第7話 『パリ、炎上』
フランス・パリ。
歴史あるイベントホール。
Butterfly初の海外ポップアップ当日。
長蛇の列。
メディアも集まる。
テーマは――
“再生と挑戦”
雅のメインデザート
《未完成タルト》
ルイは静かに厨房を見渡す。
「集中しろ」
◇
オープン30分前。
突然、スタッフが駆け込む。
「冷蔵機器が止まりました!」
会場ざわめき。
電圧トラブル。
冷却温度が上昇。
ムースが崩れ始める。
雅の顔が青ざめる。
「間に合わない……」
さらに追い打ち。
SNSに投稿。
“身内優遇ブランド、初日でトラブル”
一気に拡散。
優ちゃんの元に株価速報。
下落。
◇
パリ会場。
ルイが冷静に指示を出す。
「冷凍庫は?」
「足りません!」
「氷をかき集めろ。市場から買え」
無茶な指示。
だが動く。
Butterflyメンバー総動員。
雅は崩れかけたタルトを見つめる。
「俺のせいだ……」
その時。
ルイが低く言う。
「違う」
「トラブル込みでブランドだ」
「ここで折れたら、影のままだ」
雅の瞳が揺れる。
◇
開場時間。
完全な状態ではない。
だがルイが決断。
「出す」
スタッフが息を呑む。
雅は前に出る。
メディアの前。
「本日は機材トラブルがありました」
ざわつく会場。
「ですが」
「未完成がテーマです」
崩れた部分を逆手に取る。
その場でソースを追加。
ライブで仕上げる。
客席が静まる。
一口。
沈黙。
そして――
拍手。
「斬新!」
「ライブ感がすごい!」
予想外の反応。
未完成は、体験型へと進化。
◇
夜。
結果。
売上は予定比90%。
SNS評価は急上昇。
“トラブルを武器にしたブランド”
株価も下げ止まり。
優ちゃんはNYで安堵する。
「やったな、雅」
◇
会場外。
雅が深く息を吐く。
「怖かった」
ルイが言う。
「それでいい」
「怖さを知ってるやつが、強くなる」
雅は小さく笑う。
「兄貴、超えられるかな」
ルイは空を見る。
「超えなくていい」
「違う場所に立て」
その言葉が、雅の胸に刺さる。
◇
ニューヨーク。
小春はニュースを見て涙ぐむ。
「Butterfly、すごい……」
お腹に手を当てる。
その瞬間――
強い腹痛。
表情が変わる。
「……っ」
不安な音。
物語は、静かに次の嵐へ。




