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「突然すまなかった。急かして悪いとは思うのだが、事態が変わりそうでな。信じてもらえるまで、しばらく待つつもりだったが、そうも言っていられなくなった。今、ここで決断してほしい」
地下室に着くなり、全員が集まっている広間の前に連れていかれた僕の前で、シシトウは威厳のある強い声で言い放った。
「俺たちに協力してもらえないか? もし、やはり信用できないと言うのならば、それは仕方がない。とはいっても、この場でどうこうしたりはしないさ。フェアじゃないからな。そのときは抜け道から外まで出るのを追わないと約束しよう」
僕は……どうすればいいのか、決めあぐねていた。
僕を助けて親切にしてくれたキヌサヤ。彼女は村の知り合いに囲まれて、ごく普通に生活を送っているだけのように見えた。
でも、考えてみると怪しい部分もあった。
そして、シシトウたちに言われたからとはいえ、僕はキヌサヤを疑っている……。
「お願いします」
レタスが素直な瞳を向けてくる。
そのすぐ後ろでは、レタスのお兄さんも黙って頭を下げていた。
「昨日、計画と言っていましたよね。あなたたちは、なにをするつもりなんですか?」
少しでも状況を把握しないといけないと思い、核心に迫る質問をする。
「……細かくは言えないが……、一気にケリをつけるつもりだ。そのための準備を、レタスがやっている。それをキミにも手伝ってほしい」
「サワビ姫やキヌサヤに、危害を加えるようなことなの?」
僕はじっとシシトウの目を見据えながら聞いた。
「……危険はあるかもしれないが、姫たちを傷つけるつもりはない。ワサビ姫やキヌサヤだけで今回の件をすべて仕組んだとは思えないからな。なにかに操られているという可能性が高いだろうと考えている。その、すべての元凶となっているなにかを見つけ出し、それを断つ。それが俺たちの狙いだ」
「それは本心?」
「ああ」
答えるシシトウの目は、まっすぐだった。
今の言葉に嘘偽りない。それはよく伝わってきた。
「もうひとつ聞かせてほしい。もしも……元凶なんてなくて、姫やキヌサヤがすべてを首謀していたとしたら、どうする?」
「その場合は、どうにかして姫たちを正しい方向へ向かわせるように努力する」
「力づくで?」
「元凶となるようななにかがないのなら、姫たちの心の問題だろう。それならば、こちらも誠意を持って話し合う、それだけだ」
迷うことなく答えるシシトウ。
「アニキがキヌサヤちゃんに手を上げるわけないッスよ!」
「うるさい!」
レンコンの、場の空気を読まないツッコミを叱責するシシトウは、僕の質問に答えていたときの威厳のある表情とは打って変わって、真っ赤になった顔をさらしながら慌てていた。
基本的に真面目でシャイな人なんだな、シシトウって。
「……わかった。協力するよ。キヌサヤの様子が少しおかしいのは確かだと思っていたからね。でも全面的に信用したわけじゃない。それでもいいかな?」
「ああ、充分だ。よろしく頼む」
周りから、明るいどよめきが起こる。
「ありがとう!」
レタスも喜びを全身で表し、僕の腕に飛びついてきた。
後ろのお兄さんが鋭い目つきで睨んでいるように見えたけど、気にしないでおこう……。




