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スイーツアカデミー恋愛物語~世界へ駆けろ!目指すは、世界一!  作者: 優貴(Yukky)


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第10話 『一ミリの重さ』

全国製菓学生大会・第一競技。

審査は終わった。

会場全体が、静まり返る。

壇上に並ぶ代表チーム。

神崎は余裕の表情。

ルイは無表情。

小春の手は、ほんの少し冷たい。

(大丈夫……)

自分に言い聞かせる。

審査員長がマイクを持つ。

「第一競技、上位三校を発表します」

会場の空気が張りつめる。

「まず一校目――神崎蒼チーム」

拍手。

予想通り。

神崎は軽く手を上げるだけ。

視線はルイへ。

挑戦的な微笑み。

小春の胸がざわつく。

「二校目――」

一瞬の間。

「ルイ・一ヶ原チーム」

世界が止まる。

「……え?」

小春の声が、かすれる。

周囲から拍手。

ルイは目を伏せ、静かに息を吐く。

「通った」

短い一言。

でもそこには、確かな安堵。

控室。

「おめでとう」

龍星先生が言う。

「だが、点差は僅差だ」

スクリーンに表示される点数。

神崎チーム 94.8点

ルイ・小春チーム 94.6点

――0.2点差。

小春の目が見開く。

「……また、わずか」

ルイが呟く。

神崎がドアにもたれて立っている。

「惜しかったな」

柔らかな声。

「今回も“ほんの少し”足りない」

ルイの拳がわずかに握られる。

小春が一歩前に出る。

「でも、負けてません」

神崎が目を細める。

「総合点で逆転します」

はっきりとした声。

神崎はふっと笑う。

「楽しみだ」

去り際、ルイにだけ聞こえる声で囁く。

「お前、変わったな」

控室に戻る。

ルイは無言。

小春が言う。

「悔しいですか」

「当たり前だ」

即答。

でも以前のような冷たさはない。

「でも、前より苦しくない」

ぽつり。

「一ミリ差でも、折れなかった」

小春が微笑む。

「壊れても、再生できますから」

ルイが小さく笑う。

「その理論、万能だな」

しかし、その夜。

小春は一人、ベッドで天井を見つめていた。

(0.2点……)

もしソースが焦げなかったら?

もし飴の角度が完璧だったら?

胸が締めつけられる。

「やっぱり、完璧じゃないと……」

その時、スマホが震える。

ルイからのメッセージ。

『明日の構成、変える』

小春は飛び起きる。

『攻める』

それだけ。

でも意味は分かる。

守りでは神崎に勝てない。

リスクを取る。

壊れる可能性を受け入れる。

小春は打ち返す。

『やりましょう』

すぐ既読がつく。

『怖いか』

一瞬、指が止まる。

でも打つ。

『怖いです。でも、隣にいます』

数秒後。

『……ああ』

短い返事。

でもそれだけで、胸が少し温かくなる。

翌朝。

第二競技のテーマ発表。

「テーマは――“原点”」

ざわめき。

原点。

自分が、なぜ菓子を作るのか。

神崎は余裕の笑みを浮かべる。

「得意分野だ」

ルイは小春を見る。

「原点、あるか」

小春は迷わない。

「あります」

“人の心を救うスイーツ”。

それが原点。

ルイは目を閉じる。

自分の原点は何だったのか。

勝つこと?

完璧であること?

それとも——

ただ、作るのが好きだったあの日?

全国大会、第二競技。

ここで順位が大きく動く。

0.2点差は、重い。

でも、越えられない壁じゃない。

一ミリの重さを知っているからこそ、

二人はもう逃げない。

完璧じゃなくても。

怖くても。

それでも、前へ。

神崎という壁の向こうに、

世界への扉がある。

甘くない戦いは、まだ続く。

――つづく

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