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スイーツアカデミー恋愛物語~世界へ駆けろ!目指すは、世界一!  作者: 優貴(Yukky)


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第6話 『焦土から』

東京。

《Lumière》。

かつては“理想の夫婦店”と呼ばれた場所。

今は、龍星ルイひとり。

客足は、目に見えて減っていた。

ネットの評価は割れる。

《小春がいないと味が冷たい》

《完成度は高い。でも心に残らない》

氷の天才。

その肩書きが、やけに重い。

慰謝料は支払った。

スポンサー契約もいくつか解消。

美咲の件は企業側が謝罪し、処分も出た。

だが信用は、簡単には戻らない。

「オーナー、来月の売上予測です」

副シェフが資料を差し出す。

数字は赤字目前。

ルイは静かに受け取る。

「……縮小する」

驚きが走る。

「店舗、半分閉める」

見栄は張らない。

守るべきは、店の“質”。

一方、海辺。

《Atelier Haru》。

小さな工房兼カフェ。

オープン初日。

派手な宣伝はない。

でも、常連客がじわじわ増えている。

SNSで広がる言葉。

《素直な味》

《泣けるケーキ》

小春は忙しく動く。

汗をかきながら、笑っている。

優ちゃんが皿を運ぶ。

「行列できてる」

「うそ?」

「ほんと」

小春は少しだけ照れた笑み。

世界一のときより、今のほうが実感がある。

東京。

閉店後の《Lumière》。

ルイは一人、厨房に立つ。

豪華な素材を並べる。

だが、手が止まる。

(違う)

高級であることが、目的になっていた。

完璧であることが、優先だった。

原点は、何だ?

小春は言っていた。

“人の心を救える味”

自分は、いつから“評価を取る味”になった?

冷蔵庫を閉じる。

高級食材を片付ける。

代わりに取り出したのは――

バター、小麦粉、卵。

シンプルな材料。

「……マドレーヌ」

あの日、海辺で食べた素朴な味を思い出す。

負けたときの味。

失ったときの味。

焼き上がり。

一口。

沈黙。

目を閉じる。

派手さはない。

でも、確かに温かい。

「……これか」

初めて、自分のために作った味。

誰かの期待でも、世間の評価でもない。

ただ、自分の原点。

翌日。

《Lumière》は大胆な発表をする。

“高級路線からの転換”

デセールコースを縮小。

日常菓子の新ライン開始。

記者がざわつく。

「ブランドイメージが崩れますよ?」

ルイは淡々と答える。

「崩れているのは、もう知っている」

隠さない。

虚勢も張らない。

ゼロからやり直す。

海辺。

小春の店に、ひとりの女性客。

都会的な雰囲気。

ケーキを一口食べ、涙ぐむ。

「……救われました」

その言葉に、小春の胸が熱くなる。

(これが、やりたかったこと)

優ちゃんがそっと言う。

「世界一より、すごい顔してる」

小春は笑う。

でも、その笑顔の奥に、

まだ消えていない影がある。

完全には、割り切れていない。

夜。

東京。

ルイのスマホに、ニュース通知。

《Atelier Haru、口コミ急上昇》

写真に映る、小春の笑顔。

ルイはしばらく画面を見つめる。

苦い。

でも、誇らしい。

「……負けない」

恋ではなく、

職人として。

ラスト。

二つの厨房。

別々の場所。

別々の道。

でも、同じ時間にオーブンの灯りがつく。

まだ交わらない。

でも、終わっていない。

第三章は、再構築の章へ。

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