二話 あれは全部百合なのか?
バレンタインデー当日。
よく漫画で見かける、「よっし、頑張ってチョコ渡すぞー!」と意気込んでいる女子を見かけない僕(いや、表に出さないだけで、裏では壮絶なバトルが行われているのかもしれない。)は、ほんわりと甘い香りに包まれた教室にいた。普段制服の女子が私服だったり、机からぶら下がっている袋が妙に可愛かったりと、今日がその日だということを強調させる。
––––––––––昼休み
教室の中央にはダンス部やサッカー部などの男子が集まり、その周辺には同他構わず、様々なクラスの女子が群がっている。しかし、よく見て欲しい。そこにいる男子は本当チョコを貰うことに喜んでいるのだろうか。体を鍛え、高度な技術を要する部活動者達に太るようなものを送って、本当に嬉しいもだろうか。多分違うだろう。おそらくその集いの1/3は自分で全部食するわけではないだろう。その上、気持ちは嬉しいが、いやいや食べてるに違いない。それならどうだろうか、教室の隅で母さんの手づくり弁当を毎日の如く貪っている僕らに与えるのは。そのほうが、もし作ってきたチョコが不味かったとしても、好きな張本人にバレることはない。大切なのは気持ちなのだから。
それより気になるのは、女子同士でチョコ交換会をしている奴らだ。なんだ?お互いのチョコを食べあって品評会でもしてるのか。それとも、脆いことで専ら有名な女子同士の友情を確認しているのか。それこそ、後々チョコを渡した渡してない。美味しかったか聞いたか聞いてないと、縺れるのが目に見えている。
「凪子のチョコ美味そうだなぁ」
と、隣で呟いているのは、同じく非リアの友達である。凪子というのは、クラスで1位2位を争う美人さんである。チョコを貰いたいが貰えないランキング栄えある第1位である。(自分調べ)毎年女子にしか配っていない。実は近所で、計7年間一緒の学校に通っているが、何にもない。漫画や小説なら、「この前はありがとっ」とか「義理だからねっ」とかあってもおかしくないが、こちらはモブのモブ。あちらは認識しているかも怪しい。なぜなのか。もしかすると好きな女子でもいるのかもしれない。それなら納得がいく。
バレンタインデー終わりましたね。すいません。