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スイーツアカデミー恋愛物語~世界へ駆けろ!目指すは、世界一!  作者: 優貴(Yukky)


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第13話 『世界の温度』

パリ国際製菓コンクール、開幕。

歴史ある大ホール。

天井は高く、壁には金色の装飾。

各国の代表が並ぶ。

フランス、イタリア、日本、アメリカ、ベルギー……。

観客席には一流パティシエたち。

空気が、重い。

第一競技テーマ発表。

「Theme: Tradition × Innovation(伝統と革新)」

ざわめき。

伝統を壊さず、革新する。

最も難しいテーマ。

ルイが小声で言う。

「予想通りだ」

小春は深呼吸。

(日本の伝統……)

二人の視線が重なる。

抹茶。

和三盆。

でも、それだけじゃ弱い。

スタート。

レオ・マルタンの動きは別格だった。

無駄がない。

迷いがない。

まるで舞うような手さばき。

周囲が自然と見入る。

「……すごい」

小春が思わず呟く。

ルイの目が鋭くなる。

「見るな。作れ」

「はい!」

二人が選んだ構成。

“抹茶テリーヌ”をベースに、

内部に柚子のジュレ。

外側をホワイトチョコレートで薄く包み、

和の余韻にフレンチの軽やかさを重ねる。

でも――

味見した瞬間、小春の顔色が変わる。

「……重い」

抹茶が強すぎる。

渋みが前に出る。

海外審査員には刺さらない可能性。

残り時間、一時間。

ルイが即断する。

「抹茶、減らす」

「でも、伝統が弱くなります」

「そのままだと負ける」

迷いのない声。

小春の胸がざわつく。

(日本らしさを、曲げる……?)

その時、思い出す。

“原点”。

心を救う甘さ。

自己満足じゃ意味がない。

「……バランス、変えましょう」

抹茶の苦味を抑え、

代わりに和三盆の柔らかい甘さを前に出す。

柚子の酸味でキレを作る。

ルイが頷く。

「それでいく」

一方、レオの皿。

クラシックなフランス菓子を再構築。

伝統のオペラケーキを分解し、

温度差と食感差で再構成。

観客からどよめき。

「完璧……」

誰かが呟く。

残り十分。

小春の手が震える。

世界の舞台。

観客の視線。

言葉の壁。

(怖い)

その時。

「一ヶ原」

ルイの声。

「俺たちは何しに来た」

短い問い。

小春は、顔を上げる。

「世界一を、取りに」

「じゃあ震えるな」

強い声。

でも、その目は優しい。

小春は、息を吸う。

「はい」

完成。

日本代表の皿は、

静かで、繊細。

派手さはない。

でも、温かい。

レオの皿は、

大胆で、芸術的。

圧倒的な存在感。

試食。

審査員の表情は読めない。

フランス人審査員が言う。

「Interesting… delicate bitterness.」

別の審査員。

「Balanced. Elegant.」

小春の心臓が跳ねる。

レオの作品には、賞賛の嵐。

「Magnificent.」

「Masterful technique.」

空気が、レオに傾く。

結果発表。

「Top three of the first round――」

名前が呼ばれる。

フランス。

イタリア。

そして――

「Japan.」

小春の目が見開く。

通過。

決勝ラウンドへ。

レオが振り向く。

静かな笑み。

「Good. Don’t disappoint me.」

ルイが応じる。

「Next round. We win.」

控室。

小春は壁にもたれて座り込む。

「世界、やばいですね……」

ルイが隣に座る。

「楽しいだろ」

意外な言葉。

小春は驚く。

ルイは続ける。

「怖いけど、燃える」

その横顔は、全国の時よりも生き生きしている。

完璧に縛られていない。

挑戦している顔。

小春の胸が、また熱くなる。

(好き……)

はっきりした感情。

もう逃げられない。

でも今は、言わない。

勝つまで。

世界一になるまで。

次は準決勝。

相手は、レオ率いるフランス。

本場の壁。

文化の壁。

そして、技術の壁。

甘いだけじゃ足りない。

でも、二人なら。

世界の温度は高い。

だけど――

二人の想いも、負けていない。

――つづく

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