表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢の住人~夢の世界で未来を選べるスキルを得た俺は、選択ひとつで死ぬバトロワに挑む~  作者: 阿行空


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/49

「小さな1歩」

初めて夢の世界にきてから、二ヶ月ほどが経った。


正確には、夢の中での時間だ。


眠ればこちらに来て、働き、金が貯まれば薬で眠り現実に戻っている。

数日おきに目を覚まし、部屋の天井を見て、「ああ、帰ってきた」と安心し、

また眠って、同じ場所に戻る。

その繰り返し。


現実と夢の境目は、次第に曖昧になっていった。

俺たちは、その二ヶ月間、ほとんど危険のないミッションだけをこなしていた。

倉庫整理、運搬、点検。

撃たれない、追われない、死なない仕事。


夢の中で働き、現実で少し休み、また夢に戻って働く。

毎日稼げる額は少しずつ上がった。

夢の中での身体の使い方がわかり、連続してミッションをハシゴする日も増えた。

毎日クスリを飲むほどにはまだまだ届かないが、確実に1日でこなせる仕事は増えている。


――それだけの生活。

その日も、夢の中でのミッションを終え、喫茶店へ戻った。

喫茶店はもう落ち着く場所になっている。


まず、カフェオレを淹れる。

それが、すっかり習慣になっていた。


豆を挽き、湯を注ぎ、ミルクを足す。

香りが立つと、頭が少しだけ整理される。


カップを持って、ソファーに座るゆいのところへ向かった。


「ありがと」


一口飲んでから、ゆいが聞いてくる。


「スキルは?」


「……出てない」


「二ヶ月経っても?」


「現実に帰っても、戻ってきても、何も」


自分でも意外なほど、淡々と答えていた。

焦りがないわけじゃない。


ただ、もう“待っても出ないかもしれない”と理解し始めている。


ゆいは驚かなかった。


カフェオレを飲み、淡々と頷くだけ。


「じゃあさ」


嫌な予感がして、背筋が先に固くなる。


「ちょっと離れたところのミッション、行かない?」


「……治安悪いとこ?」


「そう。でも、Dだよ」


ゆいはさらっと言った。


“D”を、怖がらせる材料としてじゃなく、安心させる材料として。


「Dは大したことない。私、何回も通ってる」


その言い方が妙に現実的で、逆に信じてしまいそうになる。


「……でも」


口に出すと、自分でも情けなかった。


二ヶ月、夢で働いて。


現実に戻っても、結局また戻って。


安全な仕事だけで、同じ場所を回っている。


怖いのは確かだ。


でも、今のまま何も変わらないのも、同じくらい怖い。


ゆいがカップを置き、こちらを見る。


「私がいる。死なせない」

断言。


言葉の強さじゃなく、言い方が強い。

当たり前の事実みたいに言う。


「それに、医療物資は金になる。効率がいい」


タブレットを差し出された。


【第三倉庫 医療物資の回収】

【危険度:D】


Dがどれほどか、俺にはまだ実感がない。

けど、ゆいは“知ってる顔”をしている。


軽い仕事だと、本当に分かっている顔だ。

俺は喉を鳴らして、息を整えた。


(ここで止まったら、俺はずっとこのままだ)


二ヶ月の繰り返しが、そのまま続くだけ。

安全だけが増えて、何も積み上がらない。


「……分かった」


口にした瞬間、胃の奥がひやりとした。

怖い。


でも言ってしまった以上、戻れない。

ゆいは短く頷く。


「じゃ、行こ」


こうして俺たちは、

二ヶ月続けた“安全な生活”から、ほんの少しだけ外へ出ることになった。


その“少し”がどれほどの距離かは、まだ知らないまま。






お知らせとお願い




毎日 昼12時と夜の20時の2話更新です。




続きが気になったらブックマークで追ってください。


感想・誤字報告も励みになります。




週1で『夢の住人 外伝』(短編)も投稿(毎週月曜)。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ