第2話 『永遠のレシピ』
ニューヨーク、初夏。
SweetS本社の会長室。
小春は静かに書類に目を通していた。
そこへ、ノック。
「入っていい?」
優ちゃんだった。
昔と同じ声。
でも、今はSweetS Memoriesの会長兼社長。
肩書きは重いのに、笑顔はあの頃のまま。
「どうしたの?」
「今日は仕事じゃない」
優ちゃんは一つの小箱をテーブルに置いた。
小さな白い箱。
小春は、息を呑む。
◇
「俺さ」
優ちゃんは、少しだけ照れくさそうに笑う。
「ずっと隣にいたのに、一回もちゃんと言ってなかった」
小春の心臓が跳ねる。
「小春」
まっすぐな目。
逃げない視線。
「結婚しよう」
部屋の時計の音だけが響く。
甘い言葉でも、派手な演出でもない。
ただ、確かな温度。
◇
小春の目に涙が滲む。
離婚。
裏切り。
会社の危機。
世界進出。
いろんな嵐を越えてきた。
そのたび、優ちゃんは隣にいた。
支えるだけじゃない。
時には叱り、ぶつかり、守ってくれた。
「私でいいの?」
震える声。
優ちゃんは即答。
「小春じゃなきゃダメ」
箱を開ける。
シンプルなリング。
装飾は少ない。
でも内側には刻印。
“SweetS 0”
原点。
二人がまだ小さな厨房で夢を語った日。
◇
「……はい」
小春は泣きながら笑う。
その瞬間、世界が静かに祝福した。
◇
数週間後。
ニューヨーク郊外のガーデン。
身内だけの小さな式。
参列者は限られている。
Butterflyチーム。
Memories幹部。
SweetS幹部。
そして――
ルイ。
彼は一番後ろで静かに立っている。
祝福の拍手。
悔しさも、未練もないわけじゃない。
でも、それ以上に思う。
「幸せになれよ」
小さく呟く。
◇
誓いのキス。
歓声。
優ちゃんが言う。
「これからは、夫婦経営だな」
小春は笑う。
「会社は別だけどね」
Memoriesは優ちゃん。
SweetSは小春。
対等なパートナー。
依存じゃない。
支え合い。
◇
夜。
披露パーティー後。
二人きり。
優ちゃんが言う。
「俺たち、世界一の夫婦経営目指すか」
小春は微笑む。
「まずは、世界一幸せな家庭から」
Butterflyは羽ばたき始めた。
SweetSは再生し。
Memoriesは盤石。
そして――
新しい家族の物語も、始まる。




