第13話 『パリ、再び』
速報が世界を駆け巡る。
《龍星ルイ、世界大会優勝》
ついに――
彼は世界一になった。
会場はパリ。
歓声の中、トロフィーを掲げるルイ。
その目は、静かだった。
かつて誰かと見た夢を、
今は一人で掴んだ。
◇
シンガポール。
SweetS本社。
ニュースを見た小春は、しばらく無言だった。
優ちゃんがそっと言う。
「取ったな」
小春は小さく笑う。
「うん」
胸が熱い。
悔しさではない。
誇らしさでもない。
ただ――
“やっぱりあの人はすごい”
という、純粋な感情。
◇
数日後。
優ちゃんが新たな資料を差し出す。
「パリ、行くぞ」
「……え?」
SweetSヨーロッパ進出計画。
第一拠点――フランス・パリ。
高級路線ではなく、“日常の贅沢”市場を狙う。
「タイミングは今だ」
世界大会優勝で、パリはスイーツ熱が高まっている。
波に乗る。
小春は一瞬迷う。
そこは、ルイが今いる場所。
だが。
逃げない。
「やろう」
即答。
◇
パリ。
石畳。
甘い香り。
そして、世界中のパティスリー。
SweetSのポップアップ店舗がオープンする。
抹茶、柚子、塩キャラメル。
“Japanese delicate sweetness”
初日はまずまず。
だが、現地の評論家が辛辣なレビューを書く。
「美しいが、フランスの歴史には及ばない」
売上は伸び悩む。
◇
ある日。
小春は視察中、見覚えのある店の前で足を止める。
大きな看板。
Lumière Paris
オーナー:龍星ルイ。
胸が静かに波打つ。
入るか、入らないか。
その時。
扉が開く。
目が合う。
時間が止まる。
◇
「……久しぶりだな」
ルイは、優勝者の風格を纏っていた。
でも、声は変わらない。
「おめでとう」
小春は自然に言える。
少しだけ笑うルイ。
「ありがとう」
沈黙。
過去の重みはある。
でも、敵意はない。
◇
「SweetS、来てるの知ってる」
ルイが言う。
「フランスは甘くないぞ」
挑発ではない。
忠告。
小春はまっすぐ返す。
「知ってる」
「でも、通用させたい」
火花。
職人としての会話。
◇
その夜。
優ちゃんに報告。
「会ったよ」
一瞬、空気が止まる。
だが優ちゃんは落ち着いている。
「で?」
「強い」
正直な感想。
優ちゃんは苦笑する。
「そりゃ世界一だ」
そして真剣な目になる。
「でも、俺たちは会社だ」
ブランド力、資本力、戦略。
勝負の土俵が違う。
◇
ラスト。
ルイ、パリで王者として君臨。
小春、挑戦者として乗り込む。
優ちゃん、経営戦略を練る。
恋は終わった。
でも。
世界の中心・パリで、
“職人”としての再戦が、静かに始まる。




