第二十三話「草を踏む足」
こんにちは、エイプリルフールネタをやりたかったけど思い付かなかったオロボ46です。
今回はサソリの怪物から逃げます。
それでは、どうぞ。
「おい、まだ追いかけてくるのかよ!!」
自分たちは夜の平原を走り続けている。男性を背負いながら走るアオヒコさんは後ろを振り向いた。サソリの怪物は少しずつ距離を縮めてくる。
「もしかしたら......あの怪物も......自分の子供を失って......興奮して......いるのじゃ......ろうか......」
自分が肩を貸しているサカノさんは、なかなか追跡を止めないサソリの怪物に向かって呟いていた。その声も、どこか苦しそうだった。
サソリの怪物が切った大岩の破片は、男性は足を、サカノさんは腹に命中した。男性はサソリの怪物がトラウマになっていたのか気を失っているが、どうやら骨折は免れたようだ。しかし、サカノさんの腹の内臓は無事かどうかはまだわかっていない。迅速に自分の力で治さなければと、少し頭痛のする頭で考えていた。
この頭痛さえ無ければ、ここまで走らなくてもいいはずなのに。あの怪物は一度は燃やした経験がある。そのまま治療も試みたから、一回なら平気のはずだった。
しかし、昼間に気を失うほどの力を使って治療した時の疲労と、先ほど怪物の子供を燃やした時の疲労が重なり、今は少しの頭痛に襲われている。
そのせいなのか、時々後ろを向いて睨み付けてもうまく力を使うことが出来ない。見えない壁を出せるぐらいなら使えるのに......
もっと小さいものなら、なんとか燃やせたのかもしれない。いや、もしもここで立ち止まって振り向いたらギリギリ燃えるのではないだろうか? それを試して見ようと思っても、サカノさんに肩を貸したままではリスクが有りすぎて、試すことは出来なかった。
「!! 崖だぁ!!!」
目の前を懐中電灯片手に一人で先行していたサカノさんが叫ぶ。自分はすぐに足を止めた。
「......ッ!!!」
ガラガラ......
崖の先端が少し崩れ落ちて、それが小石として崖を滑り落ちていく音を聞いた。
「な......なんでこんなところに崖があるんだよ......」
アオヒコさんたちもなんとか止まれたようだった。
後ろを振り返り、懐中電灯を怪物に向ける。このまま突進すると崖に落ちてしまうと判断したのか、サソリの怪物はジリジリと近寄ってきている。
「こんな真夜中なのによ、目のいいヤツだなあ! おい!」
アオヒコさんはこちらをしっかりと見る怪物の目を見て叫んだ。
「あいつは夕方から朝方にかけて行動する夜行性だ!! だから光がなくても見ることができる!」
それにタケマルさんは答えた。その声からは、半分絶望しているように感じた。
「おっさん!! あんただったらここからどう逃げるんだよ!?」
「仲間を囮にすれば一割ぐらいは助かる確率はある!! それでもまだ絶望的だ!!」
「それなら選択肢はひとつだけだよな! ユウ!!」
自分は頷くと、肩を貸していたサカノさんを降ろして、木製バットを手にした。
「お、おい! 止めろ!! そいつは熟練の旅人が複数人でも苦戦する相手だぞ!!」
「それじゃあ誰かを犠牲にしてでも逃げるつもりかよ!!」
「......そ......それは......」
タケマルさんが言い出せない間に、サソリの怪物は右手のハサミで掴もうとした。
自分はすぐに見えない壁を出してそれを防ぐ。その隙にアオヒコさんはハサミの内側に潜り込んだ。
「もらったあああ!!」
アオヒコさんの持つ木製バットが怪物の頭部に命中した。バットの先端が刺さっている釘が怪物の頭部に深く刺さる。
ギロッ
「!!?」
サソリの怪物の瞳は、何事もなかったかのようにアオヒコさんを見た。
「まさか......まったく......聞いていない......?」
「そいつは並の武器では歯が立たない!! 早くこっちに来るんだ!!」
タケマルさんの言葉を聞いて、アオヒコさんはバットを引き抜こうとした。しかし、釘が怪物の頭部に食い込んでいて、なかなか離れない。
その時、サソリの怪物の尻尾が動き始めたのが見えた。
ピシッ!!
タケマルさんは持っているホースでアオヒコさんの手の甲を叩いた。
その瞬間に怪物の尻尾は素早い動きでアオヒコさんをめがけて突く。しかし、アオヒコさんがバットから手を離せたお陰でギリギリかわせれた。アオヒコさんはそのままうまくタケマルさんのところで戻ってこれた。
「なんだよあいつ!! 無茶苦茶硬てぇ!!」
「あの怪物の皮膚の硬さは岩石並だ!! 熱には弱いが、ライター程度では燃え移らないぞ! せめて火炎放射器とかがあれば......」
熱......
自分は見えない壁を外し、サソリの怪物を睨み付けた。先ほどは走っていて燃えなかったが、立ち止まっている今なら......
......出来ない?
サソリの怪物を睨んでも、まったく燃え上がる気配はなかった。それどころか、だんだん自分の頭の頭痛も大きくなり初めている。
「ユウ!! 危ない!!」
アオヒコさんの声がなかったら、尻尾の攻撃に対応できなかっただろう。自分はすぐに横に避けることが出来た。
「も......もう駄目だ......さっきよりも崖への距離が縮まっている......」
タケマルさんは後ろの崖に懐中電灯の明かりを照らした。
その明かりに照らされていた物を見て、自分はサカノさんの言葉を思い出した。
サソリの怪物はまとめて切ろうとハサミを構えた時、怪物の足元が燃え出した。
「な......なんだ......!!? 急に地面の草が燃えたぜ!? 自然発火!?」
「いや、この燃えかた......見覚えがある!! ユウ!! 君だな!!」
タケマルさんの声に、自分は頷いて答えた。
"科学的に言えば"有機物"だからじゃな。自分で成長して、子孫を残し、やがて枯れていく......人間も有機物の一つじゃな"
焚き火のサカノさんの言葉を思い出した自分は、怪物を燃やす力は怪物だけではないかも知れないと考えた。草なら少しの力だけでも燃える上に、周りの草に次々と燃え移っていくから、サソリの怪物位の大きさでも充分に足元を燃やせる。
燃え広がる炎で行き道を塞がれる前に、自分はサカノさんに肩を貸し、アオヒコさんは男性を背負い、タケマルさんは懐中電灯を持って怪物の横を通り抜けた。怪物は足元に広がる炎に触れないように必死に足を上げていた。
「ぜえ......ぜえ......やっと......逃げ切れたか......」
アオヒコさんは息を切らしながら呟いた。自分はすぐにサカノさんを座らせる。サカノさんは口も聞けなくなっていたが、まだ意識はあるようだ。
「ユウ......昼間みたいに気を失うなよ......」
アオヒコさんの忠告を聞きながら、自分はサカノさんの治療を始めた。
「......!!!」
タケマルさんが来た道に懐中電灯を向けた。そこには、サソリの怪物が足を引きずりながら近づいてくる姿があった。
「......もはや瀕死の状態のようだ。あのまま崖に落ちていた方がよかったと思ったが、猛毒を手にいれることを考えればこっちのほうが好都合だったかもしれない」
パニックになって転倒したのか、怪物の体の至るところに火傷の跡があった。
タケマルさんは怪物の口の中にある舌にナイフを突き立てた後、尻尾を切り落とし始めた。
いかがでしたか?
「男性」が空気となっておりますが、ちゃんと生きています。
次回もお楽しみに!




