第12話 『逆転の一手』
シンガポール店、苦戦。
新シリーズは一定の反応を得たものの、
爆発的ヒットには届かない。
資金は削られ、投資家からの圧も強まる。
会議室の空気は重い。
「追加融資は難しい」
「撤退も視野に」
数字が冷酷に並ぶ。
小春は唇を噛む。
理想だけでは、会社は守れない。
◇
その夜。
優ちゃんは一人、ノートパソコンを開く。
彼は元々、地方で複数のカフェを立て直してきた再建屋。
数字とブランド価値を見る目は鋭い。
画面に映るのは――
経営難に陥っている現地の老舗スイーツブランド。
創業40年。
味はある。
だが、時代に取り残された。
「……これだ」
優ちゃんの目が光る。
◇
翌日。
小春に提案する。
「買収する」
「え?」
「SweetS単体で戦うんじゃない」
現地で“信用”をすでに持っているブランドを取り込む。
そして――
コラボカフェを立ち上げる。
SweetSの繊細さ × 老舗のボリュームと甘さ。
「ハイブリッド戦略だ」
◇
買収交渉。
相手は頑固な創業者一族。
「若い日本人にブランドは渡せない」
最初は門前払い。
だが優ちゃんは引かない。
数字、将来設計、従業員の雇用維持案。
三日三晩、資料を作り込む。
そして最後に言う。
「あなたの味を、世界に残したい」
その一言で、空気が変わる。
◇
――買収、成立。
記者会見。
《SweetS、現地老舗ブランド買収成功》
株価回復。
投資家の評価が一変。
◇
そして一ヶ月後。
新店舗オープン。
SweetS × Heritage Café
店内はモダンとクラシックの融合。
小春が開発した新商品。
“濃厚ココナッツ抹茶ケーキ”
“トリプルキャラメル・ボルケーノ”
甘さは大胆。
でも後味は繊細。
試食した客が目を見開く。
「This is different. But good!」
行列ができる。
SNSで拡散。
一週間で完売続出。
売上、V字回復。
◇
深夜の店内。
小春が優ちゃんに言う。
「すごいね、社長」
優ちゃんは苦笑する。
「俺は土台を作っただけ」
「味は会長の力だ」
二人、静かにハイタッチ。
経営と職人。
初めて、完璧に噛み合った瞬間。
◇
東京。
ルイはニュースを見つめる。
《SweetS、海外で再評価》
唇がわずかに緩む。
「やるな」
そして自分もまた、世界大会決勝を控えている。
彼も、負けていない。
◇
ラスト。
SweetS、アジア展開加速。
優ちゃん、次はパリ進出を計画。
小春、世界基準の味覚をさらに研究。
ルイ、世界大会決勝へ。
舞台は、いよいよ世界規模。
恋は安定。
だが、成功の裏で“新たな影”が動き始める!




