苺パワー、全開だ!
あの場で何があったのかと聞いてもミカは自らの力で勝ったというだけで語る事と言えばにわかに信じがたい荒唐無稽な活躍の光景だった。
しかし、現実として邪竜は退治されているのでいかに嘘くさくともそれを事実として受け入れるしかないのだろう。
「まあ、それはそれで構わんのじゃが…………」
テルは苺のパイをかじりながら苛立ったように言った。
「一体いつまで苺を食わせる気なのじゃ! 流石に飽きてきたぞ、肉食わせろ肉」
「仕方ないじゃん、実家から山のように送られてくるんだもん。っていうかお前いつまで私の家に居る気なんだよ。マーシュはともかく、お前は国があるんだから帰れよ」
「嫌じゃ。あの翁を見つけてこの手で殺すまでは腹の虫が収まらん。死体は見つかっておらんのじゃ、どこかで余のように後継者を作っているかもしれんからな」
「やれやれ…………」
骸羅の死体は見つからなかった。
無難に考えるなら邪竜のブレスにより燃え尽きてしまったといった所だろう。
それはテル自身も分かっているだろうが、真実として受け入れるにはもう少し時間が必要だった。
椅子にもたれかかるようにしてミカは後ろに居るスロウを見た。
「お前からもなんとか言ってやってくれよ。余計なヤツ養う余裕無いって。マーシュが邪竜討伐で出た賞金、全部あの騎士崩れにあげちゃうんだもんなぁ」
「まあ、約束でしたからね、仕方ありませんわ。ただ、私の見立てではテル様も中々鍛え甲斐がありますわ。手放すには惜しいかと」
ミカは腕を組んで唸った。
「うーん、仕方ないなぁ。面倒ちゃんと見るんだぞ」
「ンクク…………責任を持って飼わせて頂きますわ」
「余はペットか!?」
強化プランに付いて語りだしたスロウから離れ、テルは一人静かに何かをしているマーシュへと声をかけた。
「何をしておるんじゃ?」
「あっ、テルさん」
机の上に散らばる用紙の一枚を手に取って眺めたテルは言う。
「これは……今回の冒険の記録か」
「はい、旅の合間に書き溜めておいたので纏めているところです」
「では余の事は慈愛に溢れた絶世の美女として書くのじゃぞ」
「えっと……それを今からするのは難しいというか…………」
ミカ達もやってきて口を出す。
「そういや私の事は可愛い感じで書いてくれる話だったよな」
「私は美しくですわね」
「どうしてそんな無茶ばっかり…………」
マーシュの胸倉を掴んでテルは言う。
「おい、どういう事じゃ! こやつらばかり優遇しおって! どうせ余が2×歳の行き遅れじゃから馬鹿にしとるんじゃろう!? それともおっぱいか? やっぱりおっぱいなのじゃな? このおっぱい星人め!」
「えうー、誤解ですぅー」
涙目のマーシュが謂れの無い罵倒を受けていると不意にドドドドという音と共に地面が揺れた。走行しているかのように続くそれが近くにある事を理解するとミカ達は急いで外に飛び出した。
「なんだありゃ!?」
道を自走してやってくるのは正面にライオンの顔を付けた鉄の乗り物だった。
その存在にミカ達が困惑していると地中からモグラ型が現れ、上空からは鳥を模した鉄の乗り物の操縦席から見知った顔が姿を現した。
「ワハハハハハ! 驚いたか、悪魔め!」
「お前は偽エルフ!」
パイロットスーツを着たエルフは高らかに語る。
「今日の私は人呼んでエルフの勇者。貴様の首にかけられた賞金を頂きに来たのだ」
「賞金だって?」
「そうだ! この『生死問わず、最低でも恥ずかしい所を撮影できればOK。倒せれば言うこと無し』という依頼を受けてここにやってきたのだ」
「なんて頭の悪い依頼ですの。それを受けるのもどうかと思いますけれど…………」
「私もそう思ったが、やたらと金払いがいいのでどうにも断りきれなくてな。やたら「ベリベリ」言っていた胡散臭い連中だったのでやはりまずかったかもしれん」
困惑したようにマーシュは言う。
「なんか僕、依頼主分かっちゃいました…………」
「余もじゃ…………」
仕切り直すようにエルフは言う。
「とにかく今日が貴様の命日だ、覚悟するがいい!」
操縦席に戻ったエルフは仲間達に通信を入れた。
「ディード、レゴラス! 合体だ!」
「本気なの!?」
「まだ一回しか練習してないのだぞ!」
「準備万端で戦いを迎えられるものか! つべこべ言わずに合体だ!」
「くっ、了解!」
エルフの命令により各機が合体フォーメーションに入った。
明らかに機体が伸びたり、どう考えてもそんな風にはならないだろうという不自然な変形をしたりしながら、やがて人型の機械へとその姿を変えた。
「勇機合体! エルフガイン!」
「えっ? …………なにこれ」
困惑するミカ達をよそにエルフは変わらない調子で言う。
「エルブレード!」
「おい! 当然のように剣出すな! 説明をしろ、説明を!」
「エルブレードから繰り出されるエルフクラッシュはエルフガインの必殺技だ」
「そういう意味じゃねぇ! っていうかそれクラッシュしちゃ駄目だろ!?」
「勇機の力で今日こそ貴様に勝つ!」
話し合いは無理だと理解したミカは指輪を剣に変えると仲間達に言った。
「あのロボットを屑鉄にするぜ。準備はいいな?」
「大丈夫ですわ、我が悪魔」
「やれやれ、お前と居ると荒事ばかりじゃな」
「行けます!」
ミカは不敵に笑って言った。
「苺パワー、全開だ!」




