第20話 4章最終話 『再起の契約』
ニューヨーク――
SweetS Memories 本社会議室。
重い沈黙の中、ひとりの男が立っていた。
龍星。
かつて天才講師。
かつて裏切り。
そして挫折。
だが今、彼の目はまっすぐだった。
「俺は、独立したい」
室内がざわつく。
優ちゃんは静かに聞く。
「条件は?」
龍星は迷わない。
「SweetS Memoriesの子会社として」
「完全成果主義でいい」
「赤字を出したら……即クビで構わない」
空気が張りつめる。
◇
小春もオンラインで参加している。
画面越しに龍星を見る。
あの日、泣きながらSweetSに来た男。
弱さをさらけ出した男。
「本気なの?」
小春の問い。
龍星は頷く。
「逃げない」
「もう言い訳しない」
◇
優ちゃんは資料を閉じる。
「ブランド名は?」
龍星は答える。
「《Re:rise》」
“再び昇る”という意味。
沈黙の後――
優ちゃんが言う。
「いいだろう」
役員が驚く。
「ただし」
「3ヶ月連続赤字で即解任」
「資本はMemories51%」
「経営責任は全てお前」
龍星は即答。
「受けます」
◇
数週間後。
ニューヨーク・ソーホー地区。
小さな旗艦店がオープン。
看板はシンプル。
Re:rise。
初日の客足は少ない。
だが龍星は一皿一皿に魂を込める。
テーマは――
“再生”。
焦げたカラメルをあえて残したプリン。
割れたチョコを再構築したガトー。
失敗から生まれた味。
◇
SNSで徐々に話題に。
「物語があるスイーツ」
「涙出た」
売上は微増。
まだ黒字ではない。
ギリギリ。
◇
一方――
SweetS Memoriesは好調。
夏海の新シリーズがヒット。
欧州では雅が安定経営。
秋大のポーランド統括拠点も始動。
ルイの《R》はパリで伝説化。
SweetS帝国は拡大している。
◇
夜。
Re:rise閉店後。
龍星は一人、帳簿を見る。
赤字寸前。
だが、口元は笑っている。
「楽しいな」
◇
その頃。
小春は本社復帰初日。
社長室で静かに言う。
「みんな、それぞれの場所で戦ってる」
優ちゃんが微笑む。
「だから強い」
小春は窓の外を見る。
ニューヨークの夜景。
「SweetSは終わらない」
◇
ラストシーン。
Re:riseの売上グラフ。
赤字ライン、すれすれ。
そして最終営業日、数字が更新される。
黒字――わずか+0.3%。
龍星、天井を見上げる。
「まだ、生きてる」
第4章、完。
だが物語は続く。
甘く、苦く、熱く。
世界一を目指して。




