第七十四話「流れ落ちる」
こんにちは、オロボ46です。
今回は車の中から始まります。
それでは、どうぞ。
自分たちは一度ホンコンに戻り準備を整えて、今は次の目的地「ハノイ」に向かっているところだ。ソヨンさんの運転する車の中で、自分は流れ落ちる汗を抜くった。
「本当によかったんですか? あの二人を逃がして......」
ハンドルを握るソヨンさんは前を向いたまま質問した。
昨晩の二人は、武器だけを没収して解放している。ナイフの殺し屋は、口封じに来る別の殺し屋から相棒と喧嘩しながら逃げ続けると言い残して去っていった。
ソヨンさんの質問に答えたのはルイさんだった。
「密告しなくても常に見られているとしたら、別に殺す理由がないだろ?」
「ルイさん、あんたも秘宝のことを信じるんやね」
リェンさんが同調するように頷く。
「ああ、ユウちゃんは一人で遺跡に行って殺し屋に襲われたんだろう? それならこの中に密告者なんているわけがない。それに、秘宝に似たような物を俺たちは持っている。俺は秘宝の説を信じるぜ。兄貴もそうだろ?」
「......」
ブォエンさんは静かに頷いた。バックミラーに写るソヨンさんの表情は曇っている。
「それはそれで、かなり厄介なことですよ......どこでも我々の様子を見られるということになりますから......」
「そうだねえ......これからはゆっくりしている暇はないかも知れないねえ......」
......また一滴、自分の頬から汗が流れ落ちた。
「......」
「なあ兄貴、そろそろ着替えるか?」
「......え、もう暑いの?」
ブォエンさんはようやく暑さに気づいたようだ。
「もうこの辺りに来ると、亜熱帯に近づいて来るからねえ......うちもジメジメしてたまらない......こんな時にはひと泳ぎして汗を流したいわあ」
「......さっきゆっくりしている暇がないって言ってませんでした?」
亜熱帯......恐らく、気候の話だろう。確か......今まで旅してきた地域は温帯と呼ばれている気候のはずだ。今までとは違い、気温と湿度が高くなるはずだ。
「さて、ハノイに着いた訳なんやけど......」
薄着に着替えたリェンさんは背伸びしながらこちらを見た。
他の仲間たちも薄着に着替えており、自分も薄着の上にケープを羽織っている。
「まずは腹ごしらえをしたいと思っているんだけど、反対意見はないかえ?」
「意義なしっ!」「......は......はい......」「それぐらいなら良いですよ」
自分も賛成する。
「よし、さっそく行くとするかねえ......と言いたいところなんやけど、うちはハノイに来るのは初めてなんよねえ......ソヨン、どこか美味しい店はないん?」
「私だって初めてですよ......ルイさんかブォエンさんはどうですか?」
「確か兄貴が一回だけ来たことがあるんだよな。その時は俺は用事で来れなかったんだが......兄貴、なんかいい店ないか?」
「......」
ブォエンさんは思い出すように空を見上げ、すぐに手を叩いた。
......
「ユウ、どうしたんだ? つまらなさそうな顔をして......」
表情で詠まれてしまったようだ。ルイさんが不思議そうに聞く。
ブォエンさんが来たことのあるという店で出されたのは、ラーメンだった。自分は以前ナガノやヒロシマで食べたことがあるとルイさんに説明する。
「なにっ、そこにもこれがあるのか? 俺が行った時には無かったんだけどなあ......」
「ぶっ!」
いきなりリェンさんが吹き出した。
「ユウさん、もしかしてラーメンの事を言っているんかい?」
「なんだ、そっちかよ......確かに似ているが......」
ルイさんのため息と共に、リェンさんは腹を抱えて笑い出した。ブォエンさんは夢中になっているのか、無視し続けて橋を動かしている。
「これはラーメンじゃなくて"フォー"って言うの。私も食べるのは初めてだけど、フォーの麺はお米で出来ているのよ」
ソヨンさんの説明を聞いていると、確かにラーメンと比べて具材も全然違うし、麺はここまで白くないことに気づいた。味もラーメンとは違っていた。
全員食べ終わり、席を外そうとした時に、
「あ、ちょっとお客さん」
と店員の男性に呼び止められた。どうやらベトナム語で話しているらしく、自分は耳鳴りで理解できるものの、リェンさんとソヨンさんは意味が通じていないようだ。
店員に答えたのはルイさんだった。
「どうしたんだ?」
「あんたたち、旅人だろう? 最近、妙な病気を持った怪物が出てきているって噂でね......その病気は怪物には何ともないが、人間に感染すると凄い高熱になるらしいから、気をつけていけよ」
「ああ、わざわざ忠告ありがとな」
「そこの背の高い兄ちゃんが連れて来てくれた客だ。せっかく常連になるかも知れない客を、病で苦しませたくねえからな」
「......」
ブォエンさんは頭をかきながら、お辞儀をした。
いかがでしたか?
次回もお楽しみに!




