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第三話

 冒険者登録を終えて、装備を整えるため武器屋へと向かう新魔王の足取りは軽い。

「新魔王様、先ほどからご機嫌がよろしいようですね」

 ダーキルの問いに、新魔王は「うむ」と頷く。

「チート能力をオフにした素の俺でも、冒険者に相応しい能力が認められたということだからな。しかもレアな魔物つかいときたものだ」

「まさに、鬼畜凌辱を極められんとする新魔王様に相応しい職業だと思います。ルトさんもそう思いますよね?」

 ダーキルはルトに話を振りながら、ツンツンと脇腹をつついた。

「はいっ! 魔物つかいは心のきれいな……じゃなかった、魔物たちを統治する恐ろしい素養を持った人間にのみ認められると聞いています! 男らしい師匠にぴったりの職業です!」

 二人にお世辞を言われて、新魔王は満足そうに笑みを浮かべる。

「それだけではない。チート能力を使わずに、魔物つかいとして名声を轟かせることができれば、ゼッカもあの時の言葉を取り消すはずだからな」

「……新魔王様、やはり気にしていらしたのですね」

 なんのことですかと不思議がるルトに、ダーキルが説明をする。ゼッカを魔王城に連れてきた初日、新魔王がメンタルをボコボコにされて返り討ちにあった時のことだ。

「ゼッカさんはこうおっしゃいました。『チートだか何だか知らないけど、努力もせずに手に入れた力で、よくも偉そうに出来るわね。下水モンスターにも劣るプライドの低さだわ。あなたに羞恥心の欠片でもあるのなら、顔面をやすりで磨いて永遠に赤面していなさい』、と」

 それを聞いたルトが、うわあと小さく声を上げる。

「ゼッカさん、そんなに怖いことを言うんですか? いつも優しくて礼儀正しい方なのに」

「ルト、お前はゼッカの本性を知らないからそう言えるのだ。あいつは俺以上の魔王、超魔王なんだぞ」

 ダーキルもこくこくと頷く。

「しかし新魔王様のおっしゃられるように、魔物つかいとして名を上げられればゼッカさんも認めざるを得ず、攻撃力が大幅に下がることと思われます。そして新魔王様が、再び魔界の頂点に君臨されることでしょう。顔面をヤスリで磨く必要はありません」

「うむ、その通りだ。冒険などと言う茶番はすぐに切り上げるつもりだったが、ゼッカ攻略の糸口になるのであれば止むを得ん」


 まもなくして、王国で最も質の良い武具が集まるというお店に到着した。店内にはぎっしりと武器や防具が並べられている。

 ルトの装備はすでに整っていて、ダーキルも必要がないというので、探すのは新魔王の武器だけだった。防御面ではチート能力があるので、装備を整える必要がない。

「どれも師匠にお似合いですよ! やっぱり剣がカッコイイですかね? 斧も男らしくていいかもです!」

 ルトが張り切りながら、見繕った武器をテーブルに並べていく。新魔王は試しに、ルトが持ってきた剣を持ってみた。

「お、重っ!? こんなの振れるわけないだろ!」

「そうですか? では、こっちの細い剣はどうでしょう 見た目の割に頑丈で、女性冒険者にも人気です」

「たしかに軽いけど、こんなの落としたら足に穴が空くぞ。もっと安全そうな武器はないのか?」

「安全そうな武器と言われましても、武器は攻撃するものなので……」

 ルトは困ったように首を傾げる。すると、じーっと戸棚を見ていたダーキルが、革製のムチを手に取って新魔王に差し出した。

「これが一番エッチだと思います。服を破いたり手足を縛ったりと自由自在です」

「エッチかどうかで武器を選ぶな! ……と言いたいところだが、俺もムチで責めるシチュエーションは嫌いではない」

 革製のムチは、手にとってみると意外などにしっくりと馴染んだ。縄跳びの紐よりは重いが、剣や斧に比べればはるかに扱いやすい。

「軽くて持ちやすいし、危なくなさそうだし、魔物つかいっぽいからこれにしようか」

「素敵です、新魔王様! ダーキル、このムチで責められるところを想像するとワクワクが止まりません!」

 ルトは二人のやりとりに苦笑しながら、店主に代金を支払った。 


「いよいよ冒険者っぽくなってきたな! これで買い物は終わりなのか?」

 武器屋を出た新魔王は、腰に装備した革のムチに手を触れた。

「そうですね。普通だったら、食料に薬、馬車の手配などをする必要があるのですけど」

 新魔王のチート能力を使えば、いつでも魔王城に帰ることができるため、それらも必要がない。

 ダーキルは冒険のしおりを開いて、次の目的地を指し示した。王都グルノーヴァから街道を西へ向かい、温泉街リエドを目指すという。途中でお弁当を食べて、日が暮れる前にリエドに到着するので、温泉で汗を流してから魔王城に帰ろうというプランだ。

「途中でモンスターは出るのか? バトルはあるのか?」

「王国周辺では、それほど強い魔物は出ないので安心してください。戦いながら、ボクがムチの使い方を教えて差し上げます」

「ふふふ……腕がなるぜ!」

「いよいよ冒険の始まりですね! ダーキル、日記にぜんぶ書き残して、ライトノベルにするのです!」

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