第16話 『次の都市、次の野望』
メキシコシティ。
SweetS México – Fuego は連日満席。
チリショコラは現地メディアで特集され、
売上は予想の2.3倍。
数字を見つめる優ちゃんが言う。
「軌道に乗ったな」
ルイは静かに頷く。
「スタッフも育ってきた」
もう“世界一の元王者”ではない。
店長、龍星ルイ。
現場のトップ。
目は、前を向いている。
◇
本社会議。
優ちゃんが新しい地図を広げる。
赤い丸がつく都市。
――ニューヨーク。
「次はここだ」
世界の金融と流行の中心。
成功すれば、ブランド価値は跳ね上がる。
失敗すれば、致命傷。
小春は深呼吸する。
「行こう」
迷いはない。
◇
数週間後。
発表。
《SweetS、NY進出決定》
同時に――
大型ファンドからの投資決定。
資金調達成功。
企業評価額は一気に跳ね上がる。
優ちゃんの交渉力が光る。
「攻めるなら今だ」
◇
メキシコ空港。
小春と優ちゃんが出発前。
ルイが見送りに来る。
短い沈黙。
「任せる」
優ちゃんが言う。
ルイは真っ直ぐ返す。
「任せろ」
小春は少しだけ寂しさを感じる。
でも今は、感傷に浸る時間はない。
それぞれの役割。
それぞれの都市。
◇
ニューヨーク。
摩天楼。
スピード。
情報量。
SweetS New York 店舗予定地。
ブルックリンの再開発エリア。
小春は街を歩きながら呟く。
「ここは……甘くないね」
競合は超一流。
流行の回転も早い。
“可愛い”だけでは通用しない。
◇
オープン戦略。
・日本×メキシコ融合シリーズ
・ヘルシー路線の低糖質ライン
・SNS映え特化商品
優ちゃんは投資資金を大胆に投下。
PR会社、インフルエンサー契約、大規模広告。
「勝ちに行く」
◇
オープン初日。
行列は…普通。
だが三日目。
有名フードブロガーが投稿。
「Unexpectedly addictive」
拡散。
一週間でバズる。
売上、急上昇。
投資家も評価を上方修正。
企業価値、さらに上昇。
SweetS、グローバルブランドとして確立。
◇
夜。
ニューヨークの高層ビル。
優ちゃんが売上グラフを見て笑う。
「いける」
小春は窓の外を見る。
成功している。
でも、どこか少し空白。
メキシコの厨房で笑うルイの姿が、頭をよぎる。
その頃。
メキシコ。
ルイはスタッフと新メニューを試作中。
笑っている。
居場所を作っている。
◇
ラスト。
SweetS
メキシコ成功。
ニューヨーク急成長。
投資資金で売上爆増。
三人は、それぞれの都市で戦っている。
だが距離は、物理的にも心も広がっている。




