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    ー2

「バカバカしい。放っておけば、勝手に治るでしょ」

 ゼッカは面倒くさそうに席を立った。

「じゃあ私、学校の時間だから」

 部屋を出るゼッカに、ドロシーが声をかける。

「ゼッカさんのお弁当はキッチンに置いてあるとよ」

「ありがと、ドロシー。行ってくるわね」

「新魔王様とダーキル様は、どうするっちゃ? お出かけの予定があると聞いていたっちゃから、お弁当を用意しておいたとよ」

 ドロシーの問いに、ダーキルは残念そうに首を傾げる。

「新魔王様は本日、女騎士を捕らえるため外出される予定だったのですが……お加減が優れないようなので、中止にした方が良さそうですね」

「いや、その必要はない。予定通りに外出することにする」

 部屋でじっとしている方が、余計に考え込んでしまいそうだと新魔王は思った。

「準備は出来ているのか、ダーキル」

「はい、こちらはダーキルが作った冒険のしおりです。目指すは女騎士たちの独立国『ラディ・コロセウム』ですね」

「うむ、ご苦労。朝食の片付けが終わったら、さっそく向かうとするか」

 性欲を失っている今の新魔王は、女騎士と聞いても心が弾まなかった。しかし女騎士は、レ◯プシチュエーションに置けるレジェンド中のレジェンドである。実際に女騎士を目の当たりにすれば、大賢者タイムを打破できるかもしれない。

 食器を重ねて持ち上げる新魔王に、ダーキルが進み出た。

「新魔王様、ダーキルにご提案がございます。冒険の旅を、王都グルノーヴァから始めることにいたしませんか」

 グルノーヴァは、多くの冒険者が集まる人間界を代表する王都である。

 ダーキルは冒険のしおりを開いて、目的地であるラディ・コロセウムと、王都グルノーヴァに印をつけた。それぞれの国の間には大きな山々が横たわり、かなりの距離が開いていることがわかる。

「おい、どうしてこんな遠回りをする必要があるんだ。何日かかるか分かったものではないぞ」

「だからこそです、新魔王様。いつものパターンですと、このまま現地にワープされて、さっさと女騎士を捕まえてしまうことでしょう。それでは面白くありませんので、じっくりと旅を楽しみながら、女騎士の国を目指すことにいたしましょう」

「いや、そんな面倒なことは……」

 新魔王が反論しようとするも、ダーキルは無視をして言葉を続ける。

「たしかに、目的のないお散歩はダーキルも嫌いです。しかし『いつレ◯プされるか分からない状況でのお散歩』となれば、それは血湧き肉躍るバージンロードになるでしょう。凌辱に至る過程を楽しもうという、鬼畜極まりない新魔王様でしたら、そこへ至るまでの更なる焦らしプレイにも理解を示されるはずかと……」

 新魔王に詰め寄るダーキルのスカートから、ばさばさと本が落ちた。それはダーキルが最近気に入っているライトノベルの数々である。

「……要するに、ライトノベルごっこがしたいというわけだな」

「新魔王様による至高の童貞処女レ◯プを求めるダーキルは、より新魔王様の性癖を理解し、その可能性を広げていく必要があるのです」

「ボクもそれがいいと思いますよ!」

 地図を覗いていたルトが、ダーキルに加勢した。

「外に出て歩き回れば、いい気分転換になります。それにグルノーヴァなら、ボクが生まれ育った街でもありますので、色々とご案内も出来ますし!」

 新魔王はジロリとダーキルを睨みつけた。最初からルトを巻き込むつもりで、グルノーヴァを選んだのだろう。

 面倒には思いつつも、ダーキルとルトの期待に満ちた視線からは逃れられず、新魔王は王都グルノーヴァへ行くことを承諾した。

 冒険といっても、行ったきり戻ってこない訳ではない。心配そうに袖を引っ張ってくるエルの頭を、新魔王はポンポンと叩く。夕方になれば魔王城の住人たちに、夕食の準備をしなければならない。時間になればそこで冒険を中断し、魔王城へと戻ってくることにする。そして翌日、朝食を食べ終えた後に、前日の場所から再スタートするのだ。

 もちろん数日置きに休日を設けて、学校を作っているミラーナの手伝いや、育ち盛りのエルの相手をしなければならない。ドロシーやノーラも、時々でいいので冒険に連れて行って欲しいと希望した。

「まったく、どいつもこいつも旅行気分だな……」

「ダーキル、大切なことを言い忘れていました。冒険中は、新魔王様のチート能力を封印して頂きたいと思います」

「……は?」

「新魔王様は強すぎますので、戦闘が成り立ちません。それではダーキルやルトさんが活躍する場面もありませんので、新魔王様には生身の能力で冒険をお楽しみ頂きたいと存じます」

「ば、バカをいうな! チート能力がなかったら、俺はモブキャラ以下のザコだぞ! バトルどころか、運動だってまるで出来ないのだからな!」

「そこはルトさんが、ビシビシ鍛えてくださいますよ」

「お任せください、師匠! 普段お世話になっている分、ボクが手取り足取りお教えします!」

「ア・ホ・か! 椅子に小指をぶつけただけで死ぬほど痛いのに、剣を持って魔物と戦えだと? 無理だ無理、絶対にムリ!」

「仕方ありませんね。では、防御系のチート能力だけ認めるということでいかがでしょう。痛みや苦しみ、疲労を感じないようにすれば、バトルや訓練も苦ではありません。そしてどうしようもない状況になったら、チート能力を発動させても良いということで」

「……ま、まあ、それならいいか」

「楽しみですね、師匠! ダーキル様もよろしくお願いいたします!」


 新魔王とダーキル、ルトの3人は、ドロシーが用意してくれたお弁当を手に持った。すでに学校へ行ったゼッカ以外のメンバーが、魔王城の前で見送りをしている。

「夕食までには戻る。ドロシー、エルのことを頼むぞ。ノーラはミラーナをあまり怒らせないようにな」

 新魔王は念のため、全員にテレパシーのチャンネルを開くことにした。なにか緊急事態があれば、どこにいても駆けつけられるようにするためだ。

「よし、行くか」

 ダーキルとルトの手を握った新魔王は、王都グルノーヴァ周辺に向けて空間転移を行った。 

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