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スイーツアカデミー恋愛物語~世界へ駆けろ!目指すは、世界一!  作者: 優貴(Yukky)


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第2話 『居残りの約束』

放課後。

教室のざわめきが消え、校舎に静けさが戻る。

小春は鞄を持ったまま、実習室の前で立ち止まっていた。

(……やっぱり、もう一回作りたい)

今日の苺のムース。

褒めてもらえた。

でも、納得はしていない。

もっと、なめらかにできたはず。

もっと、想いを込められたはず。

小さく息を吸う。

そして、白衣姿の背中に声をかけた。

「龍星先生……」

振り向く、鋭い視線。

若き天才講師――龍星先生は、静かに小春を見る。

「なんだ」

「放課後……少しだけ、厨房をお借りできませんか」

一瞬、沈黙。

「理由は」

「今日のムース、作り直したいんです。自分で、納得したくて」

声は小さい。

でも、逃げていない。

龍星先生の目が、わずかに細まる。

「……一時間だ」

ぱっと顔が明るくなる。

「ありがとうございます!」

「勘違いするな。努力する生徒は嫌いじゃないだけだ」

そう言いながら、ほんの少しだけ口元が緩んだ。

実習室。

夕陽が差し込み、ステンレス台をオレンジ色に染める。

小春は静かに材料を並べる。

泡立て器を持つ手は、今度は震えていない。

(さっきより、丁寧に)

そのとき。

「本当にやるんだ」

後ろから声。

振り向くと、ルイが立っていた。

「帰ったんじゃ……」

「忘れ物」

短い返事。

でも、そのまま帰らない。

壁にもたれ、じっと見ている。

「緊張、してないのか」

「……してます」

正直に答える。

「でも、好きなんです。お菓子作るの」

小春は苺を潰しながら続ける。

「失敗しても、また作れるから」

ルイの視線が、少しだけ柔らぐ。

「普通は、才能があるやつが残る世界だ」

「そうかもしれません。でも」

小春はまっすぐ前を向く。

「わたしは、諦めない人が残る世界だって思いたいです」

空気が、静かに変わる。

ルイはゆっくり近づき、ボウルの中を覗き込む。

「……温度、下げすぎ」

「え?」

「冷やしすぎると固さが均一にならない」

まただ。

今日、二回目。

助けられている。

「どうして……教えてくれるんですか」

ぽつりと聞く。

ルイは少し黙ってから言った。

「負けるなら、強いやつがいい」

小春は一瞬きょとんとする。

それから、ふわっと笑った。

「じゃあ、わたし強くなりますね」

「……簡単に言うな」

でも、その声はどこか楽しそうだった。

完成したムース。

さっきよりも、なめらかで、優しい口当たり。

小春は小さく息を吐く。

「どうだ」

ルイがスプーンを手に取る。

ひとくち。

沈黙。

心臓が跳ねる。

「……さっきよりいい」

それだけ。

でも十分だった。

「ありがとうございます」

小春はぺこりと頭を下げる。

夕陽が二人を包む。

静かで、甘い時間。

その様子を、少し離れた場所から見ている影があった。

腕を組んだ少女――ルナ。

「へぇ……転校生、やるやん」

唇を少しだけ歪める。

「でも、ルイの隣は簡単やないで」

静かなライバル心が、芽を出す。

夢も、恋も、まだ始まったばかり。

でも確かに。

距離は、少しだけ縮まった。

甘さは、ゆっくり溶ける。

――つづく

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