第20話 3章最終話 『原点の火』
ニューヨーク。
SweetS本社、緊急役員会。
スクリーンには赤い数字。
営業利益、大幅減。
在庫ロス増加。
品質クレーム増加。
株価は下落。
投資家の顔は冷たい。
「コストカットを」
「低価格ラインへ移行を」
小春は静かに立ち上がる。
「味は落としません」
空気が凍る。
「なら、どうする?」
誰もが見ている。
その時――
会議室の扉が開く。
龍星ルイ。
全員がざわめく。
「部外者は――」
優ちゃんが制する。
「話を聞こう」
◇
ルイは小春を見る。
そして、役員たちへ。
「問題は拡大じゃない」
「魂が薄くなった」
辛辣。
だが的確。
「効率を優先しすぎた。現場の声を拾ってない」
小春の胸に刺さる。
否定できない。
◇
沈黙の後。
小春が言う。
「三ヶ月、ください」
大規模リストラも価格改定もしない。
代わりに。
“再構築プロジェクト”
・全店舗レシピ再監修
・エリアごとの味再調整
・現場裁量拡大
・大量広告停止
投資家がざわつく。
「リスクが高い」
優ちゃんが口を開く。
「俺が保証する」
全員の視線が向く。
「Memoriesが利益で支える」
衝撃。
資産12兆円企業の後ろ盾。
「条件がある」
優ちゃんは続ける。
「上場延期」
短期株価より、長期ブランド。
小春は目を見開く。
「……いいの?」
優ちゃんは笑う。
「俺たち、何のために分けたと思ってる」
守るためだ。
◇
三ヶ月後。
ニューヨーク旗艦店。
メニュー一新。
量産感を削ぎ落とし、温度を戻す。
小春が厨房に立つ。
ルイが技術監修として短期参加。
優ちゃんは現場巡回。
三人、同じ空間。
だが役割は明確。
◇
客の反応が変わる。
「前より美味しい」
「丁寧になった」
売上は一気には戻らない。
だが、リピーターが増える。
レビューが改善。
株価は下げ止まり、ゆっくり回復。
◇
夜。
屋上。
三人並ぶ。
マンハッタンの風。
「危なかったな」
ルイが呟く。
小春は笑う。
「うん」
優ちゃんが続ける。
「でも、崩れたから分かった」
大きくなることと、失うこと。
守ることと、攻めること。
三人がいる意味。
◇
小春が静かに言う。
「SweetSは、世界を目指す」
「Memoriesは、心を守る」
「そして」
少し間を置いて。
「人は、一人じゃ世界に勝てない」
ルイは空を見上げる。
優ちゃんは頷く。
恋の形は変わった。
でも。
信頼は、形を変えて続いている。
◇
ラスト。
SweetS、本格的再建へ。
Memories、安定成長。
ルイ、新プロジェクトを密かに構想。
そして物語は――
第4章へ。




