第11話 『若き王の誕生』
パリ――旧Lumière本社。
今は新しい名を掲げている。
SweetS Europe(旧Lumière Holdings)
巨大な会議室。
欧州幹部がずらりと並ぶ。
空気は重い。
買収された側のプライド。
若い経営陣への不信。
その壇上に立つのは――
神宮寺 雅。
まだ20代。
Butterfly所属の若手。
だが今日から肩書きは違う。
◇
ニューヨーク本社。
小春、優ちゃん、ルイがオンラインで見守る。
優ちゃんが静かに言う。
「決めたぞ」
ルイが横目で見る。
「本気でやらせるのか」
「甘やかさない」
小春が頷く。
「彼は“影”を越えた」
◇
パリ会議室。
発表。
「本日付で――」
「SweetS Europe 会長兼任社長に
神宮寺 雅を任命する」
ざわめき。
欧州幹部の一人が立ち上がる。
「若すぎる!」
「経営経験は?」
雅はゆっくり前へ出る。
震えはない。
「経験は足りません」
正直な言葉。
空気が止まる。
「でも」
「再建なら、誰よりも知っています」
Butterflyでの炎上。
兄の影。
世間の偏見。
「買収された会社の誇りを、壊さない」
「SweetSの魂も、曲げない」
まっすぐな目。
会議室が静まる。
◇
ニューヨーク。
優ちゃんが小さく笑う。
「俺より堂々としてる」
ルイが腕を組む。
「血か」
小春が優しく言う。
「努力」
◇
就任式。
欧州メディアが殺到。
“若き日本人経営者”
“買収企業トップに20代”
フラッシュが光る。
雅は短く宣言。
「SweetS Europeは、攻める」
「守りの再建はしない」
最初の決定。
・不採算店舗の大胆再編
・欧州限定Butterflyラボ設立
・現地若手抜擢制度導入
古参幹部は戸惑う。
だがスピードが違う。
◇
夜。
パリの屋上。
雅は一人、夜景を見る。
スマホにメッセージ。
優ちゃんから。
“社長、おめでとう”
雅は少しだけ笑う。
“兄貴にはまだ負けない”
送信はしない。
心の中だけ。
◇
ニューヨーク。
小春はお腹に手を当てる。
「この子が生まれる頃には」
「世界三極体制だね」
・SweetS本社(NY)
・Memories(NY)
・SweetS Europe
ルイが言う。
「敵なし、か」
その時――
欧州ニュース速報。
《旧Lumière幹部、内部反発声明》
内部反乱の兆し。
雅の試練は、始まったばかり。
◇
ラスト。
若き王、誕生。
だが王冠は、重い。




