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スイーツアカデミー恋愛物語~世界へ駆けろ!目指すは、世界一!  作者: 優貴(Yukky)


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第11話 『わたしの原点、あなたの原点』

全国大会・第二競技。

テーマは――「原点」。

制限時間三時間。

“なぜ、自分は菓子を作るのか”

それを一皿で表現する。

「構成、最終確認」

ルイが低く言う。

小春は頷く。

二人が選んだ原点は、それぞれ違う。

小春の原点――

幼い頃、落ち込んで泣いていた自分に

母が焼いてくれた、少し不格好なシフォンケーキ。

見た目は完璧じゃない。

でも、あの甘さは心を救った。

ルイの原点――

初めて飴細工を成功させた日の感動。

溶けて、失敗して、何度も作り直して、

やっと形になった“光”。

二つの原点を、ひとつの皿に。

テーマは

「はじまりの光」。

スタート。

小春はシフォン生地を仕込む。

あえて、少し素朴な見た目。

ルイは飴を炊く。

透明度を極限まで高める。

会場の空気が熱を帯びる。

神崎チームは、すでに高度な構造を組み始めている。

芸術的。洗練。完璧。

「焦るな」

ルイの声。

「はい」

小春は深呼吸する。

(わたしの原点は、比べることじゃない)

優しい甘さ。

それを、信じる。

残り四十分。

事件が起きる。

ルイの飴細工。

最後の組み上げ。

――パキン。

小さな音。

支柱が、割れた。

周囲がざわめく。

神崎がこちらを見る。

ほんのわずかな、笑み。

ルイの呼吸が止まる。

時間は、あと三十分。

作り直せば、間に合わない。

「ルイくん」

小春が言う。

焦りのない声。

「変えましょう」

「……何を」

「構成」

ルイが目を見開く。

「割れた部分、使いましょう」

「は?」

「原点って、失敗も含まれませんか」

静かな声。

「壊れて、やり直して、それでも好きだったから続けた」

ルイの胸が、強く打つ。

「だから今、ここにいるんですよね?」

割れた飴を、光のように再配置する。

完全な球体ではなく、

ひび割れたまま、中心から光が差すデザイン。

ルイの目に、迷いが消える。

「……やるぞ」

盛り付け。

素朴なシフォン。

中央に、ひび割れた飴の光。

完璧ではない。

でも、確かに美しい。

試食。

審査員が口に運ぶ。

「……優しい」

「シンプルなのに、深い」

「この飴のひび割れは?」

小春が答える。

「失敗も、原点だからです」

会場が静まる。

ルイが続ける。

「壊れても、また作る。それが、俺の原点です」

神崎が目を細める。

初めて見る、ルイの表情。

“完璧”ではなく、“覚悟”。

神崎チームの作品は、やはり完成度が高い。

洗練され、隙がない。

だが――

どこか、感情が遠い。

結果発表。

総合順位が決まる。

第一競技と第二競技の合算。

会場が息を呑む。

「準優勝――」

名前が呼ばれる。

神崎蒼チーム。

ざわめき。

神崎の目が、わずかに揺れる。

「優勝は――」

一瞬の静寂。

「ルイ・一ヶ原チーム!」

世界が弾ける。

歓声。

拍手。

小春の視界が滲む。

「……勝った?」

ルイが小さく笑う。

「ああ」

震えているのは、手か、心か。

神崎が歩み寄る。

「参ったな」

苦笑。

「今回は、原点で負けた」

ルイはまっすぐ見る。

「ありがとう」

神崎は小春に視線を向ける。

「君が変えたな」

小春は首を振る。

「ルイくんが、自分で選びました」

神崎は静かに笑う。

「世界で会おう」

そう言って去る。

トロフィーを手にした瞬間。

小春は、ふと気づく。

隣にいる人が、こんなにも誇らしいことに。

胸が、熱い。

ただの尊敬じゃない。

ただの仲間じゃない。

(わたし……)

ルイが横を見る。

「どうした」

小春は慌てて首を振る。

「なんでもないです!」

でも、鼓動は早い。

甘くて、苦い。

これはきっと——

恋。

全国制覇。

そして、世界への切符。

二人は、次の舞台へ進む。

でも本当の戦いは、ここから。

世界は、もっと残酷で、もっと美しい。

そして――

恋もまた、試される。

――つづく

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