0 裏側の裏側
やっとtwitterの妄想から形にできそうですが気ままにゆっくり更新していきますのでどうぞよろしくお願いします。
虚無。その言葉を体現したかのような闇。そこには何も存在などしていなかった。音が届く。その瞬間ただの暗闇が、一面何もない白に染め上げられた。白の世界に、物体が形作られていく。一つは椅子。木でできた椅子は二つ彼の前に置かれていた。彼は逡巡してから、椅子に座った。木製のテーブルができる。そこにはティーカップも存在していた。カップには何も注がれてはいない。
「おや、まだ君自身は形作られてないのね」
揶揄したような声音だった。軽い笑い声をあげている。小麦色の髪色が彼の視界に入って存在を認識する。紅玉に似た目がこちらを見てる。もう一つあった椅子に腰かけて何かを飲んでいる。女性の発した言葉をつぶやいてから、一つの部屋が形作られた。木で作られた家のように内装がされており、女性は感嘆の息を吐いた。先ほどとは違いもう二つ椅子が作られているのを見て女性に問う。
「あの子たちは?」
「”世界”へ。もうじき帰ってくると思うわ。それよりも私は貴方の”体”が朽ちて、貴方の存在がこの場に固定されていないことに驚いてしまったわ」
「それもまた一興であろう」
慈しむような眼が彼を射抜く。--彼の存在は無だった。彼女の目には何も映っていない。どこからか聞こえる声に彼女は笑い声をあげる。まるでそこに彼が存在しているのかと疑ってしまうほどに。女性は楽しげに笑い、ティーカップに口つける。
「ねえ、君はどう思う?君とあの子たちはほとんど同じ境遇なんだけどね」
女性が見る。彼女の視線の先には赤い髪の少女が立っていた。黒色の和装が少女の白い肌をより目立たせてる。紫水晶に似た目が開かれる。女性は満足そうに目を細めた。彼が女性をとがめるような声を出したが、それは何も意味をなさなかった。返事を催促するように口を開いた。
「あの子たちは死ねないわ。たとえ何があろうとも。ああ、でも君はどちらかというと私と同じね」
「…わたしは、彼が無事なら、なんでもいいです」
小さく、言葉がつむがれた。その顔には何も表情など写っていなかった。そしてその小さな声で女性の名を呼ぶ。
「あまり、彼らにイタズラをしない方がいいですよ」
「あら、君も説教なの? もう、君も貴方も頭が固いんだから」
「お前が緩いんだろう」
クスクスと女性が笑う。楽しそうに、楽しそうに。
コツ、とテーブルをたたく。手のひらと同じ大きさの鏡が形造られる。そこに写っているのは女性ではなく、ガラスでつくられた薔薇――が置いてある一室だった。素敵ね。女性が呟いて、少女が無言でうなずく。
「まあ、こちらのシナリオ通りだから何も問題ない」
彼がそう言った。