話してくれたので、大変ためになる話だったと思う。

 だけどさ、問題は次に壇上に上がってきた人物だ。


「俺は1年、生徒会庶務の田之上魁斗たのうえかいとだ。敬語は苦手だから許してくれ」


 あの超怖い案内役の人である。


 というか、あの人、生徒会の役員だったのかよ⁉︎

 あんな如何にもヤンキーですよみたいな人を生徒の模範となる生徒会に抜擢してんじゃねえよ‼︎

 俺、見た目怖い人苦手なんだから‼︎

 くそう、学園長だけでなく、生徒会役員という学園での権力が無駄に高い奴らにも悪い意味で目をつけられているというわけか……全く、なんて厄介な状況に……‼︎


「本当は皆が気になっているだろう『学園ダンジョン』について詳しく話そうと思ったが予定変更だ。そこは入学したら嫌でもわかるしな。まあ入学してからの楽しみとでも思ってくれ。でだ。今から何を話す……いや、何をするのかというと。ーーエキシビション(模範試合)だ‼︎」


 えっ、エキシビション(模範試合)⁉︎

 つまり戦いを見せてくれるってこと?

 なにそれ普通に面白そうなんだけど‼︎


 発案者の怖い案内役の人ーー改め、田之上先輩が生徒会の誰か、もしくは教師と軽く戦って冒険者としての実力を見せてくれるってわけか。

 冒険者志す者の実力を直に体感させることが目的なのだろう。

 それは素直に楽しみだし、今後の参考にもなる。


 世界各国から優秀な人材が集まるアイオリア学園の全生徒をまとめる存在である生徒会が弱いなんてはずがない。

 事実、田之上先輩からは相当な実力を持っていることがうかがえる。


 通っている中学なら負け無しだし、むしろ無双すら余裕でできるくらいには実力がある俺だけど、仮に田之上先輩と戦ったら負けるのは確実に俺だ。

 悔しいけど、勝てるビジョンが全く浮かばない。

 それほどまでに明確な実力差を感じさせる。

 そんな田之上先輩が戦うのだから興味がそそられないはずはない。

 それは俺だけでなく、周りの者たちも同じようだ。

 ザワつきながらも、ワクワクとした表情で田之上先輩を見ているのがその証拠だろう。


 だが、ここで先輩から驚きの発言が飛び出した。


「と、その前に誰がこのエキシビション(模範試合)に参加するかを決めねえとな。じゃあやりたい者は挙手しろ。俺が未来の後輩であるおまえたちに胸を貸してやる」


 えっ、戦うのって俺たち側なの⁉︎

 てっきり向こう側同士でやるのかと思ったんだけど。

 というか、そもそも俺たちと先輩じゃ実力差が開き過ぎてて相手にならないだろう。

 エキシビション(模範試合)のはずが、ただの蹂躙劇になるんじゃね?

 正直そんなの見せられても得るものはないし、なんだったら無駄としか思えない。

 最悪、トラウマ植え付けられそうな気配すらするし。


 先輩のまさかの発言により、さっきより大きくざわつく。

 そりゃあ当然だろう。

 先輩同士か教師がエキシビションをすると思ってたら、圧倒的に実力差のある先輩と戦えとかどんな無理ゲーだよ、詐欺だよ。

 こんな誰も立候補しないだろ。


 と思ってたんだけど、意外と何人かの血の気の多い……いや、勇気のある者たちが手を挙げて立候補していた。

 それに釣られてなのか、俺も私もと、続々と手を挙げていき、最終的には結構な数になっていた。


 絶対こいつらの半数以上がその場の勢いとノリで決めただろ……。


 真剣勝負とは違ってエキシビション(模範試合)には勝敗が付かないし、だったら、この学園関係者が大勢いる場で自分という存在を少しでも印象付け(アピール)して受験を有利にできたら、とか考えているのではないだろうか。


 俺?

 俺はもちろん立候補なんてしないよ。

 だって、あの人も手加減はしてくれるだろうけど、確実にボコボコにされて負けるのは目に見えているし。

 しかも公衆の面前で。

 それがわかっているのに手を挙げるほど俺はマゾではない。


 まあ他にも理由はある。

 この会場には俺が一目惚れした例の少女がいるだろ?

 それはつまり、先輩から一方的にやられる姿を彼女にも見られてしまう。

 俺は彼女の前でそんな無様を晒すのだけは絶対嫌だ‼︎

 見せるなら、かっこいい姿を見せたいというのが男心ってもんだろう。


 まあなんにせよ、俺がやるんじゃなければ誰がやってくれても構わない。

 むしろ、助かるくらいだし。


 と、お気楽に眺めていたのだが、先輩にふと異変を感じた。


 ん? なんか、先輩の俺たちを見る目がやけに冷ややかになったような……。


「……おい、おまえら。一つだけ言っておくが、その場の軽いノリや多少腕に覚えがあるし軽く腕試しでもしようかな程度で立候補するのだけはマジでやめとけよ? まあそんな奴がいるとは思わないが、仮にいるのであれば、今のうちに手を下ろしておくことをおすすめする。

 ーー何も考えずに軽い気持ちで取った選択肢ほど後悔するものはないからな」


 先輩はそう吐き捨てるように言った。

 特に最後の言葉には、かなり怒気がこもっていることがわかる。

 それを感じ取ったのか、さっきまで威勢よく手を挙げていた連中は、まるで冷や水でも浴びせられたかのように黙り、一斉に手を下ろしていった。


 まず確認なんだけど。

 これってエキシビション(模範試合)だよね?

 エキシビション(模範試合)って、こんな覚悟が求められるもんだっけ?

 まあこの空気の中でそんなことを言えるわけないから言わないけどさ、怖いし。


「先に言っておくが、これくらいの攻撃は普通にするからな」


 そう言ったと同時に先輩の指先から魔力の高まりを感じた。


 ーー何をする気だッ⁉︎ ま、まさか⁉︎


「ーー小雷の一撃(サンダーショット)ッ‼︎」


 そして次の瞬間。

 指に収束した魔力が雷をまとった一撃となって放たれた。

 それは誰も居ない後方の席があるところに命中。

 ほぼ同時に耳をつんざくような爆音が響き、舞い上がった煙に視界が遮られた。

 その余波でこちらまで大きな衝撃がくるのを耐える。

 煙が晴れると、そこには後方の席どころか、その後ろの校舎がゴッソリと消し飛んでいた。


 ええええええええええええええッ⁉︎

 当たり前のように校舎をぶち壊しやがった⁉︎⁉︎

 というか、この威力の攻撃をまともに食らったら大惨事なんだけど⁉︎

 あ、あの人、本物マジもんのやべえ奴だ……‼︎


『…………』


 先輩のキチガイとしか言いようがない行動、いや暴挙に皆一同に黙りこくった。

 聞こえるのは、破壊された校舎の大穴から吹き込んでくる風の音のみ。

 破壊された隙間から外の熱気が多目的ホール全体に広がるが、今の攻撃に肝が冷えたのか熱さを感じる余裕はなかった。


 いや、一旦落ち着こう。

 こんな派手に暴走やらかしたんだから誰かが、このやべえ人を止めてくれるだろう、流石に。

 普通に停学、いや退学を言い渡されてもいいレベルの暴挙だし。


 と思っていた時期が俺にもありました。


 信じられないことに他の生徒会役員の人たちは勿論もちろんのこと、教師すらも全く動く気配がない。

 まるで、校舎破壊(この程度のこと)は日常茶飯事だとばかりな表情をしてさえいる。

 この学園トップである学園長にいたっては、急激に身の危険を感じて青ざめていく俺たち受験志望者を、何故か楽しそうな表情で眺めているというクレイジーっぷりだ。


 こんな反応をされると、むしろ俺の感覚の方がおかしいのかとすら思ってしまう。

 いや、断じてそれはないか。

 おかしいのは絶対あっち(学園)側だ。


 この学園は本当にやべえ……揃いも揃って頭のネジが吹き飛んでやがる‼︎


 ほら見て、先輩を‼︎

 あれだけのこと(校舎破壊)をしたのにもかかわらず、特に悪びれた様子がないんだよ?

 なんだったら、まるで何事もなかったかのように、さっきの話しの続きをしようとしているくらいだし。

 どうなってんだよ、この学園は……。


「とまあ、これくらいの攻撃は普通にするからな。それで大怪我を負わせるかもしれないし、今後一切戦えないレベルのトラウマを植えるかもしれない。はたまた、運悪く急所に攻撃が当たって死ぬかもしれない。

 ーー今から行うのはそういうリスクをともなエキシビション(模範試合)だ」


 ーー超絶悲報‼︎

 いつの間にやらエキシビション(模範試合)とは名ばかりの命がけの戦いになっていた件。


 俺も含めと話を聞いていた皆が『それ、もはやエキシビションじゃなくね?』といったような唖然の表情を浮かべるも、頭で処理できないレベルの急展開に誰しもが何も言うことはできなかった。

今日から仕事とか信じられない

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