第四十二話「記憶」
こんにちは、オロボ46です。
今回は夜の森の中から始まります。
今は覚えていない、遠い記憶の中。その中に嵐が見えた。嵐の中、自分は大人の人と手を繋いでいた。
『頑張って、もう少しよ』
どこからか、女性の声が響いた。手を繋いでいる大人は自分の方を見つめた。顔は真っ暗だった。あまり覚えてなかったんだと思う。
......確かに覚えていない。だけど......あの写真に写っていた女性を思い浮かべてみると、大人の顔が少しずつ見えてきた。
どうして自分を見捨てたの?
そう伝えたくても、伝えることはできない。これは自分の記憶なのだから。
目が覚めた。幼い自分が大人と共に研究所に向かう、自分が研究所から離れる日に見た夢と同じ夢を見ていたようだ。
焚き火の明かりが目立つ暗闇の中で周りを見渡すと、白衣の男が焚き火の当番しているのが見えた。他のみんなはすでに寝ている。
「やあ......ユウくん......起きたのかい? ちょっと話があるんだけど......」
白衣の男がこちらに手招きをしたので、自分は立ち上がった。どうやら頭痛は収まっているらしい。
「......ちょっと星でも見にいかないかい?」
白衣の男の言葉を聞いても、自分は頷かなかった。
「ここじゃあ星が見えにくいだろう?」
上を見上げてみると、確かに木が邪魔で空が見辛い。しかし、真っ暗でそもそも星がないように見える。
「森を出たらきっと見える。僕と一緒に見に行こう。焚き火は少しの間だけ放置するけど、ほんの少しだけだから大丈夫さ」
結局断ることは出来ず、自分は白衣の男について行く。そのうちに森の中を抜けたので空を見上げてみたが、真っ暗で何も見えなかった。
「おかしいなあ、今日は天気が悪いのかな?」
懐中電灯を持つ白衣の男はわざとらしく首をかしげている。
「......まあいいや、ユウくん、少し教えてほしいことがあるんだ。口を動かさずに、能力で僕に伝えてね」
......? 誰かが自分の能力について教えたのだろうか?
「君のお母さんは、今どこにいる?」
自分は少し考えてから、母親は幼いころに自分から離れて行ったと伝えた。
「そうか......それは君が物心がつく前だったのかい?」
物心がついていたころかどうか曖昧なので、わからないと付け加える。
「なるほど......」
母親を知っているのかと、自分は逆に質問することにした。
「ああ......ムウナのことは前にも話したね。ムウナは君と同じ能力が使える。傷を治してしまう上に、口を動かさずに言葉を伝えることもできる......」
それ以外にムウナという人が自分の親だという根拠はあるのかと、続けて尋ねる。
「それ以外はない。ただ、まったく一緒なんだ......君の能力とムウナの能力は一緒だ......それに、君の顔はムウナにそっくり。君がムウナの息子......ゴホン......失礼......ムウナの娘だとすれば、説明がつく」
白衣の男の言うこともわかる。夢の中の大人も、自分の傷を治してくれた。それに、あの大人は"お母さん"と言っていた......
!!?
突然、目の前が真っ暗になった。
「アオヒコくんは怪物フェチと言った......確かにそうかもしれないけど、少し間違っている。僕が興味を持つのは"力"なんだ。怪物たちが持つ強力な力だよ......」
後ろで白衣の男の声が聞こえた。恐らく白衣の男は紐のようなものでこちらの目を覆うように隠している......!
自分は目の前を覆う紐を外そうともがくが、後ろにいる人物に手を拘束されているようで、動かすことが出来ない。
「初めてムウナの能力を見た時......僕は怪物以上の力を持つと確信した。そして、しばらく彼女と共に行動してから......僕は彼女にその力を研究させてほしいと言ったんだ。ところが彼女は断った。僕が必死に頼んでも答えを変えなかった。そして、僕は彼女を拘束した。すると彼女は僕の腕を燃やし、逃げて行ったんだ......」
その言葉で、この目隠しの意味がわかった。自分もそれができるからだ。
「でも......もう今度は離さない......!!」
どんなにもがいても、白衣の男は離してくれない......!
「......ギャッ!!」
突然後ろで悲鳴が聞こえたかと思うと、自分は地面に落とされた。
「てめえ......ユウをどうするつもりだあ!?」
この声は......アオヒコさんだ!!
「ぐっ......!!」
「おい!! 逃げんじゃねえ!!」
草を踏みながら走っていく音とアオヒコさんの叫び声が同時に聞こえた。
アオヒコさんに目隠しを取ってもらうと、懐中電灯の光に照らされる血痕が見えた。
「さっき俺たちが目を覚めたら二人がいないから、四人で手分けして探しに来たんだが......ちくしょう......!! 今度あったら首を飛ばしてやる......!!」
そう言うアオヒコさんの右手には血のついた日本刀が、左手には包帯が握られていた。
「しかし......こいつで目隠しして、どうしようとしていたんだ......?」
自分は先ほどまでの出来事を説明した。
「やっぱり......あのムウナってやつはユウのお袋だったのか?」
わからないとしか答えることが出来ない。
「でもよお、やっぱりあいつの自業自得だぜ......そんなやり方だから逃げたんだろうによお......」
......
「最後の思い出作りのはずが......なんかモヤモヤしたまま終わっちまったな......」
その言葉には、後悔の気持ちが表れているような気がした。
「おーい!! アオヒコー!? そっちにいたかー!?」
森の中から、タケマルさんの声が聞こえてきた。
翌日、自分たちは一旦オオイタの街に戻り、それ以降の旅に備えて準備をした。
研究所の助手の知り合いがいるという、カゴシマの街への旅の終着駅は......
もうすぐなのだから。
いかがでしたか?
いよいよ次はカゴシマの街ですね......!
次回もお楽しみに!




