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スイーツアカデミー恋愛物語~世界へ駆けろ!目指すは、世界一!  作者: 優貴(Yukky)


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第16話 『世界一のその先』

世界大会優勝から三ヶ月。

帰国した二人を待っていたのは、

想像以上の変化だった。

テレビ出演。

雑誌の取材。

企業コラボのオファー。

《スイーツアカデミー》は一躍、世界的注目校に。

小春はまだ慣れないフラッシュに目を細める。

(わたし、本当に世界一……?)

隣には、いつも通りのルイ。

でも視線は、少しだけ遠い。

ある日。

龍星先生が呼び出す。

「次の話だ」

机に置かれた資料。

“世界若手パティシエ育成プロジェクト”

優勝者限定の特別プログラム。

世界各国のトップシェフのもとで修行。

期間は――一年。

開催地は、ヨーロッパ各地。

小春の胸が高鳴る。

「行きます」

即答。

ルイも頷く。

だが、次の言葉で空気が変わる。

「ただし、ペアではない」

静寂。

「個別配属だ」

世界は、甘くない。

実力は、個人で測られる。

配属先発表。

小春――イタリア・フィレンツェの老舗パティスリー。

ルイ――フランス・パリ、三つ星レストラン。

別々。

一年間。

小春の喉が詰まる。

「……そうですか」

覚悟はしていた。

でも、胸が痛い。

空港。

出発の日。

世界一の二人は、別々の搭乗口へ。

「一年だ」

ルイが言う。

「はい」

「逃げるな」

「逃げません」

沈黙。

言いたいことは、山ほどある。

でも、言葉は少ない。

小春が、勇気を出す。

「帰ってきたら」

「うん?」

「もっと、すごくなってますから」

ルイが、少し笑う。

「ああ」

一瞬、手が触れる。

それだけ。

でも、それで十分だった。

イタリア・フィレンツェ。

石畳の街。

小春の修行先は、伝統重視の厳格な店。

シェフは冷たい目で言う。

「世界一? ここでは関係ない」

皿を見て、一言。

「甘すぎる」

胸が、刺さる。

(通用しない……)

一方、パリ。

ルイは超一流の厨房に立つ。

ミスは許されない。

一瞬の遅れで叱責。

「World champion? Prove it.」

証明しろ。

ルイの目が鋭くなる。

夜。

小春は小さなアパートで一人、試作する。

思うようにいかない。

味がぼやける。

「……違う」

涙が落ちる。

世界一になったのに。

まだ、未熟。

スマホにメッセージ。

ルイから。

『どうだ』

短い。

小春は迷ってから返信する。

『苦いです』

すぐに既読。

『当然だ』

一拍。

『世界はもっと苦い』

そして。

『でも、お前は立て直せる』

画面が滲む。

(隣にいなくても)

支えは、消えていない。

一年は長い。

でも、短い。

二人はそれぞれの場所で、壊れ、学び、作り続ける。

甘さの本質。

苦味の意味。

温度の繊細さ。

世界一は、ゴールじゃない。

スタートだった。

ラストカット。

一年後――

パリの国際コンクール会場。

再び並ぶ各国代表。

その中に、日本の二つの名前。

一ヶ原小春。

龍星ルイ。

今度は、個人戦。

隣ではなく、対面。

目が合う。

微笑む。

「負けませんよ」

小春が言う。

ルイが答える。

「望むところだ」

恋も、夢も、

まだ終わらない。

甘くて、切なくて、熱い。

第二章、開幕。

――つづく

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