第十四話「雨の中」
こんにちは、オロボ46です。
今回は雨の中の森から始まります。
それでは、どうぞ。
ザアアアア
雨は次第に強くなり、懐中電灯に照らされた地面を力強く打ち続ける音が辺りに響く。着ている雨ガッパにも雨の当たる触感が感じられる。
つい、空の様子が見たくて上を向いてしまう。すぐに雨粒が顔にかかるが、顔にかかった雨粒の触感はとても新鮮だった。
「ユウ、そんなに雨が珍しいのかよ?」
アオヒコさんが不思議そうに訪ねたので、彼に向かって頷いた。
「しかし......前から思っていたんだけどさ、お前のこと本当によくわからないんだよなあ......カップ麺とか雨とかいろんな物を珍しそうな目で見るのに、怪物は冷静に倒すしさ......第一、まだ一度も声をださないもんなあ......」
......
「ユウちゃんは......おっと......」
サカノさんは言いかけた言葉を飲み込んだ。
「え? じいさん、知っているのか?」
「あ......えっと......その......ユウちゃんもいろいろあったんじゃろう......な?」
突然振られて、自分は少し慌てぎみに頷いた。
「まあ、いいんだけどよ。もうそろそろ野宿の準備をした方がいいんじゃねえの?」
アオヒコさんは話題を変えた。
「いや......この近くで野宿するのはちとまずいのう......」
「なんだよ? 落ちているもので即席の屋根を作ればいいじゃねえか」
「それはええんじゃが......先ほど、怪物に遭遇したじゃろ?」
「ああ、でもユウとじいさんが倒しただろ?」
「いや、あの三匹だけとはかぎらないぞい」
自分は、廃墟で襲いかかってきたネズミの怪物の大群を思い出した。
「は!? まだいるのかよ!?」
「あの怪物は親玉を中心にして群れで行動する習性があるのじゃ。まだ親玉の姿が見えないのが気になるのう......とにかく、急いで森を抜けてしまおうか......」
目の前に現れた物を見て自分は歩みを止めた。
「......こんなところにログハウス?」
そこにあったのは、木製でできた家と思われる建物だった。
「何か不穏な空気がするのう......」
その家の窓からは、明かりが漏れていた......
「よし!! 入ってみようぜ!!」
「ああ、そうじゃな......いやいやダメじゃ!!」
アオヒコさんがさっそく入ろうとするのをサカノさんは引き留めた。
「今度はどうしたんだよ」
「あの家は危険じゃ」
「......まさか、あの怪物の住処と言いたいのか? そんなことはないだろ。あの家は明かりがついているんだぜ?」
「......」
サカノさんはそれ以上言葉が出てこなかった。
その時、明かりのついた窓に人影が写った。その人影が窓から離れたと思うと、入り口のドアが空いた......
「......もしかして、旅人ですか?」
自分たちは、ログハウスと呼ばれる家の中にいた男の人に招かれ、中へ入った。街の銭湯の床にも木材が使われていたが、そことは違う素材を使っているのか、とても独特な踏み心地がした。
「いやあ、同じ同業者と出会うなんて......それにしても、ひどい雨でしたなあ......」
三人でソファーと呼ばれる腰掛けに座ると、男の人は向かいのソファーに座って話しかけてきた。
「同業者......? すると、あなたも旅人ですかのう?」
サカノさんが疑問に思ったと思われることを質問した。
「はい、そうですよ」
「それじゃあ、この家は......」
「雨宿りに来たときは、誰もいなかったんですよ。でも、どの部屋にも怪物もいませんでしたし、どうやら大丈夫ですよ。よかったら一緒に泊まっていきませんか?」
「うーむ......」
サカノさんは、まだ納得できない様子だった。
「それじゃあお言葉に甘えて、泊まらさせていただきまーす!!」
アオヒコさんは遠慮なく答えた。
「それなら、夕食のお手伝いをお願いできますか? 少し自信がないんですよ......」
「いいっすよ!! 俺、カップ麺作るの得意っすから!!」
カップ麺を作るの? という疑問を抱く隙もなく、アオヒコさんは男の人と共に厨房と思われる部屋へと向かった。
「うーむ......」
自分はサカノさんがなぜ唸っているのかを尋ねた。
「ああ......この年になると、時々昔のことを忘れることがあるんじゃよ......何か......忘れている気がするのじゃよ......」
二人を待っていると、自分の身にある欲求が沸き上がってきたのが感じた。サカノさんにすぐに伝える。
「ん? トイレの場所かのう? あの旅人に聞いてみるかのう」
そう言ってサカノさんは立ち上がろうとした。
「......」
サカノさんは立ち上がれなかった。自分も同じようにすると、その理由がわかった。
肉眼すら見ることの出来ない透明な糸で、縛られていたからだ。
その糸は、床じゅうにも広がっているだろう。床の独特な踏み心地は木材の質のせいではなく、糸が広がっていたのだから。
やがて厨房から出てきたのは......赤い血液と......男の人の頭を口にくわえた、巨大な蜘蛛の怪物だった。
いかがでしたか?
クモの怪物の口にある首は、厨房に向かった二人のどちらの首なのでしょうか......?
次回もお楽しみに!