第四十七話「支え」
こんにちは、オロボ46です。
今回も洞穴の中から始まります。
それでは、どうぞ。
「......あたし......見ました......あの怪物の口に入っていった炎......まるで半分に別れた人の体をしていました......その炎で......あの怪物は退散して行った......あれは......怪物の歯によって切断された......アオヒコさんの......」
カリヤさんの声を聞きながら、自分は右半身だけのアオヒコさんを見ていた。
自分の力で治すという考えが一瞬浮かび、すぐに消えた。自分の力は自分で知っている。仮にアオヒコさんを治すことが出来ても、もう動くことはない......
「......早く行こう」
タケマルさんが声をかけた。
「行くしかないんだ......たとえどんな奇跡が起きようと......どんなに願っても......変えられない悲劇があるんだ......だが......その悲劇は、誰かの支えになる......」
......
「ユウ......行くしかないんだ......! アオヒコの悲劇を君の支えにするんだ!!」
タケマルさんはこちらの肩に手を置いた。自分は震える手で、アオヒコさんを地面に寝かせ、立ち上がった。
......?
立ち上がった時、地面に何かが光ったような気がした。一瞬、今すべきことを忘れそうになる輝きだった。
「......なんだ? これは......」
タケマルさんはその何かに手を伸ばす。
「サキコに......何をしたんですかのう......」
......!!!
怪物が去っていった方向とは反対側に懐中電灯を向ける。その先には......!!
「サカノ......!!」
カリヤさんはボウガンに矢を装填し、それを構えた。
「やはり、ユウちゃんがやったんでしょうな......初めてユウちゃんに会ったとき......サキコの話相手としていいと思ったんじゃが......辞めておいて正解じゃったのう」
「......このっ!!」
「!! カリヤ!! ボウガンを降ろせ!!」
引き金を引こうとカリヤさんの手を降ろさせようとしたその時、自分はサカノさん......いや、サカノさんが手に持っているものに気づいた。
洞穴に、笛の音が響いた。
「ぐあっ!!」「......!!?」
カリヤさんはタケマルさんの右膝に矢を放った。サカノさんの笛の音が、カリヤさんが構えるボウガンの向きを変えたのだ。タケマルさんはその場で崩れ落ちた。
「ウソ......?」
サカノさんは固まっているカリヤさんに素早く近づき、警棒をカリヤさんの腹に突き立てた。カリヤさんは何も言わないまま、後ろ向きに倒れる。
「このまま息の根を止めるところじゃが......先に仕留めるべき相手がいるのう......」
こちらを睨むサカノさんを見て、自分は金属バットを構えた。
......いや、構えてはだめだ。自分はすぐに金属バットを下ろす。
「......」
サカノさんは都合が悪そうな表情を見せた。自分はそのままサカノさんの服を睨む......!!
「ギャアッ!!」
悲鳴が洞穴の中にこだました。燃え上がったのは、タケマルさんのズボンだった......
確か、さっきも笛の音が聞こえた気がする......
ふと、そんなことを思っているうちにサカノさんがこちらに走ってきた。見えない壁を出せばいいのに、自分は出すこともできずにサカノさんに押し倒されてしまった。
洞穴の天井が見えていると思うと、横からサカノさんに蹴られて地面が見えた。被っていたパーカーのフードが下げられる。
「やはり......お前さんを見ていると......まだ人間だったころのサキコを思い出す......サキコは......とてもかわいそうな子じゃ......」
そう聞こえると、何かが乗っかったような感触があった。ナイフを取り出す音もする。
「サキコと共に旅をしていた時じゃ。この洞穴で奇妙な怪物の死体を発見した」
......?
「怪物の背中に、大きな穴が空いていたんじゃ。それにサキコが手を伸ばした時......」
この感じ......
「サキコは穴に吸い込まれ、やがて怪物と一体化してしもうた......」
頭を押さえられているので、後ろを振り向くことも出来ない。でも......
「知能は低下して......ほとんど食事と闘争本能で動くようになった......しかし、意識まで消えることはなかったんじゃ......」
何か、この状況を打開する方法は......!?
「だからこそ、余計に辛いはずじゃ......」
......!!! あった!!
自分は、目玉を額の方に向けて......前髪を睨んだ。
「ぬわっ!?」
髪は燃え上がり、サカノさん......いや、サカノの手にも燃え移った。
カランカラン
何かが転がる音が聞こえた。
「いかん!! 笛が......」
自分はすぐに見えない壁を貼り、サカノに向かって突進した。サカノは洞穴の壁に叩きつけられ、その場で倒れる。リュックサックで髪を燃やす炎を消し、すぐに地面に落ちてる金属バットを手に取り、サカノに向かって走りだす。
「わしは......!! ただ......!! サキコの......」
立ち上がろうとするサカノの言葉を無視して、自分は金属バットをサカノの背中に当てる。そのまま倒れるサカノ。次に頭に目掛けてバットを振り下ろす。
森で殺し屋に襲われた時、殺し屋は観察力がないこと......そして、喋りすぎて、動かなくなってしまうことになった。
あの時、すぐに刺していれば自分の命はなかった。それに、自分が睨むと燃え上がることを知っていれば、目隠しをすれば安全だった。
自分の言っていたことを忘れてしまうほど、サカノはあの怪物のことを思い続けていた。そして、その過去を誰にも悟られることなく、ただ一人抱えながら生きていた。
それに、オオイタの街で白衣の男から依頼を受けた理由として、自分たちの思い出作りと言っていた。これから殺す人間に対して、余程の思いがなければそんな時間を作るはずがない。
心に矛盾が生まれ、自分とサキコを重ね過ぎたのだ。
それを知っても、同情することはできない!! ただひたすら......バットを振り続けた......
「ユ......ユウ......」
タケマルさんの声が聞こえて、我に帰る。サカノの顔は見ることが出来ないほど崩れていた。
「な......なんとか火を消すことが出来たが......まだヒリヒリしているんだ......」
恐らく、矢による傷に加えて、火傷をしているのだろう。自分はすぐにタケマルさんに近より、手を近づけて足の傷と火傷の治療を行い、続いて自分の治療を行った。
「オヂイヂャン......オグジガ......アヅイヨウ......」
洞穴の奥から、人面サソリの声が聞こえてきた。
「ユウ......逃げるぞ!!」
完全に怪我が治ったタケマルさんは、床に落ちているサカノの笛を拾い、カリヤさんを背中に背負い走りだした。自分も後に続く。
タケマルさんは、サカノの死体を見た。
「死体もある......これなら......なんとか脱出できるかもしれない......!!」
やがて、光に照らされる縄ばしごが見えた。
いかがでしたか?
次回でとりあえず一区切りできそうです。
次回もお楽しみに!




