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スイーツアカデミー恋愛物語~世界へ駆けろ!目指すは、世界一!  作者: 優貴(Yukky)


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第14話 『王者の涙』

パリ。

突然のニュースが駆け巡る。

《Lumière Paris、閉店発表》

世界大会優勝から、わずか半年。

王者の店が、幕を下ろす。

理由は――赤字。

観光客頼みの立地。

高価格帯。

優勝直後の過剰投資。

そして、何より。

「世界一」の称号が、逆に重荷になった。

期待値が高すぎた。

一皿でも完璧でなければ、酷評。

SNSは残酷だ。

“過去の優勝者”と比較され続ける日々。

ルイは、削られていった。

閉店当日。

厨房は静まり返る。

最後の営業を終え、スタッフが去る。

一人残るルイ。

カウンターに手をつき、うつむく。

世界一になったのに。

守れなかった。

何を目指していたのか、分からなくなる。

数日後。

SweetSパリ店。

閉店後の静かな時間。

ドアベルが鳴る。

小春が顔を上げる。

そこに立っていたのは――ルイ。

髪は乱れ、目の下に影。

王者の面影は薄い。

小春は何も言わない。

ただ、厨房の奥へ通す。

しばらく沈黙。

ルイがぽつりと漏らす。

「終わった」

声が、かすれている。

「全部」

小春は静かに紅茶を置く。

「ニュース、見たよ」

ルイは笑おうとするが、崩れる。

「世界一になったのに」

「店、潰した」

拳が震える。

「俺、何やってたんだろうな」

その瞬間。

涙が落ちる。

王者の涙。

悔しさでも怒りでもない。

“自信の喪失”。

小春は何も慰めない。

ただ言う。

「作って」

ルイが顔を上げる。

「……は?」

「今のあなたの味」

勝者でもなく、敗者でもなく。

今の、裸の味。

ルイはゆっくり立ち上がる。

SweetSの厨房。

かつて隣に立った場所とは違う。

でも火の音は同じ。

材料を選ぶ手が、少し震える。

派手さは捨てる。

シンプルなショコラ。

甘さ控えめ。

ほんの少しの塩。

焼き上がる香り。

小春が一口食べる。

目を閉じる。

そして、微笑む。

「おいしい」

飾りじゃない。

本音。

「前より、優しい」

ルイの肩が震える。

「……怖かった」

完璧でなければいけない。

世界一でなければいけない。

その鎧が、今ようやく外れる。

その時。

扉が開く。

優ちゃん。

一瞬、空気が止まる。

状況は察する。

泣き腫らしたルイ。

隣に立つ小春。

数秒の沈黙。

優ちゃんはゆっくり言う。

「飯、食ってくか?」

敵でも元夫でもない。

今は、ただの落ちた職人。

ルイは目を見開く。

そして、小さく頷く。

三人、同じテーブル。

不思議な静けさ。

ルイがぽつりと呟く。

「俺、もう一回やれるかな」

小春は即答しない。

優ちゃんが言う。

「やれるかじゃない。やるかだ」

経営者の目。

逃げ場は与えない。

小春は静かに続ける。

「あなたの味は、消えてない」

「場所がなくなっただけ」

ルイは目を伏せる。

そして、深く息を吸う。

ラスト。

パリの夜。

閉店したLumièreの看板が外される。

一方、SweetSの灯りは消えない。

王者は、地に落ちた。

でも。

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