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スイーツアカデミー恋愛物語~世界へ駆けろ!目指すは、世界一!  作者: 優貴(Yukky)


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第3章 「崩れる温度」 第1話 『溶けない嘘』

《Lumière》は順調だった。

世界一となった小春とルイ。

夫婦として、パティシエとして、理想の二人。

――表向きは。

それに気づいたのは、ほんの些細な違和感だった。

深夜の帰宅。

増えた出張。

スマホを伏せる癖。

「忙しいだけ」

そう思おうとした。

信じたかった。

でも。

ある日、週刊誌の見出しが目に飛び込む。

《氷の天才パティシエ、謎の美女と深夜密会》

写真。

そこに写っていたのは――

龍星ルイ。

知らない女性。

寄り添う距離。

言い訳できない角度。

店の厨房。

オーブンの熱がやけに遠い。

スタッフの声が、霞む。

「……オーナー?」

小春は笑った。

「大丈夫」

でも、ナッペしていたクリームが崩れる。

手が震える。

(温度が、わからない)

愛は逃げない。

そう言ったのは、彼だ。

その夜。

「本当?」

小春は、写真をテーブルに置いた。

ルイは沈黙。

数秒。

その沈黙が、答えだった。

「仕事の関係だ」

「嘘」

即答。

五年遠距離でも揺れなかった勘が、告げる。

これは、裏切り。

「一度だけだ」

その一言が、胸を裂いた。

一度。

回数の問題じゃない。

温度の問題。

翌日。

小春は店に立たなかった。

スタッフに一言だけ告げる。

「少し休みます」

そして荷物をまとめる。

指輪を外す。

静かに、机に置く。

向かったのは、地元の海辺。

幼なじみの優ちゃんが営む小さなカフェ。

ドアベルが鳴る。

「……小春?」

優ちゃんはすぐに異変に気づく。

「泣いた?」

小春は首を振る。

でも涙が落ちる。

全部、話した。

写真も、会話も、沈黙も。

優ちゃんは怒らなかった。

ただ静かに言った。

「小春は、どうしたい?」

責めない。

決めさせる。

夜の海。

波の音。

小春は考える。

五年間の遠距離。

約束。

プロポーズ。

一緒に作った店。

全部、本物だった。

でも。

裏切りも、本物。

(わたしは……)

愛は温度。

その温度が、冷えた。

一度冷えたチョコレートは、溶かせば戻る。

でも、前と同じ味にはならない。

翌朝。

小春は優ちゃんに言う。

「離婚、する」

声は震えていない。

泣き腫らした目でも、芯は強い。

「店も、辞める」

「全部、手放すの?」

優ちゃんが問う。

小春は頷く。

「今のままじゃ、嘘の味しか作れない」

救いたいと言っていた自分が、

自分を救えないなんて、嫌だ。

東京。

ルイは空の自宅に立ち尽くす。

テーブルの上。

指輪。

そして、一枚の紙。

離婚届。

署名済み。

メッセージはない。

言葉もない。

ただ――

温度が、消えている。

ラストカット。

海辺のカフェ。

エプロン姿の小春。

小さなオーブンで焼く、素朴なマドレーヌ。

世界一でもない。

華やかでもない。

でも。

まっすぐな味。

第三章。

愛は再生できるのか。

それとも、完全に終わるのか。

――次回。

龍星、初めて崩れる。

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