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とまとま  作者: 沙φ亜竜
2.見つめるもの
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-1-

 あれ、ここはどこだろう?

 こうやって、場所がわからず始まる夢。

 とすると……。


「おや、どうしたんだい?」


 やっぱり、(ばっ)ちゃんだ。

 いつもと同じ夢だと思っていたけど、婆ちゃんが出てくるのは確かに同じではあるものの、場面は毎回違っているような気がする。

 といっても、よくは覚えていないのだけど。


「おなかがすいて、ぼーっとしているのかい? ほら、これでもお食べ」

「ありがとう、婆ちゃん!」


 そう言って渡されたものを、僕は口に含む。

 あれ? これは、なんだったっけ。

 なにか、どろどろとした食感だったような記憶も……。

 まだ幼かったから、柔らかいものを食べさせてくれていたのかな。


「美味しいかい?」

「うん!」


 笑顔で僕の顔をのぞき込む婆ちゃんに、素直な答えを返す。

 無邪気な子供の頃の記憶――。

 でも毎回なにか引っかかる感じを覚えるのは、僕の気のせいなのだろうか。


「ん? どうかしたかい?」


 そう考え込んでいると、婆ちゃんが少々怪訝な表情に変わる。

 と、そこで僕は目を覚ました。




 ☆☆☆☆☆



「あ……」


 目の前に、顔があった。


「婆ちゃん……?」


 口に出してしまってから、ぼやけた頭ながらも、またやってしまったと思った。

 そう、前回と同様、僕の目の前にいたのはキヌサヤだったのだ。


 あれ? でも、どうしてすぐ目の前にいるのだろう。

 僕は不思議そうな表情をしてしまっていたようで、キヌサヤは弁解の言葉を紡ぐ。


「なんかね、うなされているみたいだったから、大丈夫かな、と思って見に来たのよ。そうしたら布団も落ちそうだったから、かけ直しているうちに目を覚ましてしまったの」


 早口でそれだけ言うと、キヌサヤはそそくさと部屋から出ていってしまった。


「朝食を用意するから、もう少し待っていてね」


 台所から声が届く。

 まだ寝起きだからか、ちょっと頭はぼやけていて、なにか首筋の辺りにも鈍い痛みがあるような気がした。

 寝違えてしまったのかな。

 僕は軽く考えつつ、体を起こす。


 今日からは力仕事をするみたいだし、朝もしっかり食べておかないと。

 そう思いながら朝食の準備が整うのを待つことにした。

 ……というか、僕も手伝ったほうがいいのかな……。


「あら、いいわよ。食事の準備は私の仕事だから。アスパラには、これからバシバシ働いてもらうんだし!」


 キヌサヤはそう言ってウィンクをする。

 その言葉どおり、今日はあれこれと力仕事を任せられることになった。


 まず、朝食後は昨日言われていたように、キヌサヤの家に置きっぱなしになっている荷物を村の倉庫まで運んだのだけど。

 その分量の多さに、僕は少し驚いた。

 他の家にもあると言っていたのに、キヌサヤの家だけでこれだけの量があるとなると、確かに力仕事としては結構きついだろう。

 当然ながら一度に運びきれるわけもなく、しかも一回でいくつかの袋や箱を持ち運んだとしても、何度も往復しなければならなかった。


「こんなにたくさんあるんだね」

「ええ、いろいろな種類の食料が入っているわ。長く保存できるように加工されている物とか、保存料として別な物と一緒に入っていたりするのもあるから、重さは増えてるかもしれないわね。運ぶのは大変だと思うけど……村のためだから、頑張ってね!」


 重い袋と箱を重ねて持っている僕を応援するキヌサヤは、それほど重くなさそうな袋をひとつ抱えながら僕のそばを歩いていた。

 キヌサヤはもう少し持つと言ってくれたのだけど、ここは任せてよと僕自ら申し出た。

 倉庫の場所と、どこにどんな感じで置けばいいかを教えてもらうために、最初だけわざわざ一緒に来てもらっているという状況だったからだ。


「ここよ」


 倉庫は、かなりの広さがあった。

 大きな両開きの扉には、厳重に錠前と鎖が取りつけられていた。それを開けて中に入ると広い空間になっていて、奥のほうに箱や袋が積み上げられているのが見えた。

 もっとも、現状では倉庫の全体容量の十分の一も使われていない状態ではあったけど。


「とりあえず、奥から適当に置いていってね。箱とかを積み上げていくときは、奥にも入れるように通路になる部分は残しておいてくれると助かるわ」


 軽く指示を受けて、僕は荷物を倉庫に置いていく。

 と、そのとき。

 僕はなにか小さな物音を感じた。


 どこかの荷物が崩れたりでもしたのかな?

 ぱっと見た限り、それらしき形跡はなさそうだけど……。

 怪訝に思って周りを見渡していると、キヌサヤの声が僕の思考を遮った。


「ほんとは私も手伝えるといいのだけど、これからちょっと行くところがあるの。だから、あとはよろしくね。台所に置いてある箱と袋に×印を書いておいたから、それを全部ここに運んでくれればいいわ」

「了解!」

「それじゃあ、早く次の分もお願いね!」


 そう言うと、キヌサヤは僕の手を取って倉庫の外へ出た。

 笑顔で手を振り走り去るキヌッサラを見送り、僕もすぐに荷物運びに戻る。

 まだまだ何度も往復しなければならないわけだし、ここはいっちょ、頑張りますか。

 気合いを入れ直した僕は、来た道を駆け足で戻っていった。


 キヌサヤの家の台所に戻ると、×印の書いてある箱や袋は全部で十五個もあった。

 ふと見ると、台所の奥には木の扉がついていた。その奥がキヌサヤの部屋になっているようだ。


 ……今なら中に入ることもできるな……。

 ちょっと興味はあったけど、さすがにそんなことはしなかった。


 若干重く感じる体にムチ打って、ひたすら荷物を運んでいく。

 結局、台所の荷物全部を運ぶのに、最初の一回も含めて合計七回往復する羽目になってしまった。


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