第18話 『分かれて、守る』
ニューヨーク本社。
上場準備会議は、最終局面に入っていた。
投資家からの要望。
・創業者ストーリーの前面化
・急速拡大
・高級ラインへの特化
小春は静かに言う。
「わたしは、顔にならない」
会議室が凍る。
優ちゃんが小さく息を吐く。
「理由は?」
「SweetSは“物語商法”じゃない」
「味で勝ちたい」
強い目。
◇
数日後。
臨時取締役会。
小春が提案する。
「経営体制を分けます」
ざわめき。
SweetS本体は――
グローバル拡大・上場路線。
そして新たに設立する子会社。
SweetS Memories
小規模店舗、地域密着、物語と温度を大切にするブランド。
量ではなく“心”に残る店。
◇
発表。
体制変更。
■ SweetS Holdings
会長兼任社長:一ヶ原小春
■ SweetS Memories(子会社)
会長兼任社長:優ちゃん
優ちゃんが驚く。
「俺が、Memories?」
小春は微笑む。
「あなたは人を見るのが上手い」
「大きくするより、守る方が向いてる」
核心を突かれる。
優ちゃんはしばらく黙り、そして笑う。
「やられたな」
◇
二人きりの夜。
オフィスの灯り。
「距離、できるぞ」
優ちゃんが言う。
「うん」
「後悔しないか?」
小春は首を振る。
「一緒にいるために、分かれるの」
経営の方向性が違うなら、無理に合わせない。
それでも信頼はある。
それが今の二人の形。
◇
メキシコ。
ルイはニュースを見る。
《SweetS 経営分離》
小さく笑う。
「らしいな」
無理に混ぜない。
壊れる前に構造を変える。
それが彼女の強さ。
◇
ニューヨーク。
記者会見。
小春が言う。
「SweetSは“世界へ”」
「SweetS Memoriesは“あなたの隣へ”」
拍手。
株価は安定。
投資家は拡大路線を評価。
同時に、Memoriesは地域ブランドとして静かに支持を集める。
◇
夜。
二人、別々のオフィス。
同じ街の空。
小春は世界地図を見つめる。
優ちゃんは小さな新店舗の設計図を見る。
道は分かれた。
でも、背中は預けている。
◇
ラスト。
SweetSはグローバル企業へ加速。
SweetS Memoriesは心のブランドへ。
そして――
ニューヨークの空港に降り立つ一人の男。
龍星ルイ。
再び、三人が同じ都市に揃う。




