第4章 「羽ばたく温度」 第1話 『Butterfly』
ニューヨーク。
SweetS Memories本社・最上階。
優ちゃんは一枚の資料を見つめていた。
新規プロジェクト名――
SweetS Butterfly
コンセプト:
“若手才能の発掘と育成に特化した革新ブランド”
大量展開でも、老舗継承でもない。
挑戦型ラボブランド。
期間限定メニュー。
若手職人の抜擢。
地域ごとの大胆な実験。
成功すれば、新しい柱。
失敗すれば、ただの赤字部門。
優ちゃんは静かに呟く。
「責任者は一人しかいない」
◇
翌日。
メキシコシティ支店。
ルイはスタッフと試作をしている。
そこへオンライン会議の通知。
画面に映る優ちゃん。
「NYに来い」
短い言葉。
◇
数日後。
ニューヨーク本社。
会議室に三人が揃う。
小春は静かに座っている。
優ちゃんが資料を差し出す。
「SweetS Butterfly」
ルイはページをめくる。
若手育成。
実験的ブランド。
世界各地でポップアップ展開。
「面白い」
率直な感想。
「で?」
優ちゃんがまっすぐ言う。
「責任者をやれ」
沈黙。
空気が変わる。
「……俺が?」
「世界一の肩書きより、今のお前のほうが向いてる」
完璧を失い、挫折を知り、現場を経験した。
“今”のルイ。
小春が静かに続ける。
「Butterflyは、失敗してもいいブランド」
「でも、挑戦しないのはダメ」
ルイは目を伏せる。
かつては頂点を目指した。
今度は“育てる側”。
「俺に、任せるのか」
優ちゃんは即答。
「任せる」
信頼。
それ以上でも以下でもない。
◇
ルイは深く息を吸う。
「条件がある」
二人が見る。
「現場の裁量、完全にくれ」
「数字だけで切るな」
優ちゃんが笑う。
「それがButterflyだ」
握手。
正式決定。
SweetS Memories 子会社
SweetS Butterfly
責任者:龍星ルイ
◇
社内発表。
若手職人たちがざわつく。
「龍星ルイがトップ?」
伝説の世界王者。
だが彼は静かに言う。
「ここでは肩書きは関係ない」
「作れ。壊せ。挑戦しろ」
目が燃えている。
かつての“完璧主義”ではない。
挑戦を許すリーダーの目。
◇
夜。
三人、屋上。
ニューヨークの風。
優ちゃんが言う。
「羽ばたけよ」
ルイは小さく笑う。
「飛び方は覚えてる」
小春は二人を見る。
恋でも元夫婦でもない。
でも、人生を共に切り開く仲間。
Butterflyは、まだ小さな羽。
だが、世界を変える可能性を秘めている。
◇
ラスト。
SweetS――再建安定。
Memories――堅実成長。
Butterfly――未知数。
そして初プロジェクトは――
“世界若手パティシエコンテスト開催”。
物語は、新世代へ。




