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スイーツアカデミー恋愛物語~世界へ駆けろ!目指すは、世界一!  作者: 優貴(Yukky)


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第5話 『わたしの温度』

東京。

区役所の窓口。

小春は、静かにペンを置いた。

離婚届。

正式受理。

一ヶ原小春は、もう龍星ルイの妻ではない。

手続きは淡々と終わる。

紙一枚。

でも、五年の結婚が終わった。

その足で、弁護士事務所へ。

慰謝料請求。

金額は決して小さくない。

記者会見で真実は出た。

罠だった部分もある。

でも。

「精神的苦痛は、事実です」

弁護士の言葉に、小春は頷く。

復讐じゃない。

清算。

愛の終わりを、曖昧にしないため。

海辺。

優ちゃんは何も聞かない。

小春が戻ると、ただコーヒーを出す。

「終わったよ」

短い報告。

優ちゃんは一瞬目を閉じて、

「そっか」

それだけ。

祝福もしない。

同情もしない。

隣に座る。

その距離が、今の小春にはちょうどいい。

東京。

ルイのもとに通知が届く。

離婚成立。

慰謝料請求書。

数字を見ても、顔色は変わらない。

「払います」

即答。

側近が言う。

「争えば減額できます」

ルイは首を振る。

「彼女が選んだなら、受け入れる」

お金で済む話じゃない。

でも、逃げない。

それがせめてもの誠意。

数日後。

《Lumière》の記者会見。

壇上に立つのは、ルイ一人。

「共同経営者の一ヶ原小春は、本日付で退任しました」

ざわめき。

「彼女の功績は消えません」

一礼。

潔い。

でも、空っぽ。

海辺。

小春はエプロン姿。

優ちゃんと一緒に、カフェの裏スペースを改装している。

「本気なの?」

優ちゃんが聞く。

「うん」

小春は笑う。

「わたし、自分の名前でやり直す」

世界一でもなく、誰かの妻でもない。

“わたし”の店。

コンセプトは――

“正直な味”。

嘘を混ぜない。

無理をしない。

傷も、弱さも、隠さない。

夜。

二人で試作。

シンプルなショートケーキ。

優ちゃんが一口食べる。

「……優しいな」

小春は首を振る。

「違うよ」

もう、ただ優しいだけじゃない。

「強い甘さ」

自分を守る甘さ。

ふと、優ちゃんが言う。

「俺、待つって言ったよな」

小春が止まる。

「うん」

「今すぐじゃなくていい」

視線はまっすぐ。

「でも一緒に進みたい」

恋人になれと言わない。

支えたい、と言う。

小春は、ゆっくり息を吐く。

龍星との激しい恋。

世界の舞台。

それとは違う温度。

穏やかで、でも確かな熱。

「……一緒にやろう」

答えは恋じゃない。

でも、拒絶でもない。

新しいスタート。

ラスト。

東京の高層ビル。

ルイは一人、厨房で立つ。

慰謝料の振込完了通知。

左手に指輪はない。

作りかけのデセール。

一口。

苦い。

「……当然だ」

自嘲する。

愛を失った味。

海辺。

看板が掲げられる。

《Atelier Haru》

オーナー

一ヶ原小春。

隣に立つ、優ちゃん。

波の音。

甘くて、ほろ苦い。

でも、前を向いた味。

第三章――

愛は終わったのか。

それとも、形を変えたのか。

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