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第四話 魔族のお姫様、パソコンの前に座る

 ピピピ、と電子音が鳴ると、ダーキルは名残惜しそうにパソコンのマウスから手を離した。

 エルフの至宝『神の御使い』である少女をさらってきたご褒美に、約束通り一日一時間だけ、新魔王のパソコンを使わせてもらえることになったのだ。

 ダーキルは最後に残ったコーラを飲み干すと、「けっぷ」と喉を鳴らした。


「ダーキル、パソコンがとても気に入りました。ダーキルが集めたエッチな画像や小説は、『だーきるのふおるだ』に保存しておきますね」

「おい、勝手にフォルダを作るんじゃない。削除だ、削除」

「あっ、消しちゃダメですよ! ダーキルが頑張って集めたのです!」

「あいたた、髪を引っ張るな」

「逆の立場になって考えてもみてください! 一人遊びも我慢しながら、必死に集めたんですよ? 一度も使うこともなく削除されてしまうなんて、悲しすぎると思いませんか」

「わ、わかった、わかった。隅っこに置いておいてやるから、離れろ」


 新魔王は仕方なく、デスクトップの端に『だーきるのふおるだ』を設置した。


「中は見ちゃらめぇですからね? それにしても『れ』って入れただけで『レ〇プ』と変換されるなんて、パソコンって凄いですね」

「まあ、俺のパソコンだからな」

「ですがインターネットを使ってみて、納得のいかないことがあるのです。どうして『レ〇プ』という言葉は伏せ字にされてしまうのでしょう。まるで触れてはいけないアンモラルな言葉のように扱われています」

「実際、アンモラルな言葉だからな。性犯罪は決して許されない行為だ。人によってはその言葉を聞いただけでも気分を害するだろうから、自主規制しているのだろう」

「でも伏せ字にしたって、レ〇プがレ〇プであることは誰にでもわかりますよね。他に当て嵌まる言葉もないでしょうし、意味がないと思うのですが」

「配慮して見せることが大事というか、大人の事情というか」

「レ〇プじゃなくて、プレイだったらセーフでしょうか。プレイ。プレイプレイ。プレイプレイプレイ。あ、大丈夫みたいです」

「くだらんことを……」

「プレイプレイプレイプレイプレ〇プ。あっ」

「末尾をプにしたらアウトだろ」

「ですが伏せ字というのは、隠すことで逆にえっちぃ感じにもなりますよね。例えば『新魔王様のちくわ』を『新魔王様のち〇〇』にしますと、あら不思議」

「バカだろお前」

「『新魔王様の硬くなったちくわが、泣いて嫌がるダーキルのお茶わんに無理やりねじ込まれる』という文章をですね」

「やらなくていい」

「伏せるほどにエッチになるのであれば、いっそすべて伏せ字にしてしまいましょう。『〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇』ほら、とてもエッチです!」

「変態にしか読めない文字なのかな」

「それにしても困りましたね。これでは新魔王様とダーキルが登場する小説は、伏せ字だらけになってしまいます」

「俺とお前が出る小説? 何を言っているんだ」

「だって、先ほど新魔王様がおっしゃっていたじゃないですか。元いた世界では、異世界に転生するというお話が流行っていて、自分もそうなったらいいなと思いながら小説を読んでいたと」

「たしかに言ったが、それがどうした」

「もしかしたらそれらの作品は、異世界に転生した方たちの生活が『何らかの力によって小説化されたもの』なのではと思いまして。つまり新魔王様の生活も、他の作品の皆さんと同じように小説として公開されているということです」

「何をバカな……いやマジで? そういうこともあり得るのか?」


 不安になってきた新魔王は、小説投稿サイトの検索ページを開いた。『レ〇プ』や『凌辱』といった単語で調べてみても、該当する作品は見つからない。安心した新魔王は、小説投稿サイトのページを閉じた。


「ふっ、そんな馬鹿げた話があるか。考えても見れば、仮にその通りだったとしても、俺には関係のないことだ。冒険がなければバトルもない、美少女を凌辱寸前まで追い詰めて楽しもうだなんて作品は、誰からも読まれずに埋もれるだけだからな。ブクマも評価ポイントもつかないだろう」

「そうでしょうか。ダーキルの可愛さでワンチャンス書籍化あると思います。表紙詐欺ならお任せください」

「詐欺であることは自覚しているんだな。たいした自信だが、そんな酔狂な出版社があるわけないだろう」

「もし書籍化いたしましたら、過激なレ〇プシーンの挿絵をたくさん入れてもらいましょうね。小説だけじゃなくて、漫画になったりアニメになってくれれば、ダーキルもおかずが増えて満足です。出版社の偉い人、どうかよろしくお願いいたします」

「誰に向かって手を振っているんだよ。そんなことより、お前に頼みたいことがあってな」


 新魔王は異世界ポケットから、新品のビデオカメラを取り出した。


「説明するより、使ってみせた方が早いか。ダーキル、そこに立っていろ」


 ダーキルの周りを歩きながら撮影して、データをパソコンに移して再生する。

 その動画を見たダーキルが驚きの声をあげた。


「ダーキルがパソコンの中に入ってしまいました」

「このように、ビデオカメラを使えば簡単に動画を撮影することが出来るのだ。お前がパソコンで見た動画も、同じように撮影されている」

「ダーキル、察しました。新魔王様による鬼畜レ〇プシーンを、ダーキルに撮影させようというのですね」

「うむ、その通りだ。録画をしておけば、後でゆっくりと鑑賞することが出来るからな。今後は画像だけでなく、動画もコレクションに入れていきたい」

「素晴らしいです。これさえあれば、新魔王様によるダーキル処女レ〇プシーンも、永遠に保存して楽しむことが出来ますね。血走った顔でダーキルに襲いかかる新魔王様を、余すところなく撮影しちゃいますよ」

「お前が撮影すんのかよ。レ〇プ被害者視点の動画なんて誰得だよ」

「ダーキル得です。死ぬまでおかずに困りません」

「最悪だ。死ぬまでおかずにされる身にもなってみろ」

「それなら新魔王様もビデオカメラを用意して、お互いに撮影し合えば良いのです」

「いやダメだろ。互いにカメラを持っているのが見えてしまっては興ざめだ」

「では、シーンごとにカメラを交換しながら進めていきましょう」

「それならまあ、なんとか見られる出来に……って、やらねーよ!」

「残念です、このまま何気なくレ〇プ撮影会の流れに持って行こうとしたのですが」

「何気なくレ〇プなどするか! 前から言いたかったのだが、もしお前の望み通り、俺がお前をレ〇プしたとして」

「してくれるんですか」

「仮の話だ! 俺のズボンから手を離せ!」

「すいません、つい興奮してしまいまして」

「なぜ脱がしにかかった!」

「新魔王様の気が変わらないうちに、レ〇プされてしまおうかと」

「だから、それはもうレ〇プとは言わないだろう」


 新魔王に言われて、ダーキルは不思議そうに首を傾げた。


「されたくないからレ〇プなわけで、合意の上であれば、それは『和姦』というものだ。ただのセ○クスに過ぎん」

「合意の上でレ〇プすればいいじゃないですか」

「合意したらレ〇プじゃないんだよ。いいか、まずはレ〇プの定義を確認しろ。レ〇プされたくない相手から、無理やりレ〇プされるからこそレ〇プなのだ」

「でもダーキル、新魔王様以外にレ〇プされたくないですもん」

「いや、その……ええっ?」

「じゃあ新魔王様は、ダーキルが他の男にレ〇プされてもいいのですか?」

「なぜそんな話になる」

「想像してみてください。ダーキルが知らない男に捕らえられて、新魔王様の目の前でレ〇プされてしまうシーンを。『ううっ……ひっく……新魔王様にレ〇プされるために守ってきた処女なのに、他の男にレ〇プされてしまいました』」

「セリフに違和感がありすぎる」

「哀れなダーキルは、せめてレ〇プをしているのが新魔王様だという妄想に逃げ込もうとします。しかし新魔王様が目の前にいるので、妄想に逃げることが出来ません。屈辱に涙を流しながら、新魔王様の名前を呼び続け、やがて瞳からは光が失われていくのです。……見て下さい、想像しただけでレ〇プ目になってしまいました」

「器用なやつだな。頭がおかしいんじゃないのか」

「それとも新魔王様は、こういった寝取られシチュエーションがお好きなのですか」

「レ〇プ目のまま普通に喋らないでくれ、気持ち悪いから」

「すいません、ちょっと待ってくださいね……ごしごし。これでどうです?」

「まだ片方がレ〇プ目だ」

「こっちですか?」

「逆だ、逆……ああ、元に戻った」

「それで、新魔王様の寝取られ属性についてですが」

「最も理解できない性癖の一つだな。創作とはいえ胃が痛くなる」

「それを聞いて、ダーキルは安心いたしました」

「いいから、ビデオカメラの使い方を説明するぞ。この電源スイッチを押したら、赤いボタンを押せ。RECというマークが出たら、撮影中ということになる」


 ダーキルはふんふんと頷きながら、新魔王の肩に顎を乗せる。


「おい、顔が近いぞ。離れろ」

「近づかないと、よく見られないではないですか。どうぞ気にせず、説明を続けてください」


 ダーキルは新魔王が説明している最中に、耳と耳、頰と頰が触れ合う距離にまで顔を近づけた。


「右上のマークは電池残量、右下の数字は録画可能時間だが――」

「……くんくん」

「おい、聞いているのか?」

「はい、今夜のおかずゲット……いえ、こっちの話です。ではさっそく、撮影に行きましょう」


 ダーキルはビデオカメラを手に立ち上がった。


「しかし撮影といっても、今はオークとレ〇プ目のエルフ娘しかおらんぞ」

「練習も大事ですよ。いざ本番となって撮影に手間取っては、新魔王様に怒られてしまいます」

「それもそうか。ちょうどこれから飯の時間だから、適当に練習をするといい」

「はーい」




 魔王城の食事は、新魔王が用意をしている。異世界ポケットでどんな材料でも取り寄せられるので、予算を気にせずに料理を楽しむことが出来るのだ。

 新魔王とダーキルは、銀の台車にたっぷりの食事を載せて、ドロシーが住んでいる101号室にやってきた。


「ドロシー、飯の時間だぞ。開けてくれ」


 新魔王が声をかけると、部屋の中から足音が聞こえてきた。ハーレム要員ではないドロシーは、自由に部屋の出入りが出来るようになっている。


「はーい、ご苦労さまだっちゃ。入ってけろ」


 扉を開けたドロシーが、笑顔で二人を出迎えた。ドロシーが着ている洋服をみて、新魔王が不思議そうな顔をする。

「どうしたんだドロシー、その服は」

「ダーキルさんが、オデの部屋まで取りに行ってくれたとよ。ウェディングドレスのままでは生活しにくいだろうからって、気を利かせてくれたんだっちゃ」


 ドロシーがお礼をいうと、ダーキルは「身分ある方をお預かりしているのですから当然です」と無表情のままに応えた。


「普段着もとても良くお似合いですよ、ドロシーさん」

「ありがとうだっちゃ。オデもダーキルさんのドレス姿を見たいとよ。きっとすごく綺麗だっちゃね」

「それでしたら、ダーキルのクローゼットをご覧になられますか。ちょうど不要になった服を処分しようかと思っておりまして、ドロシーさんに手伝って頂けると助かります」

「へえ……いつの間に仲良くなったんだ、お前たち」


 新魔王が言うと、ダーキルは「別に普通です」と目を逸らした。


「そう言う新魔王様だって、ドロシーさんに至れり尽くせりではないですか」


 ドロシーの部屋には、新魔王が取り寄せた大きなベッドとソファが置いてある。

 最新のエアコンにふかふかの高級絨毯、照明設備はもちろんのこと、プライバシーが守れるように内側から鍵がかけられるようもなっていた。


「ダーキルのお部屋よりも豪華です」

「最初は寝床だけでいいと思ったのだが、家具の配置を考えているうちに、だんだんと楽しくなってしまってな」


 新魔王は台車に載せていた食事のフタを開けた。美味しそうな香りがあたりに漂って、ドロシーはうっとりと目を輝かせる。その様子を見たダーキルが、すかさずビデオカメラを回した。


「バッチリ撮影いたしましたよ、お腹を空かせたドロシーさんの物欲し気な表情を。オークの青少年たちが見たら、行き場のない大量の子種が昇天すること間違いありません」

「オデ、新魔王様の料理が大好きだっちゃ。あんなに美味しいもの、今まで食べたことないとよ」

「当然だ、この世界にある食材ではないからな。いいからさっさと食え」

「新魔王様、お待ちください。せっかくの機会ですので、貴重なオークのお姫様の欲情顔を、もう少し撮影させて頂きましょう」

「欲情顔と言っても、食欲なわけだが」

「見て下さい、お預けを食っているドロシーさんを。オークとしての本能と、高貴なる王族としてのプライドの狭間で、涙目になっています」

「あのな、俺はレ〇プされる寸前の美少女の表情が見たいわけであって、飯を食う寸前のオークの表情を見たいわけではないのだ。可哀そうだから、もう食わせてやれ」

「はーい。大変失礼いたしました、ドロシーさん。それでは新魔王様の手料理を、存分にお楽しみください。お詫びにダーキルのコーラをプレゼントいたします」

「ありがとうだっちゃ! いただきますだっちゃー♪」

「おやつはコンソメ味のポテトチップスだ。コンソメパウダー5倍だぞ、5倍」

「デュヒヒー! オデ、コンソメ大好物だっちゃー!」

「出ました、ドロシーさんの絶頂昇天アヘ顔ダブルポテチです! これはしっかりと撮影しなければいけませんね」

「だからいいっての。次行くぞ、次」



 ドロシーの部屋を出た二人は、隣の102号室にやって来た。

 自力で食事を取ることの出来ないエルフの少女のために、新魔王は哺乳瓶を用意していた。


「飲むところがおっぱいの形になっているのですね。なかなかにエッチなグッズです。新魔王様もそうやってミルクを飲まれているのですか」

「飲まねえよ。あと、これはエッチなグッズでもなんでもない」


 新魔王はミルクの入った哺乳瓶を傾けて、エルフの少女の口に含ませた。


「ほら、ありがたく飲むがいい。この新魔王様が直々に飲ませてやるのだからな」

「新魔王様が先端を少女の唇に押し込んで、中から白い液体を流し込んでいきます」

「妙な言い方をするな」

「んっ、う……」


 エルフの少女の喉元が、弱々しく上下している。 


「あ、少しずつですがミルクの量が減ってますね」

「ちょっとしたコツがあってな。頭の後ろを軽く持ち上げて、同時にミルクを押し込むと反応するのだ」

「んくんく」

「さすがは新魔王様です。料理に子育てと、良いパパになりますね。ダーキルもママとして鼻が高いです」

「誰がパパで、誰がママだ。というか、なんでこんなところを撮影しているんだよ」

「レ〇プ目に哺乳瓶というマニアックな組み合わせは、後世に残しておくべきかと」



 エルフの少女の食事を済ませると、新魔王とダーキルは魔王の間で自分たちの食事にした。

 木製のテーブルには、フレンチトーストにスクランブルエッグ、サラダとポタージュスープが並んでいる。

 姿勢良く上品にナイフを扱うダーキルをみて、新魔王もなんとなく姿勢を正した。


「ビデオカメラのテストはバッチリでした。撮影した動画は『だーきるのふおるだ』に保存しておきますね」

「あんなもの保存してどうするんだ。そんなことより、さっさと次のハーレム要員を捜してこい。今度は最初からレ〇プ目ではなくて、ちゃんと反応がある美少女でな。レ〇プは抵抗されるほど燃えるのだ」

「心得ております。ところで、そろそろ新魔王様もダーキルと一緒に美少女を探しに行かれてはどうでしょう。ダーキルも、ふたりの方が楽しいです」

「そうしたいのは山々だが、先に魔王城のリフォームを終わらせたくてな。ドロシーとエルフの部屋は急いで間に合わせたが、他の部屋にもエアコンを設置しなくてはならんし、水洗トイレと換気扇の工事も残っている」

「かしこまりました。ダーキル、新魔王様のご用事が終わるまでは、ひとりで頑張りたいと思います」

「うむ、頼んだぞ」






――新魔王の鬼畜凌辱ハーレムメモ――


【101号室 ドロシー(オークの姫)】

 美味しいものを食べさせすぎて、少し太ってきたかもしれない。それを本人に伝えようとしたところ、ダーキルにデリカシーがないと怒られてしまった。そこで運動の代わりに、魔王城内の掃除をやらせることにした。エルフの少女の面倒も見てくれるということなので、とても助かっている。


【102号室 名前不明(エルフの少女)】

 ミルクを飲むようになっただけでも大きな進展だが、これには誤算があった。おもらしをしてしまうようになったのだ。飲んだ分だけ外に出るのは仕方ないことだが、自力でトイレに行くことは出来ない。そういえば、元の世界でいいものがあったな。アレを取り寄せることにしよう。


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