第六十六話「竹と物語と怪物と」
こんにちは、オロボ46です。
今回はシャンハイ近くの竹林から始まります。
それでは、どうぞ。
「ふう......見えて来ましたね......」
ソヨンさんの言葉を聞いて、自分は車の窓の外を見る。
空を覆い被せる雲に向かって高くそびえ立つ緑色の竹が、森のように集まっている。
「あの竹林に材料となる薬草が生えているんよ。それを採取してすぐに帰るとするんよ」
リェンさんの言葉に、自分とブォエンさんは頷く。
「......竹って聞くと、日本の有名な物語を思い出しますね」
ソヨンさんは懐かしむように語り始めた。
「ああ! おじいさんが竹を切ったらのアレねえ! はあ......うちもその作品の主人公のように、イケている男たちに求婚されてみたいわあ......」
リェンさんは助手席でうっとりしながら車の屋根を見つめた。
「ねえ、もしうちが月に帰って行くとしたら、どう止める?」
「......」
「そもそも月には人は暮らせませんよ?」
あっさり答えるソヨンさんに、リェンさんは失望したようにため息をつく。
「相変わらずソヨンは現実しか見てないねえ......ねえユウさん、あんただったらどう止めるんだい?」
いきなり聞かれても考えていなかったため、少し時間が欲しいと伝える。
「そうかい......それじゃあブォエンさん、あんたは?」
「......え......えっと......あの......その......」
ブォエンさんは慌てるようにぶつぶつと呟き始めた。
「ん? なんだって?」
「ぼ......僕は......その......手紙を......書くと約束......します......」
「ふーん」
リェンさんの目付きが変わった。
「あんたは止めようとしないんだね?」
「え......? いや......その......」
「うちは気に入ったよ!! 帰ると自分で決めた人を引き留めるのは、うちだったら鬱陶しいと思うからねえ! あんた、なかなかはっきりしないやつだと思っていたけど、素直でかわいい子だね」
「あ......その......あ......あははは......」
ブォエンさんは顔を赤くしてうつ向いてしまった。
「......あ、もうそろそろ入りますよ」
ソヨンさんの声を聞いて自分は窓の外を再び除き混む。
車は今まさに、竹林の中へと入っていこうとしていた。
「よしソヨン! この辺りで下ろしてくれんかねえ?」
リェンさんの一声を聞き、ソヨンさんは足元のブレーキを踏む。
扉を開けて車を降りると、自分たちが竹の大群に囲まれていることがわかった。そこに風が吹き、竹たちは風に撫でられるように曲がる......
「お義母さん、採取はすぐに終わりますか?」
車に残るソヨンさんが、自分と共に降りたリェンさんに訪ねる。
「ああ、念のために余分に採取するつもりだけど、それでもすぐに終わるはずだよ」
そう言いながらリェンさんは薬箱から手袋を出して装着する。
「わかりました。私たちは車で待機しています」
「ああ、ブォエンさんもしっかり頼むよ!」
車の中で針のような道具を取り出していたブォエンさんは、慌ててこちらを向いて一礼した。自分とリェンさんは車から離れ、薬の材料となる薬草を探し始めた。
風が再び吹き、竹が再び撫でられる。
「この竹たちも......しっかりしているねえ......」
この光景を見てリェンさんが口を開いた。
「森に生えている木は地面にしっかりと根を生やし、強風に耐えている。だけど竹は逆に風に流されるようになっている。風を受け流して、飛ばされないようにしているんだよ......他人との考えが違えど、ちゃんと自分の考えを信じているんだねえ......」
......
「おっといけない、早く採取しないとソヨンに怒られちまうね」
そう言い直してリェンさんは一本の竹に向かって歩き始め、その付近に生えている青色の草を抜き取った。
「これがトカゲと似た怪物の毒に効く薬草だよ」
......
「ユウさん、どうしたんだい?」
自分の中に、ある疑問が残っていた。
なぜ、怪物たちの姿は......
「......!!」
突然、リェンさんが立ち上がった。その足元に合ったのは、白と黒が目立つ小さい干物のような生き物だった。
「びっくりした......心臓に悪いねえ......」
自分はその生き物に毒があるのかと尋ねる。
「毒があるわけじゃあないけどねえ......この怪物に水が一滴でもかかってしまうと......」
ポツ......
頭に雫が降ってきたような気がした。
「......」
リェンさんは汗を流しながら、干物のような生き物に目を向けた。
雨粒に打たれた生き物は、まるでその雨粒を吸収するように膨らみ出した。
「まあ、こういうことよえ......早く車に戻るんよ!!」
離れたところから振り替えってみると、怪物はすでに竹を越えていた。熊のようなシルエットに白色と黒色の毛並みを持つ......
これが......ジャイアントパンダ?
ユウ、それパンダじゃなくて巨大な怪物......
いかがでしたか?
次回もお楽しみに!




