第十一話「カラスの追跡」
こんにちは、オロボ46です。
今回は"ナガノの街"から始まります。
それでは、どうぞ。
野宿した翌日も自分はサカノさんと共に歩き続け、ようやく街にたどり着いた。
「ふう、ようやく"ナガノの街"についたのう」
公園のベンチにサカノさんはため息をつきながら腰かけた。サカノさんのズボンの右膝にはナイフが刺さった跡である穴があった。しかし、サカノさんの肌には傷は見えない。
「ユウちゃんがいなかったらくっきりと傷痕が残っていたところじゃったのう......」
自分とサカノさんの傷は、自分の傷を癒す力で塞ぐことが出来た。今は痛みもほとんど感じない。でも......
ひそひそ......
ひそひそ......
「やはりこれじゃあ目立っても仕方ないのう......」
サカノさんは自身の服についた真っ赤な血痕を見て呟いていた。
自分もパーカーについた血痕を見る。そこには死臭が少し残っていた。
「よし、ユウちゃん、服のお洗濯とするかのう」
お洗濯......?
「この近くに"コインランドリー"という場所がある。そこで服を洗濯することができるんじゃ。ちょうどいい時間じゃし、銭湯でひとっ風呂浴びたあとにそこに行くことにしようかのう」
そう言いながらサカノさんは立ち上がり、歩き出した。自分もその後に続いていく。
自分は銭湯で湯に浸かって一息つくと、血のついていない方の着替えを着て、外に出てサカノさんを待った。
「ふう......いい湯じゃったのう」
銭湯から出たサカノさんは財布を取りだそうとしていた。
「ここの近くに自販機を見かけたんじゃ。風呂上がりの一杯としようかのう」
そう言いながらサカノさんは自販機というところに向かった。
サカノさんは巨大な箱の前に立っていた。自分もその箱の前に立ってみると、缶やペットボトルのような物が見えた。それぞれ下には、ボタンがあった。
「これが自動販売機......通称自販機じゃ。一応、自販機にもいろんな種類があるが、特に馴染みのあるのが飲み物を売っている自販機じゃな。ユウちゃん、何か飲んでみたい飲み物はあるかのう? まあ、自腹じゃがな」
自分は自販機の中から赤い缶が気になったので、指してみた。
「そうか、それじゃあまずは小銭を入れて、次にそこの四角い所に旅免許をかざすんじゃ。そして購入したい飲み物の下にあるボタンを押すんじゃ」
サカノさんに言われた通りに小銭と呼ばれるコインの通貨を入れて、旅免許を四角い所にかざし、赤い缶のすぐ下にあるボタンを押した。
ガタン
自販機から何かが落ちた音が聞こえた。
「下側に取りだし口があるじゃろう。取ってみなさい」
自分は取りだし口の中を覗いた。そこには、赤い缶が落ちていた。恐る恐る手を伸ばし、その缶を取ってみた。
その缶はとてもひんやりしていた。
「さて、わしはコーヒーを飲むとするかのう」
そう言いながら、サカノさんは小銭を取り出した。
ドン!!
自分は走っている男の人とぶつかってしまった。
「ぬおっと!?」
その男の人はサカノさんにもぶつかった。それがきっかけでサカノさんの手から小銭が落ちて......
チャリーン
自販機の下の隙間に向かって転がって転がっていった。
「あああああ!! わしの小銭が!!」
その時、自分はその小銭よりも大切な物が失われていることに気づいた。すぐにそれをサカノさんに伝える。
「......!! 財布が......ないじゃと!?」
自分とサカノさんの財布は、それぞれの手元にはなかった。今、それを持っていると思われる男の人は向こうで逃げるように走っていた。
自分たちは男の人を追いかけて街中を走っていた。人混みをかき分け、その男の人の背中を追い続ける。しかし、なかなか距離は縮まらなかった。
「ユウちゃん、挟み撃ちといこう。わしは別行動を取る!」
そう言いながらサカノさんは笛を取り出して、吹いた。すると、空からカラスの群れが現れた。一瞬怪物かと思ったが、その姿は普通のカラスだった。
サカノさんはこちらとは別の道へ向かった。自分はそのまま男の人を追いかける。
男の人は路地裏へと逃げ込んでいった。自分も後を追うが、少しずつ距離が離れているような気がする。だんだん自分の息も荒くなってきた。
男の人はこちらを見てニヤリとした。そして曲がり角を曲がると......
「ふぎゃあ!?」
変な悲鳴が聞こえてきた。
自分が曲がり角を曲がると、男の人とサカノさんがいた。そのそばにはごみ袋があり、それをカラスたちが啄んでいた。
「わしの笛でカラスを操り、先頭にはお前さんを追いかけさせ、一番後ろはわしの頭を常に飛ぶように命令させた。その間のカラスたちには一列に並ばせておくと、だいたいの居場所や距離はわかる......という作戦じゃよ」
サカノさんは男の人に説明をしていた。その男の人は、黒色に金色のボタンが着いた服を着ていた。
「......ちくしょう!!」
「さて、お前さんは学生のようじゃが......どうしてわしらの財布を盗んだのか......その訳を教えてくれんかのう?」
「だ、誰が......ジジイなんかに......」
グウィィィィ
「......」
「......い、今のは......腹の音......なのか?」
男の人はコクリと頷いた。
いかがでしたか?
突然ですが、そろそろ別の作品へと取りかかろうかと考えています。
今のところ考えているのは、人格事件シリーズの最新作です。
といっても、まだ考えている段階なので、何事もなかったかのようにこの作品の次話がでることもありますが。
忘れたころになるかもしれませんが、次回もお楽しみに!