第三十五話「変わらない人」
こんにちは、オロボ46です。
今回で第三十五話です。今まで自分が出した小説の「人格事件」の一作目を越えました!(人格事件の時は長すぎると言ったことがある記憶がありますが......)
今回はシコク地方上陸からです。
それでは、どうぞ。
「ぜえ......ぜえ......やっとついた......ぜ......」
小型ボートは、シコク地方の海岸にたどり着いた。
「おっさんの言っている意味がわかったぜ......おいおっさん?」
アオヒコさんはハンドルを握ったまま倒れているタケマルさんの肩を揺さぶった。しかし、タケマルさんは目を閉じたまま起きようとしない。
「あーだめだ、完全に気を失ってやがる」
「無理もないです。もともと気が弱い人ですから」
そう言いながらカリヤさんはタケマルさんに肩を貸した。
「すみませんでしたのう......無理してしまって......」
「いいんです。サカノさん、言っていましたよね? 話す必要はない......と......それはいつかその意味がわかるという意味ですね?」
サカノさんはこっくりと頷いた。
「それなら先に進むしかないです。確かその近くに"エヒメの街"があるので、そこに向かいましょう」
小型ボートを放置して、自分たちは近くにあるという"エヒメの街"を目指して平原を歩いていた。タケマルさんはまだ起きてなかったため、カリヤさんはタケマルさんに肩を貸したまま歩いている。
アオヒコさんが何か気になるような顔をしていていたので、それを聞いてみた。
「ああ、聞いてみてくれよ、ユウ。師匠......おっさんのことをよく知っているみたいだけどよお、付き合いはどうなってんだろうな......」
「......本人の目の前でそんなこと言いますか? あとそれから、いい加減その呼び方やめてください」
横でカリヤさんが鋭い目付きでアオヒコさんを睨んだ。
「それならよお、おっさんとどういう関係か、教えてくれるのかよ?」
アオヒコさんは怯むどころか、余計聞きたくなったようだ。
「はあ......彼に付き合うといつも厄介な出来事が起こるんですよ......」
「......あれ?」
「......どうしたんですか?」
「いや、以外と素直に答えてくれるなんて......」
「言わないほうがいいですか?」
「いやいや、そういう意味じゃねえよ。ただ、なんと言うかな......」
隣のサカノさんが「ふふっ」と笑った。そして、二人には聞こえないようにこちらの耳に小声でささやいた。
「どうやらアオヒコくんは、カリヤさんが素直に答えるとは思っていなかったようで、戸惑っている様子じゃのう......」
カリヤさんは気を失っているタケマルさんを少し見て、口を開いた。
「昔からそうでした......いつも彼は自分の身を大事にして、危ない時には依頼を放棄することもありました。その癖に、一度恩を受けたら体を張ってでも恩を返そうとするんです。本当に......命を大切にしているのか......粗末にしているのか......」
改めて考えると、タケマルさんが旅に同行した理由は、自分がタケマルさんを二度助けたからだと思う。初めは水をあげたこと、二度目は依頼で、怪物に囲まれた廃墟から助けたこと......
確かその後、タケマルさんは恩を必ず返すと言っていたような気がする。その内容を思いだそうとしたが、あの時は早口だったのでほぼ覚えていなかった。
しばらく歩き続けると、街が見えてきた。
「ふぅ......ようやく一息つけるぜ......今日は厄介続きだったからなあ」
アオヒコさんはエヒメの街の公園で座り込んで、スマホをつついていた。
「......ぅぅ......ん? ここは......?」
ベンチで寝かせていたタケマルさんの意識が戻ってきたようだ。
「タケマルさん、気を失っていましたよ」
自分の食料を買いに行っていたカリヤさんが素っ気ないような表情で戻ってきていた。その手にはなぜかフライドポテトがある。
「すみませんでしたのう......無茶なことを言って......」
サカノさんは申し訳なさそうに言った。
「いえ、大丈夫です......次からは気を失わないようにしますよ......ハハハ......」
「おい!! みんなこれ見てくれよ!」
アオヒコさんがスマホを持ってたちあがり、自分たちにスマホの画面を見せた。
そのスマホの画面には、あるニュースが写っていた。
今日、ヒロシマの街で少年が大人の男性に刺されるという事件が起きた。その少年は白いパーカーを着ており、フードを被っていたという。通行人がすぐに発見して通報したため、少年は一命をとりとめた。
「なあ......この白いパーカーってよお......」
「......」「......」「......」
四人の視線は、白いパーカーを着ているこちらに集まった。
「サカノさん......私が......私が間違っていました......」
突然、タケマルさんが涙を流し始めた。
「あの犯人は恐らく、ユウを狙っていた殺し屋でしょう! 白いパーカーを着たあの少年をユウと勘違いしたと思います! もしヒロシマの街に戻っていたら、殺し屋に襲われていたことでしょう!! あなたはそのことを考えて、あえて急がせたんですね! さすがサカノさん!!」
「いや......その......あのですな......」
隣のアオヒコさんが「ははは」と笑った。そして、二人には聞こえないようにこちらの耳に小声でささやいた。
「じいさん、おっさんの熱意に押されているぜ」
「......本当に......昔から変わっていない......」
カリヤさんは頬を上げた。
いかがでしたか?
次回もお楽しみに!




