表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スイーツアカデミー恋愛物語~世界へ駆けろ!目指すは、世界一!  作者: 優貴(Yukky)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/84

第17話 『届かない温度』

一年後。

再びパリ。

個人戦前夜。

ホテルのロビーで、小春とルイは久しぶりに真正面で向き合う。

一年ぶり。

隣にいない日々は、想像以上に長かった。

「変わったな」

ルイが言う。

「……ルイくんも」

小春は笑う。

でも、どこかぎこちない。

距離がある。

物理的ではなく、温度の距離。

修行の一年。

小春は、何度も壁にぶつかった。

甘すぎる、と否定され。

優しすぎる、と切り捨てられ。

泣いて、削って、作り直した。

そして気づいた。

“優しいだけでは、人の心は救えない”と。

甘さには、芯が必要だ。

その芯を、ようやく掴みかけている。

ルイもまた、変わっていた。

以前より鋭く。

以前より冷静で。

隙がない。

世界三つ星の厨房で、感情を削り落としたような空気。

小春の胸が、少し痛む。

(遠くなった……?)

翌日。

個人戦テーマ発表。

「Rebirth(再生)」

会場がざわつく。

再生。

失敗からの復活。

過去を越える味。

小春は静かに目を閉じる。

一年間の涙。

否定。

孤独。

それら全部が、今の自分を作った。

ルイも、無言で材料を選ぶ。

二人は、もうチームではない。

敵。

真正面から、ぶつかる。

小春の構成。

焦がしキャラメルの苦味。

柑橘の酸味。

最後に広がる、柔らかな蜂蜜の甘さ。

壊れても、また立ち上がる味。

ルイは対照的。

極限まで削ぎ落とした一皿。

白。

静寂。

一口で衝撃が走る構成。

感情を爆発させない。

制御された再生。

制限時間残り三分。

小春のソースが、わずかに分離する。

焦り。

(ダメ……!)

手が震える。

その瞬間、視線を感じる。

ルイ。

何も言わない。

でも、目だけで伝える。

“立て直せ”

小春は深呼吸。

温度を下げる。

ゆっくり、ゆっくり混ぜる。

再生。

自分のテーマ。

立て直せる。

ソースは、滑らかに戻る。

試食。

会場は緊張に包まれる。

小春の皿。

審査員が一口。

眉が動く。

「Bittersweet…」

ほろ苦い。

「But strong.」

強い。

次に、ルイ。

静寂。

一口で空気が変わる。

「Minimal… but emotional.」

削ぎ落とされた中の感情。

観客席がざわめく。

結果発表前。

控室。

小春は笑う。

「楽しかったです」

ルイが少し驚く。

「負けるかもしれないのにか」

「はい」

小春はまっすぐ言う。

「今のわたしで、戦えたから」

その言葉に、ルイの視線が揺れる。

「……俺もだ」

発表。

名前が呼ばれる。

優勝――

ルイ。

歓声。

拍手。

小春は一瞬だけ目を閉じる。

悔しい。

でも。

(届いた)

去年より、確実に近づいた。

ルイがトロフィーを持って、小春の前に立つ。

「次は、お前だ」

当たり前のように言う。

その一言が、胸を温める。

夜。

セーヌ川沿い。

小春は風に当たる。

ルイが隣に立つ。

「悔しいか」

「……少し」

正直に言う。

「でも」

小春は続ける。

「隣にいたい気持ちは、変わらないです」

沈黙。

ルイが、ゆっくり言う。

「俺も」

短い。

でも、嘘はない。

遠距離も、ライバルも、

消えない不安もある。

それでも。

二人の温度は、まだ繋がっている。

世界は広い。

夢は高い。

恋は、まだ未完成。

でも確実に、育っている。

――次回、

“選択”。

世界か、帰国か。

二人の進む道が分かれるかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ