第十二話「学生とカップ麺」
突然ですが、そろそろ別の作品へと取りかかろうかと考えています。
今のところ考えているのは、人格事件シリーズの最新作です。
といっても、まだ考えている段階なので、何事もなかったかのようにこの作品の次話がでることもありますが。
(第十一話あとかきより)
こんにちは、オロボ46です。
まさか早くも何事もなかったかのように次話投稿するなんてあの時は思いもしませんでした。
別作品のアイデアが出なかったのもありますが、評価してくださった方のコメントを見て急にモチベーションが上がっちゃいました。
おさがわせしてしまい、すみませんでした。
さて、今回はコンビニから始まります。
それでは、どうぞ。
グウィィィィ
その男の人の腹の音が、今度はコンビニの中に響き渡った。
「くそ......腹が減ってしょうがないぜ......」
男の人は店内の品物を見渡していた。その後ろ姿を見ながら自分とサカノさんもコンビニの店内へと入っていく。
「それじゃあ何か好きな物を買ってくるがいい......えっと......お主の名前は?」
「......アオヒコ」
そう言っていたアオヒコさんは何かを見つけたように奥へと進んで行った。
「おほー、これはうまそうだなあ」
後を付いていくと、アオヒコさんはコンビニの商品を手に屈んでいた。
「それはカップ麺かのう......しかし、食べ過ぎると栄養が偏るぞい」
「いいんだよ。俺はこれが主食なんだからよ」
そう言いながらアオヒコさんはカップ麺と呼ばれる物を手に他の商品を探し始めた。自分はサカノさんにカップ麺はどういうものかを聞いてみた。
「どういうものか? ふうむ......言葉に表すと意外と難しいのう......ユウちゃん、ラーメンは知っているかのう?」
小説で言葉だけは見たことあるが、実際には見たことないと答えた。
「そうか......なら、一回だけ試して見るかのう?」
自分はアオヒコさんのように、購入したカップ麺に店の人にお湯を入れてもらい、それを溢さないように公園まで持っていった。
「それじゃあわしはちょっと用事があるから、先に食べておいてくれんかのう」
そう言いながらサカノさんは、トンネルで拾った四角い機械を持って去っていった。
自分はカップ麺の蓋を見続けていた。なぜ半開きしてお湯を入れたのに、また蓋をする必要があるんだろう......
「お前、そんなにカップ麺が珍しいか?」
その様子を見ていたアオヒコさんが不思議そうに聞いてきた。自分はサカノさんの忠告通りに力は使わず、頷いて答えた。
「まさかとは思うが、カップ麺を今まで見たことがないとか? なーんてな!」
再び頷く。
「......お前本当に見たこともないの?」
頷く。
「そもそもカップ麺どころかラーメンすら知らない?」
頷く。
「マジかよ......」
アオヒコさんは面食らったように項垂れた。
「この世で最高に上手いものを知らないとは......人生の八割損しているぜ......なあ、お前の名前はなんて言うんだ?」
頷くことだけじゃあ名前は伝わらない。自分は身振りだけでなんとか声が出ないことを伝え、紙とペンを用意してもらった。
「なんかありふれた名前だが......よし、ユウ! 先輩であるこのアオヒコ様が、カップ麺の上手い食い方を教えてやろう!!」
どういう意味で先輩なのかは解らなかったが、自分はアオヒコさんにカップ麺の食べ方を教わることにした。
ズルズルッ!!
「おお!? 結構な食べっぷりだなあ! そのように、ラーメンは音を立てて食った方がスープとの絡みを味わえるんだぜ!!」
「ほお......結構仲が良くなったようじゃのう......」
アオヒコさんと共にカップ麺を食べていると、サカノさんが帰って来た。
「お、じいさんか......」
「前に拾ったコイツをな、直してもらっていたのじゃよ」
そう言いながらサカノさんは四角い機械を取り出した。
「ラジオじゃん、それがどうしたんだ?」
「まあまあ、ちょっとユウちゃんに見せたくてのう」
サカノさんはラジオと呼ばれる機械のスイッチを押した。
『......明日、ナガノの街付近で大雨が予測されており......』
ラジオについていたスピーカーから声が流れてきた。
「おお、ちょうど天気予報の時間じゃのう......って、明日は雨かのう......」
「雨ガッパを来ていれば大丈夫じゃん」
「まあそれはいいんじゃが......ちょっと不都合なことがあってのう......」
サカノさんは一つ咳払いをした後、こちらを見た。
「とにかくユウちゃん、これがラジオというやつじゃ。かなり昔の技術じゃが、今のご時世でも十分活躍しているのじゃよ」
その時、アオヒコさんは「プッ!」と吹き出してこちらを見た。
「それにしても、ユウは本当に世間知らずのお坊ちゃんみだいだな」
......?
「アオヒコくん、それは少し言い過ぎなんじゃないかのう? それに......」
「いや、すまねえ。でも安心しな。このアオヒコさまが付き添って一から教えてやるからよ」
「ユウちゃんにいろいろ教えるのは構わ......ハァッ!?」
サカノさんはあまりの驚きに目を飛び出しそうになるほど見開いた。
「あんたたちがどこに向かっているのかは知らねえが、俺はあんたたちについていくことにしたぜ」
「ちょっと待ってくれ!? お主の格好はどうみたって学生じゃろ!!?」
「ちげえよ。俺はこう見えてあんたと同業者なんだよ」
「た......旅人だったのかのう......しかし、どうしてわしらと......」
サカノさんが言いかけたのを、アオヒコさんは指差して止めた。
「じいさんの為じゃねえ、ユウのためだ! 俺はこいつの知らないことをたくさん教えてやりてえ! それだけだ!!」
「......」
サカノさんは圧倒されて、何も言い換えない状態だった。
いかがでしたか?
次回もお楽しみに!