第19話 『Rの正体』
パリ――
深夜の倉庫街。
招待制。
住所非公開。
ドレスコード“黒”。
そこに集まるのは、世界の批評家、投資家、トップパティシエ。
噂のブランド――
《R》の極秘試食会。
◇
会場の中央。
スポットライトの下に立つ一人の男。
ルイ。
誰もが息を呑む。
SweetS幹部。
だが今夜は違う。
彼は静かに宣言する。
「これは企業のためのブランドじゃない」
「感情の限界を試す実験だ」
◇
提供された一皿目。
《Zero》
砂糖を極限まで削ぎ落としたムース。
甘さは“記憶”で感じる設計。
客たちがざわつく。
二皿目。
《Bitter Crown》
焦がしキャラメルと塩、黒胡椒。
成功の裏にある苦味を表現。
三皿目。
《Flight》
バターを使わず、空気と温度だけで作る軽さ。
批評家が立ち上がる。
「革命だ」
◇
ニューヨーク。
小春と優ちゃんの元にも映像が届く。
小春は静かに笑う。
「ルイらしい」
優ちゃんは腕を組む。
「独立する気だな」
◇
パリ。
試食会後。
欧州有名投資家がルイに近づく。
「全面出資したい」
ルイは即答しない。
「条件がある」
「SweetSと敵対しない」
その言葉に、投資家は驚く。
◇
同時刻。
SweetS Europe本社。
雅が報告を受ける。
「ルイが動いたか」
エレナが言う。
「脅威?」
雅は首を振る。
「違う」
「新しい風だ」
◇
ニューヨーク本社。
緊急役員会。
一部幹部が言う。
「利益相反です」
「処分すべき」
だが小春が遮る。
「ルイはSweetSを裏切らない」
「彼は、枠を壊してくれる存在」
沈黙。
優ちゃんが決断。
「Rは外部提携扱いとする」
「共存だ」
◇
翌朝、世界のニュース。
“謎のブランドR、パリを震撼”
株価が一時乱高下。
だが終値は上昇。
市場は期待している。
◇
ラスト。
ルイ、正式に《R》設立準備へ。
SweetSと戦わず、並び立つ道を選択。
秋大の欧州拠点計画も進行。
そして。
小春、ついに産休終了を決意。
「次は、私の番」
世界は甘くない。
だが、熱い。




