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スイーツアカデミー恋愛物語~世界へ駆けろ!目指すは、世界一!  作者: 優貴(Yukky)


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第9話 『世界からの招待状』

東京。

深夜の厨房。

ルイは一人、新作のムースを仕上げていた。

そこへ届く一本のメール。

差出人――

World Culinary Association

件名:

《International Pâtisserie Masters 招待》

ルイの手が止まる。

それは、世界中のトップパティシエだけが立てる舞台。

優勝すれば、事実上の“世界一”。

五年前、彼が目指し、そして失った場所。

静かな厨房に、自分の鼓動だけが響く。

翌朝。

スタッフがざわつく。

「オーナー、これ本当ですか?」

「海外移籍って…?」

記事が出たのだ。

《龍星ルイ、パリの三ツ星店から正式オファー》

店を空けるのか。

移籍するのか。

それとも日本に残るのか。

決断を迫られる。

一方、海辺。

小春は優ちゃんと新メニューの試作中。

季節限定“塩キャラメルタルト”。

オーブンから甘い香り。

そこへスマホ通知。

ニュース記事。

ルイの顔写真。

世界大会、海外移籍の文字。

小春の動きが止まる。

優ちゃんは気づく。

「行くんだな、あいつ」

小春は何も言えない。

胸が、ざわつく。

もう夫ではない。

でも、かつて一緒に夢を見た人。

世界一を目指した人。

夜。

ルイは一人、都内の高台に立つ。

パリに行けば、評価は戻る。

名誉も、称号も。

でも。

“逃げる”形になるのか。

日本で崩れた信用を置き去りにして。

スマホが鳴る。

非通知。

出る。

無言。

そして、聞き慣れた声。

「おめでとう」

小春。

一瞬、息が止まる。

「……見たのか」

「うん」

少し沈黙。

波の音が向こうから聞こえる。

「行くの?」

真っ直ぐな問い。

ルイは夜景を見つめる。

「まだ決めてない」

本音だった。

小春は静かに言う。

「あなたは、逃げる人じゃないよ」

優しくも、突き放すような声。

「どこにいても、あなたはあなたの味を作る」

励ましでも、未練でもない。

ただ事実。

それが一番刺さる。

通話が切れる。

ルイは目を閉じる。

(俺は、どこで戦う?)

数日後。

会見。

フラッシュ。

記者たち。

「海外移籍は?」

「世界大会出場は?」

ルイはマイクを握る。

静まり返る会場。

「――日本で戦います」

ざわめき。

「海外には行かない」

逃げない。

ここで評価を取り戻す。

ここで世界に挑む。

海辺の店。

ニュース速報。

優ちゃんがテレビを見る。

小春は静かに立ち尽くす。

「日本で戦う、か」

優ちゃんは苦笑する。

「あいつらしいな」

小春は胸の奥が熱くなるのを感じる。

誇らしさ。

そして、少しの不安。

これからまた、同じ舞台に立つ。

完全に切れたはずの糸が、

もう一度張りつめる。

ラスト。

ルイ、厨房で火を入れる。

小春、オーブンの前で目を閉じる。

優ちゃん、静かに二人を見守る覚悟を決める。

世界大会、日本予選まであと三ヶ月。

恋も、夢も、もう逃げ場はない。

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