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第十一話 ダーキルと秘密のガールズトーク

 孤児たちを工作員として育て上げ、新魔王のために利用するという鬼畜的な計画は、滞りなくスタートした。手間と時間は掛かるが、理想の鬼畜凌辱ハーレムを完成させるために、やがて大きな効果を発揮してくれることだろう。


 しかし、これで問題のすべてが解決したわけではない。新魔王はモニターに次々と映し出される、凌辱される寸前の美少女エロ画像を厳しい表情で見つめていた。


 そこへダーキルがやってくる。


「お呼びでございますか、新魔王様」

「別に呼んでいないが」

「呼ばれたような気がしたのです。レ〇プしてやるから俺の側に来い、と」


 ダーキルは身を翻すと、新魔王のベッドの上に、身体をぽすんと投げ出した。


「ああっ! やめてください、新魔王様! ダーキルを押し倒さないでください!」

「一人でなにをしてんだよ」

「エアレ〇プです。ダーキルは本番に備えて、毎朝毎晩練習を欠かしません。あっ、ダメです、新魔王様! そんなところを触っては――」


 ダーキルは新魔王の枕を股に挟んで、見えない何かと戦っている。

 新魔王は布団の端を掴むと、ぐいっと一気に持ち上げた。ダーキルはくるくると回転しながらベッドから落ちて、部屋の隅まで転がっていく。


「少し出掛けてくるから、留守を頼んだぞ」

「新魔王様がお出かけなんて珍しいですね。どちらへ行かれるのです?」

「ただの散歩だ。夕飯までには戻る。それまでパソコンは自由に使っていいぞ」

「わーい」




 魔王城の裏庭にやってきた新魔王は、周囲に誰もいないことを念入りに確認した。その手に握られているのは、ルトに使用した性別反転の指輪だ。

 新魔王がクリアしなければならない問題、それは女性の体に対する耐性である。これまで多くのゲームや妄想の世界で、何万回と凌辱のシチュエーションを繰り返してきた新魔王だが、現実で女性を前にすると、その経験を活かすことができなかった。


 そこで指輪を使い、自分自身を女の子にすることで、女性の体に慣れてしまおうという考えなのだ。自分の体であれば、いくら触ろうが眺めようが抵抗はない。

 我ながら最高のアイデアだと満足げな新魔王は、さっそく性別反転の指輪をつけてみた。手鏡に映った自分をみて、感嘆の声を上げる。


「これが、女になった俺……可愛すぎる!」


 見た目が最初から美少女だったルトとは違い、新魔王の体の変化は明らかだった。新魔王はしばらく自分の容姿に見惚れていたが、本来の目的を思い出して頭を振る。大急ぎで女性用の服に着替えると、あらためて自分の体をペタペタと触った。さすがに自分の体なので、触ることにも抵抗を感じない。


「よしよし、この調子で特訓を続けていけば」


 その時、新魔王の頭にどさりと何かが落ちて来た。衝撃でバランスを崩した新魔王は、そのまま後方に尻もちをつく。


「あいたた……なんだこれ」


 新魔王は目の前に落ちていている布のかたまりを拾った。ほのかに果実のような良い香りがするそれは、ダーキルのオムツに間違いなかった。

 はっと見上げると、ちょうど真上から自分を見下ろしている人影に気が付く。これはマズいと、慌てて逃げ出そうとするが、飛び降りて来たダーキルが目の前にふわりと着地した。こうなっては他人のフリをするしかないと、新魔王は覚悟を決める。


「お怪我はありませんでしたか」

「あ……はい、大丈夫です」

「それは良かったです。うっかり洗濯物を落としてしまいまして、下に人がいるとは思いませんでした」


 ダーキルはオムツを拾って、ついた土をぱんぱんと払う。落ちて来た重さから考えて、明らかに使用済みのオムツなのだが、今の新魔王がツッコミを入れるわけにはいかない。


「ところで――」


 ダーキルが口を開いた次の瞬間、新魔王の首元に冷たい感触があった。ダーキルの持つ赤い槍の刃先が、頚動脈に押し付けられていたのだ。


「ここは偉大なる新魔王様の城。どのような目的でこちらにおいでですか? 見たところ、ミラーナさんの学校関係者でもないようですし」

「わ、私はただ、散歩をしていただけで……」

「散歩をしていただけで、ただの人間が魔界に来られるはずがありません」


 ダーキルはそこまで言いかけて「あー」と魔王城の入口の方を眺めた。そこにはゼッカが使っているワープホールがある。


「もしかして、あちらから迷い込んで来られたのでしょうか」


 渡りに舟とばかりに新魔王が頷くと、ダーキルは突き付けていた槍をしまった。


「それでは、私が出口までご案内をいたします。どうぞこちらへ」


 女の子になった新魔王はダーキルの隣を歩く。いつもより低い視点から見るダーキルの横顔は、相変わらずの無表情だが、どことなく悩んでいるようにも見えた。


「私の顔になにか?」

「あ、いえ、ちょっと元気がないのかなーって……あはは」


 新魔王が笑って誤魔化すと、ダーキルはその場に立ち止まって、物珍しそうにじーっと新魔王を見つめてきた。正体がバレてしまったのではないかと、新魔王の背中に冷や汗が落ちる。


「失礼ですが、お名前を教えて頂けますか」

「しん……シンコ! シンコっていうの!」

「不思議ですね。初めてお会いしたはずなのに、何だかとても話しやすいような感じを受けます」

「そ、そうなんだ、うれしいな」

「あの、少しお時間ありますか? ご迷惑でなければ、私……ダーキルのお話し相手になって頂きたいのです。こうして出会ったのも何かのご縁だと思います」


 ダーキルは新魔王の手をぎゅっと握りながら言った。逃げられそうにもないと観念した新魔王は、仕方なくダーキルに付き合うことにした。


「それではダーキル、シンコちゃんに魔王城を案内してさしあげます」

「えっ、いいの? さっき言ってた新魔王っていう人が戻ってくるんじゃ……」

「大丈夫です、新魔王様は夕飯まで出掛けています。それに、もし見つかったとしても悪いことにはなりません。むしろ……」

「むしろ?」

「いえ、そこまで考えるのは性急でしたね。さあ、行きましょう」


 ダーキルは新魔王の手を取ると、体をぴったりと寄せてきた。一瞬、身を竦ませた新魔王だったが、女の子同士だから問題ないだろうと、ダーキルの体の感触を気にしないようにした。

 ダーキルは歩きながら、新魔王の目的と、彼がいかに偉大であるかを自慢げに語った。そして魔王城に囚われている女の子たちを紹介したいという。新魔王は、さすがにそれはマズいと遠慮をしたが、強引に手を引っ張られてしまった。




「もしもし、ドロシーさんいますかー」


 ダーキルが声をかけると、オークのお姫様であるドロシーが部屋から出てくる。


「ダーキルさん、ご機嫌ようだっちゃ。おや、その人は誰だっちゃ?」


 簡単な自己紹介を済ませると、二人はドロシーの部屋に招き入れられた。

 ダーキルとドロシーはお姫様であるという共通点から、ファッションについて話をすることが多いらしい。よくダーキルの部屋で、ドレスとアクセサリーのコーディネートを試してみたりしているという。新魔王にとっては初めて聞く話だった。


「新魔王様には、このメイド服でいるように命じられていますので、ドレスをお披露目できないのが残念なのですが」

「おしゃれしたダーキルさんは、とっても可愛いとよ。いつか新魔王様にも見てもらいたいっちゃ。きっと惚れ惚れするとよ」


 紅茶とコンソメポテチを食べながら、「シンコちゃんにはどんなドレスが似合うか」という話題に花が咲く。ファッションのことはよくわからない新魔王だったが、おしゃれについて話をするダーキルは新鮮に見えた。

 思えばドレスを着たダーキルも見たのは、この異世界にきた初日だけで、しかも着替えの途中だった。機会があれば見てみたいような気もするが、ドレス姿を見たいから見せてくれ、とは恥ずかしくてさすがに頼めない。




 ドロシーと別れ、次にやってきたのはエルが住んでいる部屋だ。


「新魔王様がパパで、ダーキルがママなのです。もちろん本当の子どもではありませんけどね」


 そう言いながら哺乳瓶を傾ける仕草は、なかなか様になっている。ダーキルはエルにミルクを与えながら、お風呂や着替えの世話がいかに大変なのかを語った。その苦労話も、新魔王が知らないことばかりだったので、今後はもう少しダーキルに気を使ってやらなければならないなと、新魔王は少しだけ反省をした。


「ママ、まーま」

「はーい、ママはここにいますよ。シンコちゃんも撫でてあげてください」

「あ、うん」

「……ぱぱ?」


 新魔王はぎくりとして、手を引っ込めた。


「パパは夕方になったら帰ってきますよ。それまで良い子にしていましょうね」


 ダーキルはミルクに濡れたエルの口元を拭って、よしよしと頭を撫でる。


「パパ、ぱーぱ、だっこ」

「シンコちゃんにお願いしても、パパは帰ってきてくれませんよ」

「あ、あはは……」




 エルの部屋を出ると、ダーキルは隣の部屋にいるノーラに声をかけた。


「見た目はちょっとアンデッド系なのですが、とっても可愛くて良い子ですので安心してください」


 元気よく出てきたノーラと挨拶をして、お化け屋敷のようになった部屋に招かれると、新魔王についての話題になった。ノーラは「ここだけの話だけど」と楽しそうに語る。


「新魔王様はとってもお強いんですけど、実は怖いのが苦手なんです。私は新魔王様の驚いた顔が大好きで、ホラー漫画を読みながら驚かせ方を勉強しているんです。それで時々、ダーキル様に撮影してもらって、あとで動画を見せてもらうんですよ」

「ノーラさんは本当に良いお仕事をしてくれます。新魔王様は驚かれると、隣にいるダーキルに抱きついてくるのですが、これがもう刺激的でして……ダーキルとノーラさんは、お互いにウィンウィンの関係を築いているのです」

「そ、そうなんだー……」 


 驚かされている当の本人としては不服だが、それを伝える訳にもいかない。なんとか対策をしなければと考えつつ、ノーラの部屋を出た。



 ゼッカは学校へ行っているため不在だった。


「あら、残念ですね。同じ人間界の女の子なので、シンコちゃんもきっと話しやすいと思ったのですが」


 新魔王はほっと胸をなでおろした。怖いもの見たさもあったけれど、やっぱり怖いものは怖い。


「というわけで、お隣に行きましょう。もしもし、ミラーナさんいますかー」


 ダーキルが声をかけると、修道服をきたミラーナが部屋から出てきた。最近は多忙が続いていて、ほとんど魔王城にいないことが多い。

 ミラーナは新魔王を見ると、一瞬の間を置いて、ニッコリと微笑んだ。


「初めまして、ミラーナと申します」

「し、シンコです。よろしくお願いします」


 新魔王は可能な限りに体を小さくして、顔を見られないように頭を下げた。神眼の持ち主とはいえ、相手が考えていることまでわかるわけではない。正体がバレることはないと思いながらも、何でも見抜いているようなミラーナの視線は落ちつかない。


「ふふっ、可愛らしい方ですね。ダーキル様のお友だちでいらっしゃいますか」


 ミラーナが言うと、ダーキルは「そうなのです」と即答した。いつの間にか、ダーキルにお友だち認定をされていたらしい。


「こちらのミラーナさんは、この魔界で子どもたちのために学校を作っています。魔王城の入口から大きな建物が見えましたよね」


 これも新魔王様の野望を実現するための布石でして、とダーキルが説明をする。


「ダーキル様にお手伝いをして頂いて、本当に助かっています。子どもたちからも大人気なのですよ。とても優しくて、面白いお姉ちゃんだって」

「だ、ダーキルは子どもが苦手です! シンコちゃんはどうですか?」


 学校もとい洗脳施設の取り組みについて話したあとで、「よかったらシンコ様も遊びに来てくださいね」とミラーナに見送られた。 




「次は勇者のルトさんをご紹介しますね。とても可愛いのですが、信じられないことに実は男の子なのです」


 ダーキルが訪れると、ルトは丁重に頭を下げて出迎えた。新魔王を師匠として敬うようになってからは、ダーキルたち他の住人たちにも「どうすれば男らしくなれるか」の相談に乗ってもらっているらしい。学校の運営にも協力的で、子どもたちに剣術を教えていきたいと言った。


「本日はひとつ、ルトさんに新魔王様の男らしさについて語って頂きたいなと」

「師匠のですか? それはもうボクに任せてください!」


 ルトは憧れの人を自慢するように、新魔王の強さと男らしさを語った。聞いている新魔王にとっても「それはさすがに盛りすぎだろう」と恥ずかしくなる部分が多い。


「それで、新魔王様はボクの胸ぐらを掴みながら言ったんです。『この俺が、貴様の初めての男になるというわけだ』って」

「最高ですよね! その時の様子はダーキルが動画で撮影していますので、よかったらシンコちゃんにも見せてあげます」

「あ、あはは……」


 黒歴史を掘り返された新魔王は、メンタルに大ダメージを受けてしまった。




 最後に連れて行かれたのは、魔王城にある塔の頂上、ダーキルの部屋だ。


「シンコちゃん、ちょっとここで待っていてくださいね」


 ダーキルが部屋に入ると、中からドタバタがっしゃんと、物を片付けるような音が聞こえてくる。


「お待たせしました、どうぞ」

「お、お邪魔します」


 新魔王がダーキルの部屋に入ったのは、これが二度目となる。初めて入ったのは異世界にやってきた日で、着替え中のダーキルとばったり顔を見合わせてしまった。

 なんだか遠い昔の出来事のような気がしてくる。あの時は、まさかこんなことになるだなんて想像することもできなかった。


「綺麗な部屋だね」


 新魔王がいうと、ダーキルはえっへんと胸を突き出した。


「これでもダーキル、お姫様ですから」


 収納扉からオムツの白い切れ端が見えているが、今は友だちとして見なかったことにした。ダーキルは嬉しそうに新魔王を引っ張って、ベッドの上に並んで腰をかけた。


「シンコちゃんはさっき、ダーキルを見て『元気がなさそう』と言いましたよね。実はダーキル、悩んでいることがありまして、相談に乗って頂きたいのです」

「別にいいけど、私でいいのかな」

「シンコちゃんがいいのです。シンコちゃんは、ダーキルの初めてのお友だちですから」

「初めての? でも、さっきの皆さんは……」


 ダーキルは少し困りながら説明をした。ドロシーやミラーナたちとも仲良くしているが、元々は自分が無理矢理に誘拐してきたということもあって、やはり遠慮している部分が多いらしい。新魔王にルトという同性の友だちが出来たことで、ダーキルは自分にも気軽に話せる友だちが出来たらいいなと思うようになったのだ。

 ダーキルがそのように考えていたことは、新魔王にとっては意外だった。普段から適当にふざけているようで、実はかなりの寂しがり屋だったのかもしれない。


「それで、相談って?」


 新魔王が尋ねると、ダーキルは深刻な顔をしながら身を寄せてくる。


「シンコちゃんは、その……レ〇プをされたことがありますか?」

「な、ないけど……」


 女の子の友だち相手にいきなり何を言うのだと、新魔王はツッコミを入れたい衝動を必死に抑えた。


「実はダーキル、レ〇プをされたい相手がいるのです。それで毎日、積極的にアピールをしているのですが、なかなかその気になってくれません。どうしたら、レ〇プをしてもらうことが出来るのでしょうか」

「ええと、ダーキルちゃん。まず普通は、レ〇プをされたいなんて思わないからね」

「はい、新魔王様にも同じことを言われました。でもダーキルは、新魔王様にレ〇プをされたいのです。シンコちゃんだったらどうしますか? 仮にもし、レ〇プをされたい相手がいたとして」

「うーん、ちょっと想像することが出来ないなー! だって普通は、好きな人と合意の上で結ばれたいと思うものだよ」

「ダーキルには好きという感情がよく分かりません。どういうものなのでしょう」

「私も経験がないから分からないけど、近くに居たいというか、声を聞いていたいというか……その人のことを考えていると、夜も眠れなくなってしまうみたいな?」

「ダーキルは新魔王様の近くに居たいですし、新魔王様の声を聞いていたいですし、新魔王様のことを考えているとつい夜更かしをしてしまいます。それはダーキルが、新魔王様を好きだということなのでしょうか」

「ええーっ!」

「どうしてシンコちゃんが驚くのです」

「い、いや別に……」

「それでは、質問の仕方を変えてみましょう。もしシンコちゃんに好きな人がいたとして、いくら頑張っても振り向いて貰えないときは、どうしたらいいと思いますか」


 質問を振られて、新魔王は少ない恋愛経験値を総動員させてアドバイスを考える。


「そ、そうだなあ……押してダメなら引いてみる、とか?」

「引いてみる?」

「何かの恋愛話で聞いただけなんだけどね。強くアプローチして反応がない場合は、すっと離れてみると、相手が物足りなく感じるようになって、逆に追い掛けてくることがあるらしいよ」

「なるほど、高等な心理術です! おかげでダーキル、希望が見えてきました」


 ダーキルは新魔王の手を取ると、両手で親しげにぎゅっと握りしめた。


「シンコちゃん、ありがとうございます。ダーキルのことを、まるで自分のことのように悩んでくれて……ダーキル、本当に嬉しいです」

「あ、あはは」


 その後も他愛のない話を続けていると、いつの間にか魔界の太陽が山の端に沈みかけていた。


「いけません、もうこんな時間です。新魔王様が戻ってきてしまいます」

「そうだね、私もそろそろ帰らないと」

「シンコちゃん……もしよかったら、新魔王様のハーレムに入りませんか」

「ええっ!」

「美味しい物もたくさん食べられますし、人間界なんかよりも楽しい事がたくさんありますよ。パソコンという面白い道具もありますし、何よりダーキルが一緒にいます」

「……ごめんね。誘ってくれるのは嬉しいんだけど、私には私の生活があるから」


 夕陽に照らされたダーキルの顔は、とても寂しそうに見えた。


「また、ダーキルと会ってくれますか?」


 新魔王はしばし思案した後、首を小さく横に振る。ここははっきりと言ってあげるのが、ダーキルに対する優しさだと思った。


「ダーキルちゃんのことは好きだよ。でも私たちは、それぞれ住む世界が違うから……今日の出来事は一つの奇跡みたいなもので、これから先も続けられるものではないと思うの」

「……そうですよね。ダーキルもわかっていました。ワガママを言ってしまって申し訳ありません」

「ううん、気にしないで。それに離れていたって、会えなくたって、私たちは友だちだよ」

「シンコちゃん……」


 ダーキルは小さく鼻をすすると、クローゼットからはみ出ていたオムツを引っ張り出した。


「これは友情の証です。どうか持っていってください」


 使用済みオムツを友情の証にするんじゃない! ……というツッコミを、新魔王は必死に腹の中に抑え込んだ。


「あ、ありがとう。貰っておくね」

「もし気が変わって、新魔王様のハーレムに入りたくなったら、いつでも歓迎いたします。その時は、ノールロジカ魔法学校のゼッカ・スカーレットさんという方にお声がけください」


 魔王城の入口にあるワープホールの前で、ダーキルと新魔王はもう一度、固く手を握りあった。


「シンコちゃん、お元気で」

「ダーキルちゃんも、その……頑張ってね!」

「シンコちゃんのアドバイス、決して無駄にはいたしません」




 ダーキルと別れて、ワープホールを出ると、そこはノールロジカ魔法学校の正門前だった。ちょうど授業が終わって、生徒達が帰宅を始めた時間帯だ。その中に見知った顔――ゼッカの姿を見つけると、新魔王はオムツを握りしめたまま、そそくさとその場を離れた。


「やれやれ、とんでもない目に遭ってしまった」


 性反転の指輪を外して、元の姿に戻る。オムツを空高く投げ上げると、炎の魔法で焼き払った。どうせ変態的な映像が出てくるのだろうと身構えたが、そこに広がったのは美しい異世界の夜空だった。視線が移り、鏡に映し出されたダーキルが見える。


「涙……?」


 映像はそこで途切れ、後には夕焼けの空が広がっていた。


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