第六十四話「双子の学者」
こんにちは、オロボ46です。
前回、虎の怪物が少女の父親だということが判明しました。
それでは、どうぞ。
喉に手を当ててなんとか治療を済ますことが出来た。すぐに空気を吸い、体を起こす。しかし、頭痛が起き始めた。
「ユウさん......無事かえ......!?」
リェンさんが足首を押さえながら話しかけてきた。自分は傷は大丈夫だが、頭痛が起きてこれ以上傷を治すことが出来ないと伝えた。
「そうかえ......それなら、あの物干根を使うとええ。あの怪物も、刺さったのを抜いたもんだから出血しているだろうねえ......こっちの方は大丈夫だから、早くソヨンを......」
パリンッ!!
何かが割れる音が聞こえた。虎の怪物が車のガラスを割り、中に首を入れている!!
「ユウさん!! ソヨンたちを!!」
自分はすぐに物干根を手に取り、虎の怪物に向かって走った。
あそこまで知能があるのなら、普通に近づいただけでは気づくだろう......
あえてガラスに映るように近づき、物干根を振り上げる。怪物がすぐにこちらを振り向き、爪を横に振るのを見て、一歩下がってから再び突き出す。顔には当たらなかったものの、左胸に命中させることが出来た。
怪物は怯むものの、すぐに爪を突き刺そうとした。自分は物干根から手を離したが、右腕に爪が触れてしまう。手首から腕にかけて服と皮膚が裂け、傷は赤く染まっていく。
自分はすぐに物干根を掴み直し、それを怪物の体から引き抜いた。怪物が再び怯む隙に、自分は怪物の左目に刺す。
「グアアアア!!」
すぐに抜き、怪物から一旦距離を取る。虎の怪物は狂ったように爪を振り回し出した。
「!! 駄目ッ!! 外に出ちゃ駄目なの!!」
車の中からソヨンさんの悲鳴が聞こえた。
「お父さん......目が......痛いの......?」
少女が割れた窓から出てきた。割れたガラスで再び傷ついた少女は、心配そうな目で怪物に近づいてくる。
「......ド......ドコダァ......?」
......!!! 怪物は爪を振り回しながら少女に近づいて行く......!!
自分は怪物の足を睨んだ。しかし、喉の傷を治した時の頭痛のせいで、怪物を燃やすことが出来ない......!!
虎の怪物が少女の前で爪を振り上げたその時、聞き覚えのある音色が聞こえてきた。
「......お父さん?」
少女が弱々しく話しかける。虎の怪物は突然動かなくなり、その場で倒れた。
近づいてみると、怪物は自らの喉に爪を当てて息絶えているのが見えた......
「おーい!! 大丈夫かあ!?」
声の聞こえる方を見ると、二人の人影が見えてきた。
「......お義母さん、この二人が例の双子の学者で間違いないですね?」
辺りが暗くなり始めた頃、双子の学者が乗って来た車の前で焚き火の準備をするソヨンさんはリェンさんに確認を求めた。
「ああ、間違いないよ。うちがイケメンの顔を間違えたことはないんだから!」
リェンさんは胸を張って答えた。怪物に足首を切られた時、リェンさんはすぐに応急処置を取って出血を止めたらしい。自分が頭痛が収まった後に治療したので、歩行も問題なくできるようになっている。
自分は双子の学者......ブォエンさんとルイさんを見た。ルイさんの手には、あの人が持っていた笛が握られている。
自分が休んでいた間、ソヨンさんは二人に遺跡での出来事を話したが、その時に自分がムー大陸の住民の子孫の可能性があることも話してしまった。二人は驚いた目でこちらを見ていたが、リェンさんの治療をするのを見て納得してくれた。
「やっぱりこの笛の力は奇妙だな......リコーダーしか吹けない俺でもちょっと練習するだけで怪物を操れてしまうなんて......」
「......」
よく口を動かすルイさんに、あまり口を動かさないブォエンさん。二人共、ソウルで出会った時と変わっていない。
「それにしても、なぜお二人はここに来ているんですか? 依頼人の話だとシャンハイで待機しているって話でしたが......」
ソヨンさんが疑問に思っていたことを吐き出すように尋ねる。
「待っている間は暇だったからな。今後の旅費を考えて依頼を受けておくことにしたんだ。で、受けた依頼がはぐれた夫と娘を探してくれということだ」
そう言いながらルイさんは少女の方を見た。
「......お父さん......お父さん......」
少女は、動かなくなった虎の怪物の上に涙を流していた。
「言葉を発する怪物の話はタケマルさんから聞いている。もしかしたら、この子は父親が怪物になる瞬間を目撃したんだろうな......」
「いてっ!!」
突然、ブォエンさんが膝を押さえながら声を上げた。
「いきなりどうしたんだよ? 兄貴......いつっ!?」
「何かに噛まれたんですか......いたっ!?」
ルイさんとソヨンさんも体の一部分を押さえながら言う。
よく見てみると、ソヨンさんの足元に小さなトカゲのような生き物の頭が転がっている。その生首が突然こちらの方向を向いて飛んできた......!?
自分はすぐに生首を燃やした。小さな黒い塊が、こちらの足元に落下する。
「......ねえユウさん、さっきの怪物......トカゲみたいやなかった?」
その黒い塊を見ながら、リェンさんが尋ねてきた。その表情は真剣そのものだ。
自分はすぐに頷くと、リェンさんは慌てて腰の箱を開けた。
「噛まれたのは少なくとも三人......しもうた......薬が二人分しかない......」
「お義母さん......一体さっきの怪物は......?」
「あのトカゲのような怪物は......首だけでも生き残る生命力と、対象を殺す猛毒を持っていたんだよ......」
いかがでしたか?
一難去って、また一難......というやつですね。
次回もお楽しみに!




